加納 芳郎 さん、加納 寛悠 院長の独自取材記事
かのうクリニック
(岐阜市/田神駅)
最終更新日:2025/01/20

岐阜市金園町にある「かのうクリニック」。1985年に加納芳郎(かのう・よしろう)名誉院長が「かのう小児科」として開院し、以来地域住民に信頼され続けてきた。2022年、加納寛悠(かのう・ひろゆき)院長が「かのうクリニック」と改名・継承し、親子2代で診療を行う。寛悠院長は、川崎医科大学を卒業後、岐阜大学医学部附属病院の第2外科入局、岐阜県や愛知県で消化器外科で尽力してきた。外科や救急医療での経験を生かしながら、かかりつけ医として幅広く対応。同院では芳郎名誉院長が小児科を、寛悠院長が内科・外科・胃腸内科・肛門外科を担当。「患者さんの話をしっかり聞く姿勢を大切にしたい」という芳郎名誉院長と、「心も元気になれるような雰囲気を守り続けていきたい」という寛悠院長に、クリニックの指針や診療について聞いた。
(取材日2024年11月25日)
4代で、地域住民の健康を守り続けてきたクリニック
クリニックを引き継ぐまでの経緯をお聞かせください。

【寛悠院長】子どもの頃から父の姿を見てきましたので、当初は小児科の医師になりたかったのですが、2年間の研修中に他の科も経験してみた中で、私には大人の病気の回復に携わる消化器外科が合っていると思いました。病気からの回復をめざす中で喜んでもらえたり、外科では手術に関わることができたり、そんな経験にとてもやりがいを感じましたね。小児科医の父には「消化器外科に行きたい」と告げた時に快く受け入れてくれたことを、とても感謝しています。消化器外科として経験を積みながらも、父がこの地で診療してきた様子を見てきたこともあり、いつかはかかりつけ医として一緒に尽力したいという思いは変わらず持ち続けていたんですよ。
現在の診療体制について教えてください。
【寛悠院長】現在も、名誉院長が小児科の診療を引き続き行っています。内科・外科・胃腸内科・肛門外科については私が担当し、2人で専門をすみ分けながら診療しています。肛門外科に関しては、消化器外科で経験を積んできていますので、気になることがあればご来院いただきたいですね。地域のかかりつけ医ですから、基本的には消化器内科と一般内科を診察することが多いのですが、外科での経験や知識も今の診療に生かすことができていると思います。救急医療やへき地での勤務医も経験してきていますから、急に倒れたときなどの対応もできます。かかりつけ医としては、診察で見極めて専門の医療機関へとつなげることも重要な役割です。当院では、小児科に関しては名誉院長を頼りにしています。県立病院や市民病院に面識のある医師もいますので、必要だと思った際にはご紹介できることも強みだと思っています。
訪問診療もされていると伺いました。

【寛悠院長】現状は、当院に来られていた患者さんのうち、来院が難しい方を対象に診させていただいています。私の専門でお役に立てられる領域だと思いますので、訪問での医療も提供させていただくようになりました。
【芳郎名誉院長】私は小児科医なので、院長のようにご高齢の方にどのような検査をしたらよいのかなどは詳しくはわかりません。訪問診療は、院長だからできることでもありますね。専門の違う道を歩んでくれたことは、そのような意味でも結果的に良かったのではないかと思いますね。
かかりつけ医として、分け隔てない診療姿勢を受け継ぐ
名誉院長から引き継ぐにあたり、大切にされていることはありますか。

【寛悠院長】名誉院長からは、どの患者さんにも分け隔てなく診療するという姿勢を受け継いでいきたいですね。人間としても、一生大事にしたいところでもあるんです。例えば、外国人の患者さんに対してなら、インターネットの翻訳機能を活用して、できる限り患者さんの母国語でお伝えすることを大切にしたいと思いますね。病気のときは不安な気持ちになりやすいからこそ、患者さんの母国語で接することはとても大事だと思うので。もちろん専門が違えば他の先生を紹介しますが、困っている方が来院された際にはできる限り力になりたいですね。
【芳郎名誉院長】前例に習いすぎることなく、院長のこうしたいという思いで動いてくれるほうが良いのではと思っています。私からはあまり干渉はしないようにしていますね。専門とする科が違うというのも、干渉しすぎることなく結果的に良かったのかもしれませんね。
分け隔てなく接してもらえると、患者さんも安心できますね。
【寛悠院長】そう感じていただけるようにしたいと思っています。熱が出て苦しんでいる方についても同じように考えていまして、発熱者の外来時間を区切って診察することはしていません。熱が出て困っているのでしたら来てくださいという姿勢でいます。もちろん、熱のある方とない方で動線を分けるなどの対策を行っています。多少の順番待ちは生じますが、困っている方にはオープンな姿勢を大切にしたいですね。
お二人で専門の科が違うことのメリットをお聞かせください。

【寛悠院長】私で4代目になりますから、患者さんから「お父さんやおじいちゃんに診てもらったわ」などと声をかけてもらいますね。長年通ってくださっている患者さんが多いのも当院の特徴の一つです。それに加えて、現在では名誉院長は小児科、私は大人の内科を診療していますので、0歳から100歳まで診ることができるのですよ。
【芳郎名誉院長】昔小さかったお子さんが、今度は親御さんになってご自分のお子さんを連れて来ることもありますしね。私の患者さんだった子が今度は院長の患者さんになって来てくれることもあり、患者さんの成長も見ることができますしうれしい限りですよね。
治療中も明るい気持ちになれるよう患者をサポート
院内環境でこだわった点はありますか?

【芳郎名誉院長】感染予防のために動線を分けるということは、ここで開院して以来ずっと行っていますね。検診や予防接種で来られた方と感染症で来られた方が、できる限り一緒の空間にならないように配慮させていただいています。
【寛悠院長】小さなお子さんも来てくださっているので、優しい雰囲気づくりというのは大事にしていますね。最近院内をリフォームしたのですが、患者さんからは「明るくていいね」「ここに来て元気になった気がする」と言ってもらうことも。以前は、ナラ材の絵本の棚があるなど、より小児科の雰囲気がありました。前の良い雰囲気は残しながら、靴でそのまま上がれるようにするなど利便性を高めました。私たちやスタッフも患者さんと明るく接するようにしていまして、少しでも笑顔になってもらえるお手伝いができればと思っています。
今後の展望について教えてください。
【寛悠院長】名誉院長からクリニックのベースを引き継ぎながら、安心して任せてもらえるようになりたいと思っています。そして、消化器という専門を生かし、これからも地域に皆さんのお役に立っていきたいと思います。それが地域のかかりつけ医として大切なことではないかなと思っています。父が私に医師を強要しなかったように、自分の子どもにも医師になることを求めていませんが、他の方が継がれるとしても、それまで地域の方に信頼されるようなベースは育み続けていきたいと思っています。
最後に、読者にメッセージをお願いします。

【寛悠院長】病気というと暗いイメージがありますが、当院に来ていただいて少しでも明るい気持ちになっていただければと思います。中には「旅行に行ってきたよ」といった話をしてくださる患者さんもいます。患者さんや家族の方と深く関われることが私の専門の良いところだとも思っていますし、患者さんとの温かい関係をこれからも大切にしていきたいですね。気になる症状がある方は、一人で悩む前にまずは気軽にご相談ください。また、当院では親子でかかりつけとしてご利用いただけます。子どもも大人も一緒の空間にはなりますが、当院のポリシーでもありますのでご理解いただければと思います。
【芳郎名誉院長】これからのクリニックについて、基本的なことは院長にお任せしていますが、小児科医としてできる限り続けていきたいと思っています。患者さんのお話を聞くことを大切にしていますので、心配に思うことがありましたらご相談ください。