繰り返す咳、長引く咳
もしかしたら「隠れ喘息」かも
医療法人社団 さくまこどもクリニック
(藤沢市/湘南台駅)
最終更新日:2023/12/14


- 保険診療
「風邪をひくたびに咳が出る」「他の症状は治っても、風邪の後に咳が長く続く」など、子どもが風邪をひくたびに、こうした状態に気がかりを覚える保護者もいるだろう。「繰り返す咳や長引く咳は、『隠れ喘息』によるものの可能性があります。わかりやすい症状は見られないものの、丁寧に診察すると気管支に慢性的な炎症が見られるのが隠れ喘息。近年、この状態にあるお子さんが増えているようです」と話すのは、藤沢市湘南台の「さくまこどもクリニック」で診療する佐久間秀哉院長。隠れ喘息は従来の喘息のように発作を伴わないため見逃されていることも多く、治療を受けないまま成長してしまう子が多い現状を危惧しているという。しっかりと見極め、適切な治療を受けさえすれば、治癒も期待できるという隠れ喘息。気になる詳細を聞いた。
(取材日2023年10月12日)
目次
繰り返す咳や長引く咳の症状は、見落とされがちな「隠れ喘息」の可能性も。気になることがあれば受診を
- Qこちらではいわゆる「隠れ喘息」の発見を重要視されているとか。
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A
▲広々とした待合室にはかわいらしいキッズスペースがある
喘息というと激しい咳や呼吸困難を伴う発作をイメージされる方が多いと思いますが、近年は軽症化しており、以前のように誰が見ても喘息とわかるような症状が出るケースは少なくなっています。逆に、一見元気そうでも、聴診器を当てて胸の音を聞いてみると状態の悪さが伺えることがあり、そうしたお子さんでは風邪をひくなどのちょっとしたきっかけで、急にひどい症状が出ることも少なくありません。気管支の慢性的な炎症により、空気の通り道が狭くなって起こる喘息ですが、きちんと治療すれば治癒も望める病気です。ただし、目に見える症状がないからといって気管支に炎症がないとは限らず、症状の有無に関わらず治療する必要があるのです。
- Q気づきにくい隠れ喘息のリスクとは?
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A
▲子どもだけでなく、大人も発症する喘息
現時点で隠れ喘息の診療は十分に確立されておらず、未治療のまま成長したお子さんが将来どのようなリスクにさらされるかを示すエビデンスはありません。しかし、すぐに風邪をひく子や風邪をひくたびに咳が長引くというような子は、背景に隠れ喘息を抱えているケースが多く、一度しっかりと治療することで、調子を崩しにくくすることが期待できます。子どもの病気と思われがちな喘息ですが、大人になってから発症する方も一定数います。疲労やストレスなどを引き金に症状が出る方の中には、幼少期から隠れ喘息の状態にあった方も含まれている可能性があります。さらに、喘息がCOPDの発症にも関わるという指摘もあります。
- Q隠れ喘息のサインとはどのようなものでしょうか。
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A
▲資料などを用いて、丁寧に説明を行う
風邪をひいて他の症状は治ったのに、咳だけが長引くようなケースでは、気道の状態が悪くなっている隠れ喘息が疑われます。ただし、咳が出ていなくても、予防接種など別の機会に受けた聴診により見つかるケースも多く、小児科の医師でも見落とすことが少なくない隠れ喘息を親御さんが見つけることは難しいでしょう。しょっちゅう風邪をひいてその度に咳が長引くような子や、家系的に喘息持ちが疑われる子は、たとえひどい発作がなくても気管支に慢性的な炎症がないか、一度調べてみることをお勧めします。
- Q診断と治療について教えてください。
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A
▲適切な吸入薬の選択と吸入補助具の使用が大切
呼吸音解析やエックス線による画像診断もありますが、基本的には精密な聴診により、気管支の状態を把握します。典型的な喘息であれば難しくないのですが、隠れ喘息では呼吸音の異常を見極めることが難しいとされています。特定状態下での聴診で気管支の炎症がわかれば、治療を開始します。まずは炎症をしっかり抑える目的で、短期間だけ強めの内服薬を用い、その後は徐々に弱い薬に変えて最低でも2週間の投薬を続けます。吸入薬を使うこともありますが、幼い子では十分に吸いきれないことも多いため、スペーサーの併用をお勧めしています。
- Q隠れ喘息に関して気をつけるべきことはありますか。
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A
▲専門的な知識を持つ医師に相談してほしいと語る佐久間院長
喘息ではアレルギーが要因として指摘されることもありますが、これまで診療してきた中で感じることは、アレルギーは増悪因子ではあっても発症因子ではないのではないかということ。どんなに環境を整備しても、遺伝や体質により、気道を良い状態に保ちづらい子はいます。ただ、気管支の炎症が、ダニやホコリ、ペットの毛などでさらに悪化することがあります。また、気管支に炎症がある状態で、アレルギーの負荷試験を受けることなどはたいへん危険です。まずは確かな経験を持つ小児科医による聴診や呼吸抵抗検査などでお子さんの気管支の状態を把握し、常に良い状態を保つために適切な治療を続けることが大切です。