佐久間 秀哉 院長の独自取材記事
医療法人社団 さくまこどもクリニック
(藤沢市/湘南台駅)
最終更新日:2023/12/07

湘南台駅西口から線路沿いに徒歩約3分、駅から至近ではあるが静かな環境に位置する「さくまこどもクリニック」。1994年の開業から約30年間、地域の子どもたちの健康を支え続けてきた小児科医院である。院長の佐久間秀哉先生は、小児科医として子どもと保護者の双方にしっかり向き合っていきたいと考え、自分らしい診療を実現するために開業を決意したという。取材中、「以前は子どもが苦手だったんです」と打ち明けた佐久間院長だが、今では子どもの心を第一に考え、保護者を安心させることに注力して診療にあたっている。その転機ともなった自身の経験と、子育て中の保護者に向けたメッセージなどについて、じっくりと聞くことができた。
(取材日2014年9月4日/情報更新日2023年8月4日)
大人になった時に困らないようしっかり治療を
こちらのクリニックには、どういった患者さんが多いのですか。

近隣の方もいらっしゃいますが市をまたいで来られる方も多くいらっしゃいます。患者さんの年齢は幅広く乳児から中学生まで来られます。長くやっていると昔患者さんだった方が親になり子どもを連れてくることがありとてもうれしく思います。小児科ですから基本的に歯以外は全部診ています。患者さんの症状は多岐にわたりますが、風邪や喘息、中耳炎などが多いですね。中耳炎は基本的には耳鼻咽喉科の領域ですが、風邪をひくと中耳炎を引き起こすことも多く、発熱の原因にもなるため当院でもよく診ています。もちろん、専門的な治療が必要な場合は、耳鼻咽喉科へ紹介をします。
喘息の患者さんは、どのくらいいらっしゃるんでしょうか。
喘息のみの人は少ないですが、風邪をひくことにより全体の6〜7割の方に喘息の症状が出てくる印象があります。昔はひどい発作で誰が見ても喘息だとわかるような人が多かったのですが、今はそういう人が少なく、軽症化している傾向にありますね。そのため親御さんが風邪だと思っていても、実は喘息になっている場合も少なくありません。また喘息の場合、お薬で咳などの症状が軽快に向かうと、元気になったように感じてしまい、そこで治療を止めてしまう方もいらっしゃると思います。ですが実はまだ治っていないことが多く、風邪が引き金となり急に悪化して入院しなければならなくなってしまうようなケースもあるので注意が必要です。
喘息治療に関して、読者に知っておいてほしいことはありますか?

喘息治療において大事なのは、症状が出ていなくてもきちんと受診を続け、医師に丁寧に状況を見極めてもらうことです。高校生くらいになると症状が落ち着く場合もありますが、実はその間にも発作が出ていて、軽症化しているので気づきにくいといったケースもあるのです。そうして大人になって風邪をひいたり妊娠をしたり、ストレスがたまったりするなど、何かをきっかけにして、喘息の発作が出てくることも。大人の場合は症状がひどくなって治療が難しくなることもありますし、仕事や家庭での生活に影響することもあるでしょう。私はそういう人をなるべく少なくしたいんです。そのために子どもの頃にしっかり治療に取り組んで喘息の状態をコントロールしていくのは、すごく大事なことなんです。
子育て経験を通じ、子どもの気持ちが理解できるように
どういった思いで診療にあたられていますか。

喘息などのように小さい頃に治せるものはしっかり治して、大人になったときに困らないようにしてあげたいという思いがあります。治療を進める上で、本人の努力も必要になってきますから、いろいろな痛いことやつらい思いを我慢できたら、「よくやったね」って褒めてあげるようにしています。そうするとお子さんは「頑張ったから褒められた」と思って、うれしくなりますよね。それから、親御さんの話を聞いて不安があれば取り除いて安心していただくように努めています。「ここに来て良かったな」「受診して良かったな」と思ってお帰りいただきたいですね。
小児科の医師になろうと思ったのは、どういった経緯からですか。
小さなきっかけが積み重なったという感じですね。実は高校時代は親の勧めで歯科医師になろうと思っていた時期もありました。けれど医師のほうが自分に合っているなと思ったんです。そして小児科を専門にしようと思ったのは、大学に進んでからです。私は6人兄弟の末っ子で17歳年上の長兄がいるのですが、その兄が後に私の母校にもなる東京慈恵会医科大学の病院で働いていたことがありました。その頃、私はそこで病気の治療を受けたことがあったのですが、その後医学部に進んだ際、当時の主治医が小児科の授業を受け持っていたのです。これも巡り合わせというのでしょうか、それが縁で小児科に進みました。ですが実は私、当時は子どもが苦手だったんです。子どもって言うことをなかなか聞かないこともありますよね。それで内心「子どもってわがままで嫌だな」って思っていたんです。
現在までに、何か心境が変わる大きなきっかけがあったのでしょうか。

はい。自分の子どもが小さい頃、私は病院に勤めていて忙しく、なかなか遊んであげることもできなくて。その一方で、立派になってほしいという思いから、ちょっとしたことで叱ったり怒ったりしていて、関係があまりうまくいっていなかった時期があったんです。ですがいろいろ考えていくうちに、「子どもが言うことを聞かなかったりするのは、構ってほしいからなんだ」と気づきました。そうしたら今までのことがすごく申し訳なかったと感じて涙が出てきましたね。子どもの見方が180度変わったのはそれからです。例えば、病院でちょっとお子さんが騒いでいると、お母さんは「静かにしなさい!」って叱ることもありますよね。でも子どもは、保育園に行っている間、会えなかったお母さんに会えたから、うれしくて「お母さん大好き!」という思いではしゃいでいるだけなんです。そういったことが考えられるようになりました。
保護者の心のケアまで含めた診療を
保護者の方に伝えたいことはありますか。

昔に比べて共働きのご家庭が増加していることもあり、お父さんがお子さんを連れてこられるケースが非常に増えています。お子さんの状況をしっかり説明できるお父さんがいる一方、中にはあまり把握せずに来院される場合も少なくありません。当然のことながら、小さなお子さんは自分のことを説明できないですから、私たちは、今どういう状況になっているかを付き添いの方に全部聞き、それで検査するかしないか、どういう薬を出すのか判断していく必要があります。例えば、3日前から熱が出ているのと、昨日の夜から熱が出ているのとでは、まったく状態が異なりますよね。食事の摂取状況や排便に関する情報なども非常に大切です。ですので受診する際には、お子さんの様子を詳しく医師に伝える必要があることをご理解いただきたいです。そしてご家庭内でしっかり情報共有をしてからお越しいただけるといいかと思います。
最後に、お子さんのいる読者へのメッセージをお願いします。

お子さんを存分に褒めてあげてほしいですね。私は、褒めることは愛することとイコールだと思っています。ですから、お子さんの気持ちを理解して言葉をかけてあげてほしいんです。もちろん、常識外れのことをしていたら叱らなくてはいけません。例えば外で騒いでしまったとき、「子どもはうれしいからはしゃいでるんだ」という気持ちをわかっていて、「ここは、はしゃいじゃいけない場所だから駄目なんだよ」と伝えるのと、自分の子どもだけがはしゃいでしまい、みっともないと思ってイライラして「何やってんの!」って言うのとでは、違いますよね。子どもがなぜそういう行動をしているのかを理解してあげるのが愛情なのではないでしょうか。愛情を与えられて育った子は、愛情を人に与えられる大人になるでしょう。ですから、愛情を与えることがどのような将来につながるのかまで考えて、お子さんに接してほしいと思います。