石川 範和 院長の独自取材記事
善行団地石川医院
(藤沢市/善行駅)
最終更新日:2025/03/27

子育て世代から高齢者まで幅広い世代が暮らす善行団地の一角で、1977年に診療を始めた「善行団地石川医院」。勤務医時代は主に循環器を専門とし、心疾患の治療に携わってきた同院の2代目院長、石川範和(のりかず)先生は、地域のかかりつけ医として患者のさまざまな相談に乗り、子どもから高齢者まで丁寧に向き合っている。患者にプラスになると思うことは診療以外でも積極的に取り組むのが、石川院長の基本姿勢。「より良い医療の提供をめざして、毎年何かしら新しいことにチャレンジしていきたいというのが当院の方針。直近ではエックス線撮影装置を更新し、さらに検査に注力してきました。多くの患者さんに来院いただいており、診療のスピードアップが課題です」と語る石川院長に、同院の診療や今後の展望などじっくり話を聞いた。
(取材日2024年10月24日)
検査体制の充実を図り、心疾患の早期発見をめざす
クリニックの特徴を教えてください。

父の代から続く地域密着型のクリニックです。患者さんは0歳から100歳までと幅広く、一般内科から小児科、循環器内科、禁煙治療、生活習慣病、特定健診など幅広く対応しています。患者さんの多くは近隣にお住まいの方ですが、中には遠方からわざわざ電車に乗って来てくださる勤務医時代の患者さんもいて、本当にありがたいですね。風邪やインフルエンザなど一般内科的な内容のほか、胸の痛みや動悸など循環器症状でいらっしゃる方も多いです。何か困った時に気軽に相談できる最初の医療窓口として適切な診断を心がけ、必要に応じて大きな病院や近隣のクリニックと連携しながら、患者さんが最善の医療を受けられるように努めています。
先生は循環器がご専門だそうですね。
医療の分野で、すべての治療は“心臓が動いている”ことが大前提となっています。もともと急性期医療、特に心臓の病気に携わりたかったこともあり、迷わず循環器を専門に選びました。大学病院では心筋梗塞や狭心症など、まさに命に関わる現場で多くの症例に携わってきました。病院へ運ばれてきた患者さんが一命を取り留めて無事に社会復帰できるよう、全力を尽くす日々でした。責任もありますがやりがいも大きかったですね。その後、総合病院で内科一般に携わり、風邪や腹痛で来られた患者さんの中に、胸痛や不整脈などの疾患が紛れていることが多いことを学びました。このような経験から、どのタイミングで病院に紹介するべきかの見極めや診断力が鍛えられたと思っています。
さまざまな検査を積極的に導入しているとか。

循環器疾患は命に関わることもあり、病気に至る前の段階で介入できるよう動脈硬化などの早期発見に努めています。その一環として、「血管の健康診断」ともいわれるFMD(血流依存性血管拡張反応)検査を、クリニックレベルでは珍しく導入しています。専門知識を持つ検査スタッフが常勤しており、心臓、頸動脈に加え消化器、乳房、泌尿器など、幅広い検査を行っています。心エコーは朝の診療時間枠で毎日実施、ホルター心電図もフル稼働の状態です。また、直近ではエックス線撮影装置を更新し、検査スピードと精度の向上につなげることができました。肺炎など、早く適切な診断をめざせます。呼気NO(一酸化窒素)検査にも対応しており、呼気に含まれる一酸化窒素の濃度を測定し喘息の有無を診断することも可能。これまで喘息といわれたことがないという患者さんが実は喘息だったケースもあり得るので、長引く咳や夜間の咳でお悩みの方はご相談ください。
困った時に気軽に相談できる、医療窓口として地域貢献
発熱患者の診療にも積極的に取り組んでいらっしゃいますね。

発熱の患者さんが増え、対応に配慮が求められるようになったのはここ数年の大きな変化です。院内感染のリスクを下げるため、発熱者専用の時間枠を設けて対応しています。昨年夏には院内改装を行い、奥に発熱者用の専用待合室も設置。動線を分けることで、何らかの感染が疑われる方もそうでない方も、双方に安心して受診していただける体制が整いました。また、新型コロナウイルス感染症の流行を経て、スタッフを含めて不測の事態への対応力が磨かれたと感じています。
スタッフさんはどのような方がいらっしゃるのですか?
看護師4人、検査スタッフ1人、診療補助スタッフ2人、事務スタッフ3人の体制で診療しており、15人のチームで対応しています。午前中は朝9時から12時まで。昼の休診時間も回すことができているのは、抜群のチームワークを発揮するスタッフのおかげと心から感謝しています。時間がかかる初診対応なども、丁寧に対応してくれており、本当に助かっています。皆をねぎらいたいけれど、忙しくてその時間もないという状態です。長く勤めてくれているスタッフも多く、患者さんにとっても見知った顔が常にあることで、安心していただけているのではないでしょうか。
地域の医師会の活動にも取り組んでいらっしゃるとか。

藤沢は私が生まれ育った地域なので、地元へ恩返ししたい思いが強く、今は藤沢市医師会の理事を務めています。近年は新型コロナウイルス感染症の流行で対応に心を砕く日々でした。この地域は病診連携だけでなく診診連携も活発で、わざわざ病院まで行かなくても気軽に専門的な検査や治療を受けられる体制が整っています。例えば、当院の患者さんが下血したときは消化器内科の医師を、気管支喘息の管理が難しくなったら呼吸器内科の医師をご紹介することも可能です。さまざまなドクターとつながりを持っているので、例えば訪問診療でも、精神系に強い医師、外科系が得意な医師など、ケースに合わせてご紹介できます。クリニックでは医療の入り口としての機能を果たし、病院が高度医療に注力できるよう分業するというのは国の方針でもあります。地域ネットワークを活用しながら、常に患者さんが最短で適切な診療にたどり着けるようサポートしていきたいです。
不安に向き合い、一つでも悩みを減らせるような診療を
診療で心がけていることは?

患者さんは悩みや不安を抱えて来院されるので、その悩みを一つでも減らして帰れるよう、しっかりと患者さんの立場になって治療をすることです。ありがたいことに患者数が多く、お一人にたくさんの時間を割くことは難しいですが、だからこそかかりつけ医として、病歴や治療歴といった患者さん一人ひとりの状態を把握する努力を怠りません。今では患者さんの顔を見れば、だいたいのことがぱっと出てくるようになりました。慢性疾患の患者さんでも、何ヵ月分もの薬を渡して様子を見るのではなく、最低でも1ヵ月に1度は来ていただいて、顔色や全身の様子など小さな異変を見逃さないようサポートします。もう一つは、患者さんを真面目に診ること。これは先代院長である父からの教えで、データばかりに頼らず患者さんと向き合い問診、視診、聴診で判断する。医療に対して丁寧であり続けるという父の姿勢をなくさないよう心がけています。
今後の展望を教えてください。
毎年一つずつくらいは新しいことをスタートさせ、常により良い医療をめざしたいというのが目標。今後は働き世代のサポートに力を入れていきたいと考えています。厚生労働省主導の働き方改革が話題ですが、働く世代の健康管理は最重要課題です。近隣の企業などで働く方の健康をサポートしていければと思います。ただ、そうした働き世代の受診が集中すると、土曜の診療が特に混雑してしまうことも課題です。別の医師を立てることは自分のやり方とずれてしまう懸念があり本意ではないのですが、二診体制を取ることも検討すべきかと考えています。一方で、急に体調を崩した方もいつでも受診できるよう、予約制の導入は考えていません。お待たせする時間が長くなり心苦しいこともあるのですが、3倍速で話しながら少しでもスピーディーに対応できるよう努めています。医師になって早口になったとよく言われます(笑)。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

「コンビニのように気軽に立ち寄れるクリニック」をめざして、いつでも受診しやすい体制を整えています。体にまつわるお困り事や気がかりがあれば、なんでもご相談ください。ご家族で来院される患者さんも多く、子どもたちの成長はうれしく拝見しています。今秋から小児への点鼻インフルエンザワクチンも導入しましたので、気になる方は気軽にご相談ください。