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太田 八千穂 院長の独自取材記事

川間太田産婦人科医院

(野田市/川間駅)

最終更新日:2021/10/12

太田八千穂院長 川間太田産婦人科医院 main

「川間太田産婦人科医院」は、川間駅から徒歩5分の場所にある産科・婦人科の総合クリニック。入り口には樹木が涼しげな木陰をつくり、広々とした待合室には一枚板の立派なテーブルが鎮座している。院長の太田八千穂先生は、子宮筋腫や子宮脱の治療のために行われる膣式手術の専門家。体に負担の少ないこの手術を患者へ提供したいという思いから、同院を開業したという。太田院長に、開業から30数年を経て感じることや医療への思いを話してもらった。

(取材日2016年6月2日)

恩師から学び、数多くの症例を重ねてきた膣式手術法

2015年で開院30周年でしたが、なぜこの場所を選ばれたのですか?

太田八千穂院長 川間太田産婦人科医院1

実は軽井沢で開業したかったんですが、1980年代当時はまだ新幹線もない頃。子どもの教育のこともあって諦めました。野田市を選んだのは、母が私のことを風水の易者に見てもらったところ「西では芽が出ない。東で、少し北が良い」と言われたのを漠然と信じたことと、東武鉄道で都市開発などを担当していた高校時代の同級生から「東武野田線は間違いないよ」というアバウトなアドバイスをもらったこと。そしてここが車なしで駅から徒歩5分で来られる、まとまった土地という条件を満たしていたことなどが絡み合った結果ですね。あとは比較的都心に近く自然が多く残る場所であることも理由の一つですね。

先生が産婦人科の医師になったきっかけは何だったのでしょう?

医師をめざしたことに大きなきっかけがあったわけではないんです。父が昭和10年代に足立区に産婦人科を開いており、「自分も産婦人科医師になるんだろう」という漠然とした感覚で過ごしていました。3つ上の兄は開成高校で常に1位、2位の成績でそのまま東大へ現役合格した成績優秀者。片や私は同じ開成高校でも成績が悪いほうで、兄とは違う大学へ進学しました。卒業後は産婦人科医師として東京都がん検診センターで勤めたのですが、その頃に出会ったのが膣式手術の技術を確立した辻啓(つじあきら)先生です。開腹せずに子宮筋腫を取る方法である、この膣式手術を知った時は「これだ!」と衝撃を受けました。それから5年間、高島平にあった先生の医院に通って指導を受けました。その時の1日3例執刀というのが、私のスタンダードです。その千本ノックならぬ1万本ノックがあったから、今の私があるんです。

辻先生との出会いが、人生の転機になったのですね。

太田八千穂院長 川間太田産婦人科医院2

そうです。開成高校での成績は良くない。大学を卒業し医師免許は手にしたものの、「こんなにできない奴が医師になっていいのか」とずっと悩んでいたんです。辻先生の技術に巡り合い、「これを覚えれば、メシを食っていける」と一生懸命取り組む中で、初めて仕事の面白さを知ることができました。先生は、海軍兵学校在学中に終戦を迎え、優秀な造船技師だったお父さんと同じ道をと一旦東大工学部へ。しかしそのまま勤め人になるのを良しとせずに医科に入り直し、産婦人科医師の道を選ばれた方。当時は兵学校卒業者が多く戦死したことを考えれば、そこを生き延びたという思いが先生の中にあったのではないかと思います。

体への負担が少ないのが膣式手術の何よりのメリット

診療内容について教えてください。

太田八千穂院長 川間太田産婦人科医院3

産科・婦人科・小児科・内科・麻酔科など広く診ていますが、特に子宮内膜症や子宮筋腫、子宮が下がってくる子宮脱など、子宮に関わる病気の検査や手術を得意としています。それぞれ、適した治療法は筋腫の大きさや子宮の状態、妊娠希望の有無などにより変わりますが、子宮筋腫の場合なら大きくは薬物療法、筋腫核のみ取り除く方法、子宮全摘出手術の3つがあります。当院の特徴であり最も問い合わせが多いのは、開腹せずにお産のように膣からアプローチする「膣式手術」で、開腹式に比べて傷が表面に残りにくく、体への負担が少ないというメリットがあります。子宮全摘出の場合は「三回結紮(けっさつ)子宮摘出術 」という辻先生が開発された安全性に配慮した方法を取っています。

また、多くの患者さんを診てきていて、何か変化を感じていることはありますか?

ここ2年ほどで子宮筋腫の手術は減りました。薬物療法や腹腔鏡手術が広まったためだと思いますが、その一方で、筋腫の大きさが1kg前後と極端に大きい筋腫の方が多く来院するようにもなりました。その中には膣式手術を希望される方もいらっしゃいますが、膣式が行えるのは辻先生が経験に基づいて示しているように800gの腫瘍までで、それ以上になると開腹せざるを得ません。できるだけ下腹部の横切開術を考えますが、真ん中を切る「正中縦切開法」となる場合も多いです。膣式手術では、現在は子宮脱の手術が多いです。こんなに子宮脱で苦しんでいる方が多いのかと驚くほどです。

遠方からの患者さんも多いと聞きました。

太田八千穂院長 川間太田産婦人科医院4

インターネットで膣式手術を調べて来る人が多く、関東一円からいらっしゃいます。また、遠くは大分県の別府市や秋田県から来られた方もいらっしゃいましたね。あとは柏や東川口など近隣のクリニックからの紹介の方も多いですね。もちろん、実際に話をしてみて「やめる」という方もいらっしゃいますが、それも患者さんの選択です。まずは来院していただき、お話しさせていただく、どんな方法なのか、メリットやデメリットについてご理解いただくことが一番だと思っています。私は極論すれば、膣式手術を提供する場をつくりたくて、ここで開業したようなものなので、本当に必要としてくれる人にこの医療を届けられればそれでいいと思っています。

山を通じて学んだのは「死の哲学」

学生時代のエピソードなども教えてください。

太田八千穂院長 川間太田産婦人科医院5

開成中学校・高等学校と山岳部に入り、山についての初歩的な考え方を学習して、大学でも山岳部でした。山を通じて学んだのは「死の哲学」ですね。死は誰にでも訪れるという、言葉にすれば当たり前のことですが、山に行き続けると、いつかは対面する事実なんだと思います。それを大きく感じたのは、実際に先輩が1人、北アルプスの釼岳、八ツ峰というところで亡くなったときです。一緒に登っていたわけではありませんでしたが。もう一つ、山から学んだことは食事です。冬山の午前1時に、食事当番で半ば眠りながらバーナーを使って食事を作ったこともありました。食事のありがたさを教えられましたね。その経験から、入院されている患者さんの食事にはできるだけ良いものを出すように心がけており、食材や食器にもこだわって使っているんですよ。

休日はどのように過ごされているのですか?

日曜は、よく診療所から歩いて15分ぐらいの喫茶店にコーヒーを飲みに行きます。通りからやや高い所に店があり、広くて良く手入れされたきれいな庭があるんですよ。まるで軽井沢にいるような気がします。テレビもよく見ますよ。他には、幕末の鳥羽伏見の戦い、上野黒門、寛永寺と戊辰戦争に思いを巡らして、旧幕府軍の会津への敗走ルートを意識しながら東武鉄道に乗って会津へ一人旅に出かけたりもします。昭和1桁生まれの作者の作品も多く読んできましたし、映画も観ます。特に印象に残っている映画は1981年に公開されたドイツの潜水艦映画で、5~6回は見直しました。これは膣式手術の術者には必見の作品ではないかと思っています。

これからの先生の展望をお聞かせください。

太田八千穂院長 川間太田産婦人科医院6

私が学生の頃、東京慈恵会医科大学は「開業医のメッカ」と言われた時期がありました。これは良い意味で言われていたわけではないかもしれませんね。そんな中でも、恩師の技術を身につけた以上、持てる力を尽くして、この技術を必要としている人たちに心から頼られる存在でい続けたいと思っています。また、子育ても一段落していますので、軽井沢への進出も考えているんですよ。あとは、大学4年頃を境に山に行かなくなって以来、ずっと興味を持ち続けている文学。書くことに興味があるので、これからでも物書きになってみたいとも思っています。

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