関山 達也 院長、関山 裕士 先生の独自取材記事
関山医院
(さいたま市緑区/浦和美園駅)
最終更新日:2021/10/12
1930年の開院以来88年、6代にわたって地域とともにある「関山医院」。「何かあったら、関山先生の所に行けば大丈夫」と信頼を寄せる患者も多く、それに応えることを使命とするクリニックだ。1999年に改築した建物は、当時の面影を留めつつも、幅広い層に優しいバリアフリー設計。通常は日本消化器病学会消化器病専門医・日本肝臓学会肝臓専門医である院長・関山達也先生と、院長の長男で日本内科学会総合内科専門医・日本循環器学会循環器専門医資格を持つ関山裕士先生の二診体制で、専門分野はもちろん、胃腸炎から生活習慣病、ケガや蜂刺症(ハチ刺され)などの外傷、そして訪問診療まで、さまざまな年代の症状に対応している。今回は関山院長と裕士先生に、医院の体制や地域への思いについて聞いた。
(取材日2018年8月27日)
地域の人たちとは家族ぐるみの付き合い
2015年に開院85周年を迎えられたそうですね。
【関山院長】はい。最初にここにクリニックを開いたのは私の祖父で、1930年に2kmほど離れた場所から移転して来たのが始まりです。当時は、医院の玄関は土間造りで待合室は畳敷き。周辺に医院がなかったこともあり、地域のかかりつけ医として診療していたようで、ここで気管切開までしたことがあると聞いています。父も軍医経験が長かったので、同じように患者さんの訴えには幅広く対処していました。今は近隣に市立病院などもあり連携をしているので、さすがに院内で手術まですることはありませんが、先代たちが築いてきた「調子の悪いときは、関山医院に行けば大丈夫」という信頼に応えるためにも、2人それぞれの専門分野はもちろん、子どもからお年寄りまで広く診させてもらっています。
お二人に診療の分担はあるのでしょうか?
【裕士先生】院長は肝臓、僕は心臓が専門なので、例えば今新しい治療が始まっているB型肝炎やC型肝炎などは、院長の担当ですね。一方、心臓の病気をお持ちの方、健康診断で異常があった方、生活習慣病の方などは主に僕が診ています。
【関山院長】そういった専門性の高い疾患以外の症状については、特に分担はありません。また、金曜日は裕士が総合病院で診察を行っているため、次男で消化器が専門の関山達彦が当院で診療をしています。常に二診体制で診察ができますので、お待たせする時間も少ないのではないかと思います。
訪問診療にも力を入れているとか。
【関山院長】往診は、祖父の代から行っています。主に外来の延長として、通院が難しくなってしまった患者さんの家に伺っています。ただ最近は、病診連携をしているさいたま市立病院などから、肝臓がんや胆のうがん、心臓疾患などの専門性の高い治療が必要な方を紹介いただくケースも多く、訪問診療で重症の方を診る機会も増えてきましたね。
【裕士先生】この地域は本当に交通の便が悪いので、車移動ができなくなってしまうと、通院が途切れてしまうんです。そういう患者さんのもとに往診に伺って、疾患から服薬状況まで診させていただくと、症状が改善して喜んでいただける方も多くて。もちろん自分の専門分野の患者さんは遠方でも受けつけていますが、やはり第一には、そういったずっと診てきた患者さんたちに恩返しも込めてきちんとした医療を提供していきたいと思っています。
家族まで含めて、一人ひとりの患者を診る
診療にあたり大切にしていることは何ですか?
【関山院長】当たり前のことですが、しっかり話を聞いて、診察して、診断すること。丁寧に「きちんと診ること」ですね。
【裕士先生】大学病院の外来診療ではどうしても時間が取れず、入院中の患者さんと話すのにも満足のいく時間が取れないことが多々ありました。ですから今は、一人ひとりの患者さんにできるだけ時間を取ることを大切にしています。患者さん本人の話はもちろん、できればご家族の話も聞いて、訪問診療に行った時はその人の生活環境も見て、その方に合った治療をしていきたいと思っています。家で薬を飲めているかなどは、ご家族に聞かないとわからないこともありますから。そこまで踏み込んでこその地域医療だと思うので、訪問診療も含めてしっかり関わっていきたいです。
院内の検査体制について教えてください。
【裕士先生】デジタルレントゲンによる胸部レントゲンや胃のエックス線検査、骨密度・骨年齢の検査などはすぐに当院で結果が見られます。僕の専門の心臓関連では、まずエコーと心電計の他に、ホルター心電図、訪問診療専用の持ち運び可能な超音波検査機器。それから心筋梗塞の迅速な判断に役立つタンパク質「トロポニンI」を検出できる機器もそろえました。心筋梗塞の方が来ることは少ないのですが、もし来られた時に見逃しがあってはいけないため、しっかり対応できる体制を整えています。
【関山院長】肝臓・生活習慣病関連では、肝炎の治療に、以前からインターフェロン治療を行っていたこともあり、迅速に血液検査を行えるように自動血球計数装置を入れています。糖尿病の指標となるHbA1cもその場で測れ、すぐ薬の調整ができるような体制も作っています。
専門の治療が必要な場合は、どんな病院への紹介が多いのでしょう?
【裕士先生】特にさいたま市立病院と連携することが多いですね。いつも迅速に対応していただいて、特に心筋梗塞など早急な治療が求められる疾患の際には助かっています。あとは、狭心症や心臓弁膜症、不整脈のカテーテルアブレーション治療などの心臓の専門治療は、僕の前職場である東京慈恵会医科大学附属病院の先輩・後輩と連携を取ることが多いです。いざという時は携帯番号まで知っている医師が何人もいますし、24時間直通の電話もありますので、必要だと判断した際には適切な医療機関にご紹介をさせていただいています。
信頼される医院、信頼に応えられる医院であり続けたい
今後さらに力を入れたいことはありますか?
【関山院長】通院が難しくなったり、退院後家で療養する方はこれからも増えていくと思いますので、ニーズに合わせて訪問診療の枠をもう少し増やしたいですね。できれば訪問看護も行っていきたいです。
【裕士先生】まず自分たちにできることをしっかりやることが、地域に最も貢献できる道だと思っています。僕が大学を辞めて、関山医院の常勤になったのは2016年4月からで、専門の心臓以外のこと、例えばがんの痛みコントロールや呼吸器疾患などについては、まだまだ勉強中の身。経験を積み、父や先代たちが築きあげてきた、「関山先生のところに行けば大丈夫」という信頼にしっかり応えられるよう、内科全般から専門外の分野まで、広く診られるようになりたいと思っています。
お忙しい中、休日はどのように過ごされているのでしょう?
【関山院長】家に薪ストーブがあるのですが、そこへ自分で割った薪を入れて火を眺めながら考え事をする時間が、リラックスになっていますね。また、近くの見沼自然公園を散歩したりもします。たまに患者さんとすれ違って、声をかけていただくこともあるんですよ。ただ、そういった外出中でも医院への電話などは極力取るようにしていますので、万が一私たちが遠方にいる際に連絡をもらった場合はすぐさいたま市立病院に連絡し診てもらったりと、緊急連絡には24時間対応できるようにしています。
【裕士先生】外出は近隣が多いですが、たまに遠出をするときは、父と日程が重ならないよう調整しています。仕事は忙しいですが、勤務医時代に比べればストレスはあまり感じません。24時間対応にしても、緊急の連絡が入り大雪の深夜に出かけることなどもありましたが、特に苦に思ったことはないんです。そうして最期まで寄り添えることをうれしく思います。
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
【裕士先生】この地域に2代、3代と暮らし、通っていただいている方は既にご存知かもしれませんが、決して敷居が高い医院ではありません。2人体制となり、長くお待たせすることもなく診療もできると思いますので、身構えずに来てもらえればうれしいです。
【関山院長】赤ちゃんからおじいちゃん・おばあちゃんまでみんな診ましょう、一緒にやっていきましょうという方針でやっています。ここは診療所兼自宅ですので、例えば夜11時に「尿道のバルーンカテーテルが詰まった!」というような時も対応できます。そんなふうに、困った時はいつでも頼ってもらえる、それに応えられる医院としてこれまでやってきましたし、これからもやっていきたいと思っています。