全国のドクター8,884人の想いを取材
クリニック・病院 161,496件の情報を掲載(2020年1月18日現在)

  1. TOP
  2. 埼玉県
  3. さいたま市浦和区
  4. 北浦和駅
  5. 医療生協さいたま生活協同組合 浦和民主診療所
  6. 肥田 泰 所長

肥田 泰 所長の独自取材記事

医療生協さいたま生活協同組合 浦和民主診療所

(さいたま市浦和区/北浦和駅)

最終更新日:2019/08/28

20190507 bana

北浦和の静かな住宅街に位置する「医療生協さいたま生活協同組合 浦和民主診療所」は、地域の病院として1964年に誕生。外来、往診、健康診断を三本の柱として、地域密着の医療を続けている診療所だ。所長・肥田泰先生の「医療や福祉にお金による差別を持ち込んではいけない」という信念にもとづき、場合によって無料で受診できる無料低額診療事業を実践。来院患者だけでなく、地域みんなの健康意識を高めるための情報発信にも積極的に取り組んでいる。肥田所長に地域医療への思いを聞いてきた。
(取材日2016年10月6日/情報更新日2019年4月28日)

地域に根差して50年

長い歴史のある診療所だと聞きました。

1

1964年の開業で、最初は北浦和駅東口から5分ぐらいのところにありました。設立経緯としては、当時既に県内にここと同じような医療生協の診療所が8つあり「県の中心である浦和市にも診療所を作ってほしい」という要望を受けて、じゃあということで8つの診療所が力を合わせ、人材を出し合って開いたものです。20年ぐらいたって手狭になったので一度引越し、現在の場所に移ったのは10年前ぐらいですね。診療内容としては外来と往診、健康診断が三本柱で、これは今も変わりません。基本的に午前中が外来で3~4つの診察室で大体1日120~160、170人ぐらいの患者さんが来られます。午後は往診で月約100件、健康診断は年間6000件ぐらいですね。胃カメラ検査やさいたま市のもの忘れ検診、何か異常が見つかった場合の精密検査などで役立つCT検査も行っています。

先生が医師をめざされたきっかけは何だったのでしょう?

父ですね。広島の病院で働いていた軍医で、原爆が落とされた時は往診に出かけていた郊外で、自身も内部被爆しながら逃げてきた方々を診ていたそうです。「こんな兵器は許してはいけない」と、戦後は核兵器廃絶と被爆者の治療に取り組んでおり、そんな姿を見て育ったためか、自然に「地域の人のために医療を提供する医師になれれば」と考えるようになりました。それで東京大学医学部に進学したのですが、当時は学園紛争真っ只中。私自身学生運動をやっていたこともあり、大学には残りたくなかったので、卒業後は山梨県の病院に約4年間勤めました。その後県内に戻り、内科・外科両方の経験があったことから、後に所沢の埼玉西協同病院の院長を引き受けることになりました。埼玉協同病院でも10年ほど院長をして、定年後は浦和民主診療所を手伝っていました。しかし所長が病院の若手指導のために異動されたので、5年ほど前から私が所長を務めている次第です。

どんな患者さんが多いのですか?

2

健診では若い方たちも来られますが、私の外来に来る人は約8割がご高齢の方です。だから病院までの足というのはとても大切ですね。動けないわけじゃないけれど足腰が弱って1人で来るのは大変という場合は車で送迎しますし、来られなくなったら往診しています。

実践的な運動指導で健康への意識を高める

専門の外来もありますね。

3

もの忘れと糖尿病の専門外来を設けています。あと消化器、循環器それぞれの専門の医師もいますが、専門領域だけを診ているわけではなく、内科全体を診ながらより専門知識が必要な場合はその専門の医師が診る、という形です。軽い糖尿病なら一般外来で診ていますが、インスリンが必要などなかなか状態が安定しない方は、糖尿病の外来で診てもらうようにしています。もの忘れの外来は、さいたま市で2016年からもの忘れ検診が始まったこともあり、これから患者さんが増えていく可能性が高い分野です。家族を含めてお話を聞いて、困っていることやその人の本当の状態を知った上で対応していく、というものですね。

入り口にポスターがありましたが、運動教室もあるのですか?

それはこれからですね。高血圧や糖尿病といったいわゆる生活習慣病の治療では、食事と運動が大切です。この診療所の一つの特徴として、土曜日以外は管理栄養士に来てもらい、食事に関してはそこで話を聞いてもらうようにしています。でも運動については「体を動かしてくださいね」以上のアドバイスがなかなかできなかった。そこで、今会議室になっている4階をメディカルフィットネスにして、運動の指導も始めようと考えています。そうして運動をできるだけ実際の生活の中に取り入れてもらいます。生活そのものを変えないと病気はよくならないことを患者さんに実感してもらうのは非常に大切なこと。「検査をして薬を出して終わり」ではない診療スタイルを追及していきたいと思います。

病気を治すには、まず健康に意識を向けることが大事だと。

4

そうです。それを診療所に来る人だけでなく、ホームページや講演、もっと小さい単位で食事や栄養、認知症について地域に発信し、地域全体の健康度を少しずつアップさせていきたい、というのが長年医師をやっていての私の思いです。診療所に来てくれる人だけを診ても経営は成り立つかもしれませんが、私自身の医師としての役割を考えると、それだけでは足りないと思うのです。例えば、毎日長時間働いている人が具合が悪くなったとして、薬でまずは良くなるかもしれないけれど、長時間労働が改善されないままで根本的に病気が良くなるかというと、そうではありませんよね。でもそこには、われわれはなかなか手が出せない。そこを変えるには、地域の中から健康に対する意識を高めていき、社会全体を根本から改善する考え方にしていくことが必要なんです。簡単にはいかないことだけれども、そういう考え方でやっているのも当院の特徴の一つです。

医療・福祉全体にも関わる話なのですね。

社会全体を良い方向に動かしていかないと、病気を良くすることもなかなか難しいということを、何より地域の方々にわかっていただきたいですね。そうやって一緒にやっていけば、全体の医療や介護、福祉も変わっていくんじゃないかと思うのです。

場合によっては無料での受診にも対応

先生が医師として一番大切にされていることは何でしょうか?

5

「医療や福祉にお金による差別を持ち込んではならない」ということです。お金があるといい医療が受けられ、お金がないと受けられないのは医療の世界にはなじまないというのが私の主義でずっとその思いで診療してきました。同時に、この思いが少しでも医療従事者や生協組合員の方々に伝わればいいなという気持ちはあります。以前に全日本民主医療機関連合会(民医連)の会長も務めていたこともあり、診療しながら社会保障に関わる運動にも取り組んできました。その一つがお金がない場合は無料で医療が受けられる「無料低額診療事業」の推進で、当院でもこの事業を利用できます。電話でも相談を受けつけていますし、診療の際に言ってもらっても構わないので、お困りでしたらまずご相談ください。

介護との連携についても教えてください。

主に同じ法人の事業所である「ケアステーションうらしん」と連携しながら、往診に伺っている患者さんには訪問看護は必ず入れるようにして、必要なら訪問入浴やリハビリテーション、ヘルパーさんにも入ってもらっています。また2016年から所内に介護の相談員1人が常駐するようになりました。「介護や生活のことで困っていることがあるけれど、どこに相談したらいいかわからない」という方は結構いらっしゃるので、その窓口になっていきたいと思っています。

最後に、地域の人々に向けて一言メッセージをお願いします。

6

病院や診療所を選ぶのに一番大切なのは、患者さんの人権がきちんと守られているかどうかだと思います。昔は、医師は「診てやる」患者さんは「診ていただく」という考え方がまかり通っていました。今は大分変わったとはいえ、何か問題が起きたらすぐに覆い隠そうとする、上がやったことに下は何も言えないという構造は、日本の医療界の中に体質として残っていると思います。健康の問題や手術、命についていつも具体的に説明してくれるのかはとても大事なこと。外から見たり、1回行っただけではわからないので難しいところですが、医療機関を選ぶ際はこの点を考慮して、納得がいく説明が受けられるかなどを参考にするとよいのではないでしょうか。

Access