金子 健二 院長の独自取材記事
金子医院
(蕨市/蕨駅)
最終更新日:2024/06/24

蕨駅より徒歩8分、半世紀以上前に病院として開設され、親子2代にわたって地域医療を支え続けてきた「金子医院」を訪ねた。外観は往時のたたずまいを残しつつ、院内は7年ほど前にリニューアルし、バリアフリー化。中庭に面した広々とした待合室など、アットホームな雰囲気にホッと心が和む。院長の金子健二先生は、放射線科を中心に豊富な研鑽を積み、父である前院長から医院を継承。以来30年以上にわたって、地域のホームドクターとして患者の健康を見守り続けてきた。蕨戸田市医師会の活動にも従事し、現在は高齢者施設への訪問診療に力を注ぐ金子先生に、医院のこれまでの歩みや診療時に心がけていること、かかりつけ医の担うべき役割などについて、幅広く話を聞いた。
(取材日2023年9月21日)
患者とのコミュニケーションを大切に
こちらの医院はお父さまから継承されたそうですね。

前院長である父が50年以上前に病院として開設したのが、当院の始まりです。私には兄がいるのですが、小児科の医師で主に白血病の診療を手がけていたこともあり、放射線科で画像診断を得意とする私のほうが開業医に向いているということで、1989年に父の後を引き継ぐことになりました。外観を見てお気づきかもしれませんが、開設当時は20床を抱える病院として運営していました。その後の法律改正等に伴って有床診療所となり、私が継承するタイミングで、ベッドを持たずに外来診療を手がける現在の形になりました。
どんな方が多く来院されていますか?
近隣の方が中心で、最近はやはり高齢の患者さんの割合が圧倒的に多くなりました。私は個人宅のほか、高齢者施設への訪問診療も数多く手がけています。また、近年は外国籍の方の来院も増えており、高齢の方や、日本語の理解が十分でない方には、検査結果や病状など、わかりやすさを最優先に画像をお見せしたり、簡略化したイラストで書き示したりして、繰り返し丁寧にお伝えするようにしています。
診療時に心がけていることはありますか?

なるべく患者さんの話に耳を傾けることですね。せっかく来院したのに、患者さんが不安や疑問を言い出せず、一方的に医師の話の聞き役になってしまっては意味がありませんからね。患者さんは一般的に、医師と話すときに少なからず緊張していますし、検査の末、予想外の病気に話が及ぶと、当然ながら動揺して話の内容をしっかり受け止められないこともあるでしょう。ですからどんなときでも、患者さんの受け止め方を注視しながら、わかりやすさはもちろんのこと、十分に理解してもらえるまで、同じ話題でも繰り返しご説明するようにしています。帰宅してから、「先生の話は聞いていたけれど、結局よくわからなかった」という場合もあると思うので、必要に応じて要点をメモにして紙でお渡しします。
外来の傍ら、地域でニーズの高い訪問診療にも注力
近年は訪問診療にも注力されているそうですね。

そうですね。新型コロナウイルス感染症の流行を経て、地域でもニーズが高まっている訪問診療を数多くお受けするようになりました。現在は高齢者施設の入所者を含め、訪問診療だけでも多くの患者さんに対応していて、基本的には月2回ペース、うち1ヵ所の高齢者施設には毎週出向いています。私が訪問診療に出かけている際には、非常勤医として私の兄や同僚が外来診療を担当しており、通院可能なかかりつけ患者さんにご不便をおかけすることはありませんのでご安心ください。
先生は蕨戸田市医師会でも長年活動されていたと伺いました。
地域の先生同士の連携を深め、地域住民の健康をサポートしていくことが医師会の務め。地域の中での病診連携、診診連携の強化を進めてきました。2020年から私たちの暮らしに多大な影響をもたらした新型コロナウイルス感染症への対応も行いました。同会では診療時の必需品となる防護具を早々に確保していたこともあり、医師会の急患診療所を利用する形で、埼玉県内の医師会の中でも早くからPCR検査の体制を整えることができました。同会の取り組みをモデルケースとして県全体に取り組みが広がり、県から減圧テントが支給されるなど、安全な検査体制の構築に一定の道筋をつけることができたと自負しています。
画像診断の果たす役割についても、ご専門の立場から少しお聞かせいただけますか?

画像診断はすべての科の医師が行う、基本的な診療技術の1つで、他の診療技術を補完し、患者さんの疾患の総合的な診断を助ける重要な役割を担っています。最近では1枚の画像が診断の決め手になることも非常に多くなっています。私は、かなり高いレベルでの画像診断を院内で行えるよう努めてきました。しかし医療技術は日進月歩で変化し、より早期に適切な診断ができるようになり、先進の設備を備えた近隣の病院に医療連携でご紹介することも必要になってきています。何か疑いがある場合には、速やかに戸田、蕨、川口、さいたま市の医療機関、さらに都内大学病院などにもご紹介を行います。現段階での最高水準の医療を提供できるようめざしていますので、気になる症状があるようでしたらまずは当院にご相談ください。
身近な医療の専門家として患者に寄り添い続ける
毎日お忙しいと思いますが、休日はどのように過ごされていますか?

私自身、手術やけがを経験したため、それまで趣味で楽しんでいたテニスやゴルフもできなくなってしまいました。一時的に体力も落ちてしまったので、現在は定期的に個人トレーナーの方に来ていただいて、筋力トレーニング、心肺機能を高める運動を行っています。外来診療の傍ら、精力的に訪問診療に出向くことができるようになったのも、こうしたトレーニングの賜物ですね。もともと体を動かすことが好きなので、この調子でトレーニングを続け、以前のように市民10キロマラソンや、さらにハーフマラソンにも挑戦したいと思っています。
地域の中でどのような存在の医院でありたいとお考えですか?
やはり、困ったときに相談したいと思えるような医院であり続けることが目標ですね。医療機関というのは、患者さんに「弱いところ」を見せていただくところですから、診療では言いにくいことであっても胸の内を率直に話していただく必要があります。当然ながら、患者さんからたくさんの情報が得られれば、より早く適切な診断を下すことにつながるでしょうし、逆に間違った診断を下すリスクを減らすことにもつながると考えます。ですから気になることがあれば自己判断せず、些細なことでも構いませんので、何でも医師に話してみてください。
最後になりますが、読者に向けて一言メッセージをお願いします。

在宅療養中の方を中心に日々の服薬量の多さが深刻に感じており、かかりつけ医としてできる限り必要最小限の量に減らすことができないか試行錯誤を続けているところです。また最近は、患者さんの状態によっては必要に応じて病院や他の医療機関をご紹介するようにしていますが、患者さんは紹介先で提示された複数の治療法についてどれを選択すべきか迷われることもあると思います。街のかかりつけ医は身近な医療の専門家です。紹介先の病院に通院する中で不安なことがあれば、何でもお気軽にご相談ください。病院での説明をさらにかみ砕いて解説し、患者さんにとって最善な治療になるよう、専門家の立場からサポートさせていただきます。