虎溪 則孝 院長の独自取材記事
虎溪医院
(草加市/獨協大学前〈草加松原〉駅)
最終更新日:2021/10/12
獨協大学前駅から車で12分ほどの住宅街に建つ「虎溪医院」。白を基調とした風格あるたたずまいが印象的なクリニックは、1982年の開業以来、地域の医療を支え続けている。先代院長である父親から2014年に引き継いだ虎溪則孝(とらたに・のりたか)院長は、獨協医科大学越谷病院(現・獨協医科大学埼玉医療センター)で10年ほど循環器内科・不整脈を専門として研鑽を積んできた。「大きな病院では難しいこまやかな医療」をモットーに何でも相談できる、かかりつけ医として質の高い医療の提供を心がけている。専門である循環器疾患や不整脈については特にきめ細かく対応し、遠方からも患者が訪れている。そんな虎溪院長にクリニックの特徴などについて話を聞いた。
(取材日2020年8月28日)
循環器疾患を中心に生活習慣病など幅広く診療
先生は2代目院長と伺いました。
はい。当院は1982年に消化器外科が専門である父が開業したクリニックです。私は循環器が専門で、獨協医科大学越谷病院に勤務していた頃から週に1回、ここで診療していましたが、2014年から院長としてこのクリニックを引き継ぎました。今でも獨協医科大学では非常勤講師を務めていて、若手の医師にペースメーカの施術指導などを行っています。当院の引き継ぎにあたっては、内装をリニューアルし、診療室を3室に増やし、エントランスや通路などはバリアフリーを意識しました。待合室も広くして患者さんがゆったりと過ごせるように配慮しました。最近では一般的な内科疾患や循環器疾患、糖尿病などで受診する患者さんが増えています。私が循環器を専門としていますので、循環器疾患の方も多く、かなり遠方からもいらしています。
院内で取り組まれている感染症対策を教えてください。
院内の至る所に消毒液を設置するのはもちろん、受付カウンターに顔認証式の検温器を設置して来院者全員の体温測定をしています。また発熱や咳、喉の痛みなどの症状がある患者さんは、まずは電話にて問診をしています。その上で新型コロナウイルス感染症のPCR検査や抗原検査、診察のために来院の必要がある際には、一般の患者さんとは、診察の時間と場所をしっかり区切って対応して対策を行っています。普段よりかかりつけとして通院していただいている患者さんには慢性疾患を抱えている方もいますので、感染症対策として電話診療で処方箋を発行するなどの対応をして普段と変わらない処方ができるようにしています。当院では初診から電話診療を受けつけていますので、まずは電話でご相談ください。
先生は循環器疾患、中でも不整脈が専門と伺いましたが、循環器内科を専門に選んだ理由を教えてください。
医師になると決めた時から将来的には開業医になりたいと思っていたのですが、大学病院に勤めた場合、一つの専門科に入局し、その後に他の科を学んでいく必要があります。各科はどれも重要ですが、命に直接影響のある心臓を扱う循環器診療が最も大切だと考えました。まず循環器をしっかり診られるようになって、そこから他の内臓疾患など体全体を診ていきたいと思ったのです。循環器診療の対象は、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患、つまり血管系の疾患と、不整脈などの電気系統の疾患にわかれるのですが、私は不整脈の治療に関心が高かったのです。ちょうど大学病院で不整脈に携わってきた十数年間は、不整脈の治療が劇的に進歩した時代でした。カテーテルアブレーションやCRT(心臓再同期療法)といった手術が保険適用となった時期から数多く経験することができました。
患者が抱える問題について丁寧に説明し解決に導く
こちらでは、循環器疾患の患者さんにはどのような診療をなさっているのですか?
循環器の専門家による診療を身近なクリニックで受けられることをモットーに、きめ細かな診療を心がけています。大学病院ですと月に1回くらいしか受診できないことも多いですが、ここならいつでも受診していただけますし、心電図検査や心エコーなどの検査も迅速に受けられます。また、イベントレコーダーという機器も導入しています。これは2週間程度、患者さんに貸し出して不整脈が出た時に患者さん自身で心電図記録をとってもらうものです。心臓病は症状のあるときにしか心電図に変化が出ないものも多く、たまにしか発作の出ない病気を診断するのに役立てています。また、心臓ペースメーカや植込型除細動器に関する診療やチェックができるのも特徴です。ペースメーカはつけて終わりではなく、生活状態に応じて微調整が必要なのですね。ペースメーカの遠隔モニタリングも行っており、何か異常があった場合には早期に介入できるようにしています。
診療の際、どのようなことを心がけていますか?
病気を診るのではなく、一人の人間として患者さんそのものを診ることです。治療をするというのはそれが本来の目的ではなく、その人が健康を取り戻して豊かな一生を送るための手段にすぎません。どのようにすれば、その人が病気に左右されずに生活ができるのか考えるようにしています。そのためには、精神状態や生活環境も関わってきますので、そういった点も含めて診ています。また、今、その人が抱えている問題について、どうしたら解決できるかという点も重視しています。例えば、動悸があると受診された場合、その動悸自体が不快で寝られないのか、あるいはその動悸は不快ではないけれど不安で仕方ないのか。そんな時、単に不整脈ですから薬を出しておきますね、という対応では根本的な解決にはならないでしょう。その動悸が安全なものなのかどうか、丁寧に説明してその人の抱えている問題を解決することが大切だと思います。
薬についても工夫なさっているそうですね。
当院では薬は出しすぎないようにしています。高齢になると病気も増えてきて、それに伴って処方される薬も増えがちですが、種類や数など全体的なバランスを考えながらできる限り減らすようにしています。実は、必要でない薬を飲み続けているケースも多いのですね。例えば、めまいやしびれが出た時にもらった薬をそのままずっと飲み続けているということもよくあります。年齢が高くなると腎臓機能が低下して、薬の成分を代謝しにくくなることもあります。その人の病状や年齢、内臓機能なども考えながら薬を見直して、種類や量を調節しています。
血管年齢検査や24時間血圧計など検査体制も充実
こちらならではの医療機器について教えてください。
先ほどお話ししたような循環器疾患の診療を行うのに必要な機器のほかには、白衣高血圧や早朝高血圧のある人の検査に24時間血圧測定器を使用することもあります。また動脈硬化の検査として頸動脈エコーに加えてCAVI検査なども行っています。心エコー検査は時間をかけて丁寧に行っていますので予約制ですが、ホルター心電図などの検査は当日すぐに行えるのもクリニックならではのことです。さらに、糖尿病検査に必須であるHbA1cの数値も、検査後数分で結果が出ます。
お忙しいかと思いますが、お休みの日はどのようにお過ごしですか。
3歳と8歳の子どもがいますので、休日は子どもたちと過ごしていることが多いですね。一緒に走ったり、体を動かしたりしています。この2月にはマラソン大会で16キロほど走りました。また大会が開かれるようになれば、機会を見つけて参加したいですね。自身の健康維持も大切ですから、今は、自宅から自転車で通勤しています。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いいたします。
かかりつけ医として、また、循環器・不整脈を専門とする医師として、より質の高い医療を提供できるよう努力したいと思います。医学の進歩は目覚ましく、時代のニーズも日々変化します。今、新型コロナウイルス感染症のような新しい感染症も出てきて、医療を取り巻く環境も大きく変わってきています。そのような変化に迅速に対応できるようアンテナを張り巡らせ、その時代の社会環境に即して、かつその人にとって最善の治療をアドバイスできるようさらに研鑽を重ねていこうと思います。人間は誰でも年を取って体も変化します。若い時はあまり気にしないかもしれませんが、年齢を重ねて気づいた時にはもう遅いということも考えられます。そんなことのないよう、若い時から健康診断を定期的に受けて、ご自身の健康状態に気を配っていただきたいですね。もしも体のことで悩みや心配事があれば、どんなに小さいことでも気軽に相談に来てください。