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杉浦 敏之 理事長の独自取材記事

杉浦医院

(川口市/川口駅)

最終更新日:2020/04/01

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川口駅東口から続く六間道路を3分ほど歩くと右手に見えてくる、医療モールの3階にあるのが「杉浦医院」だ。気さくで話しやすい人柄で人々からの信頼を集めている同院の杉浦敏之理事長は、町のかかりつけ医として内科と外科を中心に幅広く診療すると同時に、訪問診療にも力を入れて取り組んでいる。さらに最近では、終末期の対応をあらかじめ決めて、家族と共有しておくという「アドバンスケアプランニング」の啓発に力を入れており、日々の診療の中で患者に話をするほか、講演活動も積極的に行っている。「死を恐れて蓋をしてしまうのは不健康だと思うのです」と話す杉浦理事長に、同院の診療やアドバンスケアプランニングなどについて、話を聞いた。
(取材日2019年10月24日)

外来と訪問診療に取り組むかかりつけ医

医院の概要についてご紹介いただけますか?

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外科の医師だった父が、1958年にこの地で「杉浦医院」を開院しました。ずっと戸建ての医院だったのですが、川口駅前の大規模な再開発に協力する形で、2005年にこの医療モールに移転したのです。私がクリニックを継承したのは2003年です。患者さんは、以前はご高齢の方が多かったのですが、最近は近くにマンションがたくさん建ったこともあって、20代から60代までの幅広い年齢の方に来ていただいています。診療科目は内科と外科、循環器内科、消化器内科ですが、かかりつけ医として幅広く診療をしています。高血圧や糖尿病などの生活習慣病で長いお付き合いの方もいますし、冬になれば風邪やインフルエンザの方も多いですね。訪問診療では、パーキンソン病のような神経難病の方や、高齢で寝たきりの方、末期がんの患者さんなどがいらっしゃいます。

訪問診療に力を入れていると伺いました。

訪問診療は、クリニックを継承した時から力を入れています。当初は単独で行っていたのですが、今では仲間も増え、在宅医療のシステムもかなりできてきました。加えて、私は少し前に「死ねない老人」という本を出版して、それを機に日本尊厳死協会関東甲信越支部の理事をさせていただいていて、人はどう生きて、どう死ぬのかという死生観の話をさせていただく機会が増えたように思います。それで今は、「アドバンスケアプランニング」、厚生労働省の言う「人生会議」が非常に重要だと考えています。在宅療養、そして入院している方も共通ですが、病気などが回復不能な状態になってしまったときに、延命をするのか、しないのかという選択を、本人に意識がないときに家族が判断するのは至難の業です。とは言っても選択肢は、するか・しないかの2つしかなく、どちらを選んだとしても後悔をしてしまうものなのです。

後悔しないためには、どうすれば良いのでしょうか?

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本人が元気なうちに、そのような事態になったらどうしてほしいのかを家族に伝えておければ、判断しやすいでしょう。それが、アドバンスケアプランニングの根本的なところなのです。そして、その話をするときは、できるだけ家族がそろっているのが望ましいのですが、そういう機会はだいたい年末年始などになってしまって、親が一大決心をして話をしようとすると、子どもたちは「こんなときに、縁起の悪い話はしたくない」となって終わってしまうケースがほとんどだと思います。でも、それではいけないと思うのです。最近、講演をさせていただくときに私は「死をイメージできずに恐れて蓋をしてしまうのは不健康で、死ぬことを率直に話せるのが健康的なんだ」と、必ず話しています。そしてその意味では今、日本中のほとんどの家庭が不健康なのではないでしょうか。

エンディングノートを書いておいてほしい

上手に話す方法は、ないのですか?

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私も父が3年前に亡くなったのですが、父も医師でしたから、そうなった時のコンセンサスはできていたので、治療方針には何の問題もありませんでした。一方で、親が亡くなると貯金や生命保険など遺産の整理が大変ですが、その話を何もしていなかったので、大騒ぎをしてしまったんです。ですから、残された家族が困らないようにするにはどうすればよいのかという視点で、まずはその話をすれば良いんです。それは、家族も聞きたいところでしょうから、そこから話をして、その延長線で、自分がもしそういう状態になったら、医療はどうしてほしいのかを伝えておけば、少しはスムーズにいくのではないでしょうか。そして、その内容も難しく考えずに、最後まで戦いたいのか、それともあまり苦しいことはしてほしくないのかということだけでも、良いと思います。

アドバンスケアプランニングについて、アドバイスはありますか?

川口市ではエンディングノートがあって、いろいろなところで配っていますので、ぜひ活用していただきたいですね。でも、それは全部を埋める必要はなくて、埋められるところだけを埋めれば十分です。私も書いたのですが、後ろのほうには自分の財産のありかとか(笑)、まだ元気なうちにはすごく書きにくいところがあります。そのようなところは書かなくていいので、書きやすいところだけを書いてほしいのです。そして、絶対に一人ではなく、家族と一緒に書くのが大切ですし、遺産のことなどは、そのほうが書きやすいでしょう。内容はいつでも直すことができますから、気負わずに書いてほしいと思います。そうしておくことが、もしもの時に自分が望まない形の処置をされるのを避け、家族も困らせないことにつながります。

診療の際に、心がけていることを教えてください。

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「患者さんが安心して楽になるなら、手段を選ばない」ことでしょうか。できるだけ多くの選択肢を提案し、患者さんが納得して治療を受けて、楽になってもらうことを第一に考えています。その手段の一つが、漢方薬です。例えば、ある症状があって、大きな病院で検査をしても何も異常がないという方が、漢方薬で対応できたというケースもあります。あとは、限られた診察時間の中で、症状や薬についてわかりやすく伝えることを心がけています。画像で視覚的に説明をするなど、いろいろ工夫をしていますね。

人と人とのつながりを意識した院外活動にも注力

川口市医師会では、地域包括ケア担当理事も務めていらっしゃいますね。

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地域包括ケアシステムをさらに充実させて、市民が安心して幸せに暮らせる体制をつくっていきたいですね。そのためには医師会だけでなく、医師会に入っていない医師や行政、薬局、リハビリテーション施設など、さまざまな業種の連携がとても重要になってきますので、それぞれが顔を知って仲良くなり、協力できる体制づくりに力を入れたいと思っています。例えば、ほかの病院に患者さんに紹介するとき、「○○先生とは仲良しです。こういうふうな容姿で、面白い人ですよ」と伝えると、患者さんも安心してくれるわけで、最終的に大切なのは、人と人とのつながりなんですよ。ですので私も、さまざまな業種の集まりに参加するようにしています。それに最近では、医師会でもアドバンスケアプランニングを扱う機会が増えてきていて、それも良いことだと思っています。

どのようにリフレッシュしていますか?

天体写真を撮っています。院内に飾ってある天体写真は、すべて私が撮影したものですし、実は個展も開いたことがあります。福島県の山奥で撮影するのですが、仕事がら頻繁に行くわけにもいかないし、山にこもるわけにもいかない。それでどうしたかというと、遠隔操作システムを自分でつくり出したんです。望遠鏡がロボットみたいになっていて、コンピューターで方向をコントロールできる仕組みです。カメラも遠隔操作して自宅で撮影しています。もう、病気ですね(笑)。天体は、この世界で一番大きな自然ですから、魅力を感じます。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

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まず、人は誰でも最後には死ぬということが大原則で、それは皆さんに意識しておいていただきたいですし、そうすると、それまでにどのように生きるのか、いかに楽しく生きるのかということを考えざるを得なくなると思います。先ほども話したように、死に対して蓋をしてしまうのは不健康で、死について率直に話せるのが健康的なのだと考えていますから、エンディングノートを活用するなどして、家族でアドバンスケアプランニングをしていただきたいと思います。そして当院では、すべての患者さんが納得して、安心できるような、適切な医療を提供することで、患者さんを笑顔にしていきたいと思っています。

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