柏崎 祐士 院長の独自取材記事
かしわざき産婦人科
(さいたま市大宮区/大宮駅)
最終更新日:2025/03/24

大宮駅の西側、県道214号に面して立ち、洋館風の上品なたたずまいが目を引く「かしわざき産婦人科」を訪ねた。1962年の開業以来、約60年にわたって地域の産婦人科医療を担ってきた同院。第2次ベビーブーム、歯止めがかからない少子化と、変わりゆく時代のニーズに応え、現在は不妊治療を精力的に手がけつつ、妊娠・分娩はもちろん、腹腔鏡手術、婦人科検診、一般診療まで幅広く対応している。2021年9月には、これまで副院長として主に不妊治療を担当してきた柏崎祐士先生が、義父である前院長の後を引き継いで院長に就任。穏やかな笑顔の柏崎院長にクリニックの歩みや特色、患者への思いなど、今後に向けた展望も含めてじっくり話を聞いた。
(取材日2021年10月28日/情報更新日2025年3月13日)
地域とともに60年、時代に即した産婦人科医療を提供
こちらは間もなく開業から60年を迎えられるそうですね。

当院は僕の義理の両親である前院長夫婦が1962年に開業しました。当時は敷地面積も現在の5分の1ほど。周囲は田んぼに囲まれていたので、大宮駅との間に大きな建物もなく、駅からクリニックの建物がよく見えたそうです。プレハブから始めた当院も第2次ベビーブームの影響でお産の件数が増えたことで徐々に規模を大きくして、現在の形になりました。最近来られている妊婦さんの中には「実は私の母もここで産まれたんです」と教えてくださる方もいて、3世代の誕生に当院が関わらせていただいていると思うと、何とも感慨深いものがありますね。
不妊治療、分娩、婦人科診療とオールラウンドに診ていただけるクリニックだと伺いました。
最近はお産ならお産だけ、不妊治療は不妊治療だけにそれぞれ特化しているクリニックが多いので、不妊治療から分娩までを一体で手がけている点は当院の特徴であり、強みでもあると思っています。不妊治療から分娩までをワンストップで見られる体制は、一人の患者さんの経過の経過を把握できるともいえます。その体制が整っていることは、医療者としてのやりがいにもなり得るのではと感じています。ただ、不妊治療の患者さんとおなかの大きい妊婦さんが待合室で一緒になってしまいますから、そこで落ち込んでしまう方がいらっしゃることも事実。そのため、不妊治療の患者さんに対してはポジティブな声がけでサポートし、看護師によるカウンセリングも積極的に行っています。それでも、どうしてもストレスを感じてしまうようなら、不妊治療専門のクリニックをお勧めすることもあります。
患者さんと接する上で、大切にされていることはありますか?

月並みですが、患者さんと同じ目線に立って診療にあたることです。また不妊治療に関して言うと、治療を始めるかどうか、人工授精や体外受精などどの段階まで治療を続けるかは、あくまでそれぞれのご夫婦の選択に委ねられます。ですから私たちは医学的根拠に基づいたしっかりとした情報を提供した上で、あくまで患者さんの選択をサポートするという立ち位置を守るようにしています。不妊治療に対する考え方は千差万別で、結婚してすぐに子どもが欲しいからできるだけ早く治療を始めたいという方、病院に通ってまで妊娠したいとは思わない方、妊娠のためにあらゆる手を尽くしたいという方もいるでしょう。そこですべての患者さんにお伝えしているのが「妊娠はあくまで2人でするもの」だということ。1人だけが先走るのでなく、ご夫婦でとことん話し合って意見を一致させてから治療を始めてほしいとお話ししています。
胎児エコー検査にも注力
先生が産婦人科医を志されたきっかけは?

いろいろな科を2週間交代で回って患者さんを担当する学生実習に参加した時に、産婦人科で1人の妊婦さんを担当しました。その実習中、病院に泊まり込んでお産の現場を見る「産直」も必ず行うのですが、私が行ったその日に分娩することになったのが、偶然産婦人科で担当した妊婦さんで。初めて分娩を見た感動はもちろんですが、それ以上に分娩が終わった後の姿が本当に神々しく見えたというか、汗が光っていて、すごく美しい表情をされていて。「女性ってこんなにきれいなんだ」とそこで改めて実感しました。他にもいろいろな科を回って学ぶことは多かったのですが、やはりその産婦人科での経験のインパクトが強く、迷わず産婦人科を選びました。この話をすると、よく「作り話でしょ?」なんて言われてなかなか信じてもらえないんですが、本当の話ですよ(笑)。
こちらでは妊娠中の胎児エコー検査にも力を入れているそうですね。
はい。健診時のエコー検査とは別に、胎児エコー検査を専門としている技師に週2回来てもらっていて、おなかの赤ちゃんに細かな異常や奇形がないかどうか、精密に検査できる体制を整えています。何か疑わしい点があれば、画像をすぐに小児科専門病院に送って判断を仰ぐことができます。万が一、心臓の奇形などが判明した場合には、速やかに周産期医療に注力している医療機関に紹介しています。小児専門病院である埼玉県立小児医療センターがすぐそばにありますし、早期発見・早期治療ができれば予後も良いと考えられ、こうした検査体制と病診連携が妊婦さんの安心につながっていると思います。
2022年4月から不妊治療が保険適用になったと聞きました。

保険適用が拡充し、以前と比べて経済的な負担は軽減されました。正直なところ、料金体系は複雑で、胚移植は40歳未満の方は胚移植ごとに6回まで、40歳以上の方は3回までと制限はありますが、それでも体外受精のハードルが低くなったという声をよく聞きます。保険適用以外は、自費診療となってしまいますが、当院では、先進医療という枠組みで対応しています。お手持ちの任意保険の中に先進特約に加入されている場合は、後から還付されます。
妊活学級や個別相談できめ細かな情報提供も
不妊治療を始めるにあたっては、やはり細かな情報収集が欠かせませんね。

患者さんの多くは何軒かのクリニックを訪ねて説明を聞いた上で、比較検討してクリニックを選ばれているようです。当院は分娩の患者さんもいらっしゃることで、子連れでも比較的来院しやすいので、2人目不妊にお悩みの患者さんも多く通われています。当院では診療時以外にも気軽に相談できる体制を整えており、日曜に予約制で行っている個別相談のほか、「妊活学級」という体外受精の説明会なども開催しています。妊活学級では培養士、看護師、薬剤師が説明にあたり、随時個別相談にも対応しています。ご夫婦でスケジュールを合わせて参加するのが難しい方に向けて、不妊治療のガイダンス動画をクリニックのホームページ上にアップする準備も進めているところなので、ぜひご活用いただければと思います。
今後に向けた展望をお聞かせください。
不妊治療の研究が進み、体外受精や顕微授精、受精卵の凍結など、さまざまな技術で妊娠できる可能性を追求できるようになってきました。また不妊症の原因として男性不妊の問題がメディアなどで周知されたことで、不妊治療のスタートの段階から夫婦そろって検査に臨むという意識も進んできているように感じます。一方で当院では、さまざまな治療を受けてきたけれどなかなか妊娠に至らないという方からのご相談にも積極的に応じています。お悩みの方を少しでも救済できるよう、今後もいろんなかたちで後押ししていけたらと思っています。
最後に、読者に向けて一言メッセージをお願いします。

不妊治療に関しては最近は特に情報過多で、SNSなどでも日々情報が飛び交っています。信ぴょう性のある情報もある一方、中には都市伝説的なものも散見され、患者さんたちへの影響を心配しているところです。そうした情報にあまり惑わされず、心配なことがあれば当院を含め、かかりつけの産婦人科の医師に詳しく聞いて治療を進めていただきたいですね。また、特に若い方、未婚の方には婦人科は行きにくい場所というイメージが強いかもしれません。当院では明るくアットホームな雰囲気づくりに努めていますし、最近ではホルモン剤などを上手に使って女性特有の不調の解消をめざすこともできます。すべての女性のライフステージをサポートできる体制が整っていますので、お気軽にご相談ください。
自由診療費用の目安
自由診療とは体外受精(麻酔・採卵・培養・精子処理・媒精)/20万9000円