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岩田 尚士 院長の独自取材記事

シムラ病院

(広島市中区/舟入町駅)

最終更新日:2021/10/12

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広電6号線の舟入町電停から徒歩10分の「シムラ病院」は、2018年に創立60周年を迎えた歴史ある病院。「救急医療を通して社会に貢献する」という理念に基づき、24時間365日休むことなく整形外科、外科の分野で広島の救急医療を支えている。また、「全人的医療を貫く」ということをもう1つの理念として掲げ、在宅復帰を支援する回復期リハビリ病棟や地域包括ケア病棟、終末期医療を提供する緩和ケア病棟も備えている。2021年には介護施設の新設を予定するなど、地域の医療拠点として活躍する同院の岩田尚士院長に、主軸である救急医療や緩和ケア病棟に対する思いを詳しく聞いた。

(取材日2020年10月24日)

ある患者との出会いをきっかけに緩和ケアの道へ

先生が医師を志したきっかけは何ですか?

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小さな頃から、将来は何か資格を取って人の役に立つ仕事がしたいと思っていたんです。中学生くらいまでは建築家になりたいと考えていたのですが、建築家はクリエイティブな才能が必要だということに気がついて、自分には向いていないと思いました。次に考えたのが、弁護士か医師だったのですが、弁護士という職業は人の役に立つ仕事ではありますが、場合によっては罪を犯した人の弁護をすることもありますよね。その部分が自分の中ではどうしてもぴんとこなかったのです。その後、当時はやった外科医師が主人公の漫画に影響を受けたこともあって、医師の道に進むことを決めました。消えゆく命が目の前にあった時、その命を助けることに全力を傾けることができる仕事のほうが、弁護士という職業よりもすんなり受け入れることができたんでしょうね。

長い医師人生の中で、印象に残っている患者さんとのエピソードはありますか?

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大学病院時代に、強いせん妄が出ている終末期がんの患者さんを担当したのですが、病状が悪化して、もう残り1週間くらいではないかとなった時、娘さんが「家に連れて帰りたい」と言われました。それで、私もご自宅への搬送に付き添うことになったのですが、車窓からの景色が田舎の風景になるにつれ、患者さんの目つきが少しずつ変わっていくのがわかるんです。島根の県境にあるご自宅に到着し、家族や親戚たちが用意してくれた退院祝いの宴の席につく頃には、すっかりせん妄も消えて、あれは芝居だったのではと思うくらい、正気になっていたのです。それから10日ほどでその患者さんは亡くなられたのですが、その出来事が私にとっては終末期の過ごし方について深く考えるきっかけとなりました。その患者さんが、最後にその人らしい時間を過ごすことで尊厳を保ったまま旅立てたのではないかという思いが、緩和ケアの道に進む大きな後押しとなったのです。

その後、こちらの病院で緩和ケア病棟を立ち上げることになったのですね。

私が赴任した当時のシムラ病院というのは、骨折で入院している元気な若者たちと、末期がんの患者さんが同じ病室で入院しているというような、決して良い環境とは言えないところがありました。私自身は、今後必ず緩和ケアというものが必要になるという確信があったので、終末期の患者さんを受け入れるためのきちんとした環境を整備していきたいと理事長に相談をしたのです。以前は緩和ケアというのは、採算面で言えば赤字になるリスクは高かったのですが、理事長がそれは社会貢献になることだと賛成してくれて、動き出すことができました。環境整備やスタッフの確保に7年もかかりましたが、2004年に緩和ケア病棟を開設することができました。

救急から看取りまで全人的医療の提供をめざす

緩和ケア病棟の特徴について教えていただけますか?

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1つは、「緩和ケアをやりたい」と希望している看護師が集まっている点です。患者さんがその人らしく最期を迎えるために、何ができるのかを一人ひとりが考えて動いてくれていると思います。また、こういう言い方はおかしいかもしれませんが、アグレッシブであるという点も当院の特徴だと思います。これはどういうことかというと、一般的に緩和ケア病棟では患者さんの精神面のケアに重きを置いているのですが、当院では私を含めて外科の医師が多いということもあって、外科的な手法を用いることで患者さんの苦痛が緩和されるのであれば、積極的に手術も行っています。最期までその人が悔いのないように生きるために、さまざまな選択肢を提供することが大切だと思います。そういう点では、緩和ケア病棟としての当院のスタンスは少数派かもしれません。

こちらの病院は、広島市の2次救急病院でもあるそうですね。

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救急医療は当院の主軸で、1958年の開設以来から緩和ケア病棟、回復期リハ病棟ができるまでは「1日24時間、1年365日絶えることのない医療のニーズに応える」ということを理念に掲げ、救急一本でやってきました。現在、急性期の病床は48床しかありませんが、救急車の受け入れでその病床が常に稼働し続けています。これはとても大変なことなのですが、現場のスタッフたちは救急の患者さんを受け入れることに嫌な顔をせずに対応してくれています。また、ひと昔前までは救急医療というと外科がメインだったのですが、今は社会のニーズが変わって、外傷など整形外科の需要が高くなっています。そのため、当院でも整形外科により力を注いでいかなくてはということで、整形外科の医師を増やし「外傷の患者さんを断らない」ということを方針としてやっています。一通りの専門分野を持った医師が集まっていますので、大抵のことには対応ができると思います。

骨粗しょう症の治療にも力を入れているそうですね。

同院では骨粗しょう症専門の診療も行っていて、2017年には新しい骨密度を測定する先進のCTを導入しました。一般的なCTでは判別できないような骨の内部の小さな穴まで明瞭に写し出すのが特徴で、より精度の高い診断を行い、適切な治療へとつなげていくためだけでなく治験や研究にも活用されています。

役割をしっかりと果たし、地域医療に貢献していく

お忙しい毎日だと思いますが、プライベートな時間はどのようにお過ごしですか?

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週末にお酒を飲みに行くのが好きなのですが、今は新型コロナウイルス感染症の影響でそれもできなくなってしまいましたね。あとは読書も好きなので、休みの日には小説を読むのも楽しみです。とはいえ、私は当院のすぐ裏に住んでいて、何かあったらすぐに駆けつけられるようにしていますので、きっちりプライベートな時間を分けるというのもなかなか難しいものがあります。これはもう、医師である以上仕方のないことでしょうね。

今後の展望についてもお聞かせいただけますか?

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今回のコロナ禍において、受け入れの病院に立候補をするかどうかという話もありましたが、私は当院の役割はあくまでも、救急医療の中でも特に外傷の患者さんを受け入れて、きちんと助けていくことだと思っています。当院ぐらいの規模の病院では救急医療と新型コロナウイルス感染症の治療の両立は困難であり、そこはきちんと線引きをして、自分たちは自分たちの守備範囲の中でできることをやっていくのが大切だと思います。ですから、今後も救急医療を中心に地域医療に貢献し続けることで、社会から必要とされる存在でありたいと思います。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

皆さんにはぜひ、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)について考えていただきたいと思います。これは「万が一の時に備えて、自分がどのような医療ケアや最期の迎え方を希望するのか」ということを自分自身で考えたり家族と話し合ったりして意思表示をしておくことであり、患者さんだけでなくわれわれ医療者にとっても大切なことだと私は思っています。私が医師になったばかりの頃は、がんの告知はしないのが一般的でした。でも、自分がもしその当事者になって人生が残りわずかとなってしまったら、そんな重要なことを知らされないほうがおかしいと思うんです。今は誰もががんになる可能性のある時代ですから、そうなった場合に「どのような治療を望むのか」と「最期にやりたいことは何なのか」それらを考えておくのはリスクマネジメントとしても大切なことです。1つしかない自分の命ですから、どうかACPについて真剣に考えていただきたいと思います。

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