宮崎 啓成 院長の独自取材記事
薬院ひ尿器科医院
(福岡市中央区/薬院大通駅)
最終更新日:2025/04/14

福岡市地下鉄七隅線・薬院大通駅から徒歩3分、城南線から路地に入ってすぐの場所にある「薬院ひ尿器科医院」。1985年の開業以来、入院施設を有する泌尿器科専門の医療機関として、診療から手術、入院、アフターケアまで対応している。2代目となる宮崎啓成(ひろなり)院長は先進的な技術を活用して、出血や合併症を防ぎ、患者負担の少ない最小侵襲治療をモットーに患者に寄り添った診療を提供。2016年からは女性が受診しやすい環境を整え、女性医師による「女性泌尿器科外来」を設置し、膀胱炎や尿漏れ、頻尿など女性に多いデリケートな悩みにも対応している。「泌尿器科疾患はQOL疾患。困ったときはなんでも相談してください」と話す宮崎院長。気さくで話しやすい雰囲気の宮崎院長に診療方針や対応する疾患や手術などについて話を聞いた。
(取材日2025年1月22日)
全国でも珍しい入院施設を擁する泌尿器科専門医院
開業は1985年と伺っています。

先代の父が1985年に入院施設のある泌尿器科専門病院として開業し、2017年1月に私が引き継いで院長に就任しました。父と生前、当院の理念などを話す機会があまりなかったことが心残りではありますが、今では全国的にも数少ない入院施設を擁する泌尿器科の専門クリニックとして、当院をしっかり守っていきたいと考えています。自分自身は、代々医師の家系の中で育ってきたこともあり、自然な流れで幼少の頃から医師を志していました。最初は循環器や消化器に興味があったのですが、当院を継ぎたいという気持ちもあり、また外科的な処置と内科的なアプローチを併せ持った治療に魅力を感じ、泌尿器科医師の道を選びました。九州大学泌尿器科に入局後は、前立腺がんなどの悪性腫瘍の治療をはじめ、前立腺肥大症や尿管結石といった疾患の診療経験を積み、2016年から当院の診療に従事しています。
現在はどのような患者さんが多いのですか?
男性の患者さんでは、前立腺肥大症や尿路結石のため来院する方が多いですね。当院には入院施設があるので、総合病院に紹介せずに診察から手術まで対応することができます。前立腺肥大症に関しては経尿道的レーザー前立腺蒸散術という治療を行います。これは、高出力のレーザーにより肥大した前立腺を蒸発させる方法で、出血などのリスク低減を図ることができます。心臓などの循環器に疾患があっても高齢者の方でも受けていただけます。また、悪性疾患に関しては、内視鏡を用いた膀胱がん手術に対応しています。男性は尿をうまく出せない、尿をうまくためられないといった排尿障害が多く、このような症状の場合、前立腺肥大症や神経因性膀胱が疑われます。前立腺肥大症は、放置していおくと膀胱の機能自体を損なう可能性があるので、早めの治療をお勧めします。
前立腺肥大症や尿路結石を予防することはできるのですか?

適度な運動や栄養バランスの取れた食事など、予防のためには正しい生活習慣が重要です。ただ、水分の摂取には注意が必要。過剰摂取は夜間頻尿などを引き起こす可能性もあるので、夕食後は水分制限を心がけてください。睡眠中、2回以上トイレに起きる状態が病的な夜間頻尿と定義されており、1回よりも2回起きるほうが転倒して骨折、入院となる率が高くなりますから医療介入が必要だと思います。また、尿路結石の再発防止には、結石の成分検査が必要です。日本人に多いのはシュウ酸カルシウム結石で、この場合、シュウ酸を体内に吸収しすぎないことが大切です。チョコレートやほうれん草などシュウ酸を多く含む食品は、牛乳などカルシウムと合わせて食べるようにすれば再発リスクを低減することが期待できます。
女性が受診しやすい環境を整えた女性泌尿器科外来
こちらのクリニックの特徴を教えてください。

当院は開業以来、福岡市内でも数少ないベッドを持つ泌尿器科専門医療機関として診療を行っています。特に尿路結石の手術は、福岡市内でも多くの症例数を誇っています。手術に携わるスタッフもエキスパートがそろっており、手術室の主任を務める看護師は高い知識を有しており安心して任せることができます。また、当院では2016年から女性泌尿器科外来を設置し、女性の泌尿器科疾患の治療に力を入れています。地域の医院で女性医師がいる泌尿器科は珍しいと思いますし、女性は泌尿器疾患の症状が出た場合婦人科や皮膚科など、何科を受診すれば良いのか迷うこともあるでしょう。女性医師が担当することで泌尿器科受診のハードルを下げ、手術に関しては土曜も対応し、その患者さんに合った形で入院日数を決めるなど、ニーズに応えることができる体制を整えています。
女性の患者さんにとって女性医師による診療は心強いですね。
現在、女性泌尿器科外来は水曜の午後の診療と土曜の手術だけですが、2025年4月から一倉祥子先生が常勤になるため、スタッフの数も増やしました。一倉先生は、泌尿器科診療に力を入れている原三信病院に20年勤務されていて、腹圧性尿失禁に対するTOT手術や骨盤臓器脱の手術経験が非常に豊富です。とても優しい雰囲気の先生ですし、これまでは週に1度の診察でしたから、何かあったときに不安を感じる患者さんがいらっしゃったかもしれませんが、今後は安心して受診していただけると思います。女性は男性に比べ我慢強く、気恥ずかしさもあって泌尿器のトラブルを自覚していても通院に至らないケースが多々あります。女性専用の診察室を設置するなど、通院しやすい環境も整えています。
男性更年期障害の症状に対する治療にも取り組まれているそうですね。

近年、男性の更年期障害が周知されてきたこともあり、自分で症状を調べて受診される方が多い印象です。40代から60歳ぐらいまでの患者さんが中心で、性欲減退やうつ状態、発汗、火照りなどを感じる場合には、原因の一つとして更年期障害が疑われます。問診などで評価するしかなく診断は難しいのですが、方法の一つとしてフリーテストステロンという男性ホルモンが低下しているかどうかを血液検査で調べます。数値が低ければホルモン補充療法を行い、症状の改善をめざします。
泌尿器疾患はQOL疾患、困ったら気軽に相談を
クリニックの診療方針を教えてください。

当院は、患者さんに合ったさまざまな治療の選択肢を用意しています。飲み薬による治療や手術のほか、骨盤底筋を鍛える体操なども指導しており、どの方法を選択するかは患者さんに選んでいただきます。手術に関しては、例えば尿失禁、骨盤臓器脱手術をはじめ、腎尿路結石、前立腺肥大症に対しても最小低侵襲の手術をモットーにしています。患者さんの不安を取り除くため、できる限り時間をかけて丁寧な説明を心がけていますが、主に予約制で多くの患者さんに来院していただいているため、十分に実践できないことが課題ですね。
診療の際、心がけていることは何でしょう?
先ほどもお話ししたように、患者さん一人ひとりの不安を取り除くことを念頭に置いて診療に取り組んでいます。例えば、排尿障害は完全に治ることはなく、うまく付き合っていくことも重要になってきます。夜間頻尿で夜中に5回も6回もトイレに起きていたのをゼロにはできませんが、それを1回にできればQOLは格段に向上するはずです。そのためには薬の内服を続ける、もしくは外科的なアプローチが必要となる場合もあります。そうなると長期的に通院いただくことになるかもしれませんが、できる限り治療の選択肢をそろえていく考えです。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

泌尿器科疾患は、基本的には生活の質を左右するQOL疾患です。そのため、困ったらなんでもすぐに相談していただきたいと思います。治療介入するかどうかは、患者さんと話し合って決めるので、無理矢理治療を勧めることはありませんし、ご希望があれば女性医師の診察も可能です。女性泌尿器外来に来られる患者さんの中には、悩みをなかなか話せない方もいらっしゃるため、完全予約制でしっかりとお話をお聞きする時間を作っております。そういう意味では、泌尿器科疾患を軸に女性のさまざまな悩みに対応しているともいえます。これからも、診療から手術、入院、アフターケアまで対応できる泌尿器科専門医療機関として、地域の皆さんに寄り添っていきたいと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とはホルモン補充療法/2816円