石田 孝雄 院長の独自取材記事
いしだ内科外科クリニック
(川崎市宮前区/宮前平駅)
最終更新日:2024/08/20

川崎市宮前区、平5丁目交差点に面して軽やかなグリーンの看板が目を惹く「いしだ内科外科クリニック」。内科・消化器内科・外科・皮膚科を標榜し、街の小さな総合クリニックをめざしているという。総合病院の病院長を経験し、専門性のみを追求するリスクを実感したことをきっかけに、同院での総合診療を決意したという石田孝雄院長。「専門外だから他科の病気には関与しないという態度ではなく、すべての可能性を考慮しながら総合的に診ることが大切なのです」と話す。院長の他にも多くの医師が在勤し、近年では多くの診療時間枠で二診体制がかなうようになったという同院の特徴とめざす医療について、詳しく聞いた。
(取材日2024年5月23日)
幅広い診療に対応する、街の小さな総合クリニック
内科、消化器内科、外科、皮膚科と幅広く診療されているそうですね。

「街の小さな総合病院」のような役割を果たせるよう、体調が悪いと感じた際に気軽にご相談いただければと、開業以来こうした体制をとっています。私自身、消化器外科を専門としながら、血管外科や乳腺外科でも経験を積み、術前術後管理を通して常に患者さんの全身状態を診てきました。開業前は規模の大きな総合病院で病院長の立場にあり、そこには高い専門性を持つ医師も多かったのですが、専門性のみを追求することで見落とされるリスクもあると感じました。専門的に診られることは良い点も多いのですが、初期段階から診療科によって区切ることで、かえって病気が見えなくなる危険性もあるのです。そこで当院では、総合的な診療を行いながら、全身の健康維持と病気の予防に努めています。
診療体制について教えてください。
現在、二診体制に移行しつつあるところです。義理の娘であり、消化器内視鏡診療の専門家でもある石田千晶先生をはじめ、内科・外科で幅広い専門性と豊富な経験をお持ちの先生方や、大学病院の先生方に、曜日ごとに診療を担当していただいています。近年では、心の病を抱えた方の受診も増えてきたことから、月に一度ではありますが、心療内科の先生もお招きし、診療をお願いしています。それぞれ、各分野でご活躍の先生方でお忙しいこともあり、すべての診療時間で完全に二診がかなっているとは言えない状況もありますが、ほぼ体制が整ってきたところです。
総合的に診療することで、どのようなことが期待できますか。

例えば「足が痛む」と外科を受診された方は、糖尿病の可能性も考えられます。「背中が痛い」とおっしゃる方なら、解離性動脈瘤かもしれません。胸の痛みや倦怠感などを主訴に受診され、その原因として精神的な問題が見つかることもあり得ます。「専門外だから他科の病気には関与しない」というスタンスではなく、さまざまな可能性を考慮しながら総合的に診察することで、病気の早期発見につなげることができます。そのため、診察を丁寧にするよう心がけており、問診に加え触診や聴診、必要に応じて精密な検査などを行っています。おなかの張りや吐き気、頭痛といった症状を「よくあること」と片づけず、しっかりと診ることで、初期の段階で膵臓や胆嚢のがん、大腸がんや胃がん、脳腫瘍などの重篤な病気の発見に努めています。また、判別が難しいとされる褐色細胞腫やレックリングハウゼン病などの早期発見もめざしています。
総合的な診察と精密な検査で、早期に病気を発見
検査にも力を入れていらっしゃるのですね。

病気の早期発見のためには、適切な診査・診断が欠かせません。院内の検査機器はできるだけ新しくて高機能なものを取り入れ、検査を受けていただきやすい環境づくりにも取り組んでいます。特に消化器内視鏡検査は初期から扱っており、千晶先生をはじめ経験豊富な先生方が担当しています。千晶先生は多くの内視鏡検査の経験があり、女性医師ならではの視点も持っています。内視鏡検査は痛い、苦しいと思っていらっしゃる方が多いようですが、管の細い新鋭の内視鏡機器を用い、経験豊富な医師が行うことで、苦痛を抑えた検査をめざしています。また、動脈の硬さや詰まりの程度を測定できる動脈硬化測定検査装置も導入し、糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病の診療に活用しています。
訪問診療も行っていらっしゃると伺いました。
当院を受診されていた方で、通院が困難になった患者さんを中心に、外来診療の合間の時間を利用して、訪問診療を行っています。高齢化により、通院が難しくなった方もかかりつけ医としてしっかりフォローしたいとの思いです。歩けない、聞こえない、話せないといった困難を抱えた高齢患者さんをどのようにケアしていくかは、今後も大きな課題となると考えています。
直近で増えていると感じるご相談などあれば教えてください。

新型コロナウイルス感染症の後遺症に悩まれている方からのご相談は増えていると感じます。長引く咳が止まらないというケースが多いですね。咳が長く続くというのはとてもつらいものですので、複数あるお薬を試しながら、それぞれの患者さんに合う治療法を模索しています。合わせて、コロナ禍での特別な対応を徐々に緩和でき、通常の診療を取り戻せてきたタイミングですので、生活習慣病のフォローアップには改めて力を入れています。食事内容や運動をきめ細かく指導し、定期的にBMIをチェックするなど、健康のためにご自身でできることの大切さをお伝えしていきます。
体と心の不調に、1ヵ所で完結する診療をめざして
診療の際に心がけていることは何ですか。

血圧、血糖値などの変化は、わかりやすく数字で伝えることを心がけています。その際に、紙に書いて説明することで、患者さんのさらなる理解を促します。最終的に「薬に頼らなくて済む医療」をめざしているので、患者さんには「徐々にこれくらいに減らしましょう」と今後の見込みまでお伝えします。目標を持っていただくと、ご本人のやる気も保ちやすいのではないでしょうか。同時に、自分ができないことは患者さんにも押しつけないというのもモットーです。生活スタイルや食事内容を急に変えるのは難しいことで、その点は私もよく理解しています。無理して実践しても、長く続けられることはないでしょう。だからこそ、ご本人やご家族とよく話し合い、「これならできる」というラインを一緒に探すことが大切だと考えています。
今後の展望があれば教えてください。
総合診療として全身を診ることをさらに充実させていきたいと考えています。具体的には、手や足の外科での専門的な診療にも対応していければと思います。ニーズの高い腰や膝、肩の痛みにも積極的にアプローチしていきたいですね。もちろん整形外科の専門クリニックはありますが、そちらに任せきりというのではなく、当院でもできる限りのプライマリケアを提供していければと思います。
読者に向けてひと言メッセージをお願いします。

体の各部に不調が現れるたびに、専門が異なるクリニックをあちこちはしごするというのは、患者さんにとって負担が大きいものだと思います。当院では街の小さな総合クリニックとして、できる限り1ヵ所で完結する診療をめざしています。消化器はもちろん、咳や喘息といった呼吸器の症状や疾患、あるいは乳がんを含むがんのご相談もお受けしており、風邪などの感染症による身近な症状から慢性的な痛み、心因性のトラブルまで幅広く対応可能です。体や心に不調を感じた時には、何でも気軽にご相談ください。一緒に解決策を考えていきましょう。