体質にアプローチして根治をめざす
花粉症に対する舌下免疫療法
てらお耳鼻咽喉科
(大田区/京急蒲田駅)
最終更新日:2023/09/08
- 保険診療
止まらないくしゃみと鼻水、鼻のムズムズ、目のかゆみ……。植物の花粉やハウスダストなどが引き金となって出る花粉症やアレルギー性鼻炎は、いったん症状が出ると、仕事や勉強の効率を下げるだけでなく、つらい症状で気分も重くなり、生活の質を大きく下げてしまう。とりあえずくしゃみを止めたい、鼻詰まりをすっきりさせたいと、市販薬や医療機関で処方された薬に頼っている人は多いが、それに対し「てらお耳鼻咽喉科」の寺尾元(てらお・はじめ)院長は「薬物療法は一時的に症状緩和を図る対症療法にすぎず、根本的な治療ではありません」と話す。同院では、症状ではなく体質に働きかけてスギ花粉症とダニによるアレルギー性鼻炎の根治をめざす「舌下免疫療法」に注力。そのメカニズムや治療法、メリット・デメリットについて寺尾院長に話を聞いた。
(取材日2023年8月10日)
目次
体質に働きかけ、アレルギー症状が出にくい体をめざす舌下免疫療法。長期にわたる治療をしっかりサポート
- Q舌下免疫療法とはそもそもどのような治療なのでしょう。
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A
スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎に対して行われる治療法の一つです。アレルギー性鼻炎の治療法には、薬物療法、アレルゲン免疫療法、手術療法があり、舌下免疫療法はこの中でいうとアレルゲン免疫療法にあたります。内服薬やスプレー剤による薬物療法が、鼻水や鼻詰まりといった症状の緩和を目的とする「対症療法」であるのに対し、アレルギーの原因物質を体内に取り入れ免疫をつくっていくアレルゲン免疫療法は、体質そのものにアプローチして根本的な解決を図る治療となります。舌下免疫療法では、アレルゲンを含む薬を毎日服用し、少しずつアレルゲンに体を慣らすことで、アレルギー反応を起こりにくくしていきます。
- Qどのような人が対象となりますか?
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A
舌下免疫療法は5歳から65歳までが対象です。また、アレルギー検査でスギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎と診断された方のみ受けることができ、ヒノキなどそれ以外のアレルギーは対象外です。スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎の方の中で、特に飲み薬やスプレー剤を使っても症状がコントールできない方にお勧めです。また、副作用に対して薬物療法に不安を感じている方、例えば内服できる治療薬が制限される職業ドライバーの方や、なるべく眠くなるような薬を使いたくない受験生の方にも推奨しています。あとは、治療期間が長くても構わないからアレルギー性鼻炎によるつらい症状を完全になくしたいという方にも検討していただきたいですね。
- Q治療にかかる期間や、治療の流れについて教えてください。
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A
治療期間は長く、3年間は継続することが推奨されていますので根気強く取り組む必要があります。流れとしては、まずアレルギー検査でスギ花粉症、ダニアレルギー性鼻炎いずれかの診断が出たら治療可能となります。治療開始時期は、スギ花粉症の場合、花粉飛散期である1月〜5月以外、ダニアレルギー性鼻炎の場合は1年中開始可能です。薬は、副作用の有無を確認するため初回のみ院内で服用していただき、30分様子を見て問題がなければ、2回目以降はご自宅で1日1回の服用を続けます。薬を口に含んだら舌の下に1分間置き、その後5分間はうがいと飲食を控え、2時間は入浴・運動・飲酒ができません。期間中は月1回の通院が必要となります。
- Qこの治療を行うメリットやデメリット、注意点について伺います。
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A
メリットはアレルギー体質の根本改善が期待できること。そして治療が軌道に乗れば、月1回の通院と自宅で1日1回服用するだけでいいという手軽さです。ただ手軽さの反面、治療期間が長く、継続に根気が必要となります。あとは副作用のリスクですね。最も多いのは、口腔内や唇の腫れ・かゆみで、ほかにも一時的にくしゃみや鼻水などのアレルギー症状が増悪したり、重症になるとアナフィラキシーショックによる血圧低下、呼吸困難、喘息などが起こったりする可能性も。副作用は治療開始直後に出ることが多いので、当院では先ほどお話ししたように初回の服用は院内で行い、医師が副作用の有無や安全性を確認するようにしています。
- Qどのようなクリニックで治療を受けるとよいでしょう。
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A
まず、治療が長期に及ぶため、通院がおっくうにならないように、自分と相性の良い医師のいるクリニックを選ぶことをお勧めします。次に、アレルギー治療に精通した医師かどうかもポイントです。例えば、副作用が出た、薬が合わないといったイレギュラーな事態が起きたとき、アレルギー治療に慣れていない先生ですと、治療をやめましょうかとなるかもしれません。一方、私のように舌下免疫療法を含めて数々のアレルギー治療を行ってきた経験とスキルを持つ医師であれば、薬の量や期間を調整して治療の継続をサポートができます。また、経験の数だけ治療の引き出しも多いので、根治をめざし、治療を取りやめる以外の選択肢が提示できると思います。