骨粗しょう症とロコモティブシンドローム
予防の重要性とは
西野整形外科
(小平市/花小金井駅)
最終更新日:2025/04/15


- 保険診療
超高齢社会となった日本では、ただ長生きするだけでなく、健康で元気に長生きするために「健康寿命を延ばすこと」が社会全体の課題となっている。西野敏温先生は疾患の治療に加え、ロコモティブシンドローム(ロコモ)の予防にも力を注いでおり、運動器の健康を維持して健康寿命を延ばすことを整形外科の使命と考えている。要介護・要支援となる原因で最も多いのが骨や関節、筋肉、腱など運動器の障害であり、「健康寿命を延ばすためには運動器の機能維持・回復が欠かせません」と話す西野先生に、運動器の健康を保つために重要なことと、西野整形外科での取り組みについて詳しく聞いた。
(取材日2025年1月12日)
目次
運動器の障害や機能低下は要介護や寝たきりの原因に。予防や早期治療で機能維持をめざそう
- Qロコモ(ロコモティブシンドローム)について教えてください。
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A
▲高齢者だけでなく、子どものロコモにも注意すべきと話す西野院長
ロコモは、ロコモティブシンドロームの略で、骨や関節、筋肉などの運動器の機能障害などにより、立つ、歩くなどの移動機能が低下した状態のことです。2007年に提唱された概念で、略してロコモといわれることが多いです。主な原因は加齢ですが、骨粗しょう症や腰部脊柱管狭窄症、変形性膝関節症などの病気も原因になり得ます。高齢者に多く起こりますが、最近では、がんやその治療によって生じるがんロコモや、幼児から高校生に起こる子どもロコモも注目されていて、高齢者だけの問題とはいえなくなっています。特に子どもは、長時間のスマホゲームなどによる姿勢の悪さ、運動不足による筋力の低下が目立ち、骨折や転倒も増えています。
- Qロコモ予防にはどのような対策が必要ですか?
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A
▲患者の理解度を高めるため説明時には図や模型を使用している
加齢とともに筋肉量や骨量は低下し、骨粗しょう症などロコモの原因となる病気も増えていきます。そのため、特にご高齢の方はロコモかどうかを早く知り、リスクが高い人は早めに予防に取り組むことが必要です。まずは、ロコモの状態を把握するために、ロコチェックとロコモ度テストを行いましょう。ロコチェックは、片足で靴下がはけるかなど動作のチェックで、ロコモ度テストは立ち上がりや2ステップなどの簡単なテストです。その結果、ロコモのリスクが高い人にはロコトレという簡単な運動をお勧めしており、食事などの指導も行います。加えて、ロコモの原因となる病気がある方は、原因疾患の治療をすることも大切です。
- Q骨粗しょう症も気になります。どのような注意が必要ですか。
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A
▲骨粗しょう症は検査などによる早期発見が大切
骨粗しょう症とは、加齢などにより骨が弱くなって骨折しやすくなる病気です。初期にはほとんど自覚症状がないこと、一度骨折すると繰り返し骨折しやすくなることが、この病気の怖いところ。早期発見し、骨折を起こす前に治療を開始することが大切です。糖尿病や脂質代謝異常のある人、女性であれば閉経後の人は注意が必要で、例えば背中や腰が曲がってきたり、背が2センチ以上低くなったりした場合は整形外科を受診し、骨密度の測定、エックス線撮影検査、血液検査などを受けることが必要です。治療は薬物療法と食事・運動療法が中心となりますが、近年では治療薬の種類も増えており、患者さんの症状に合わせて適切な薬を選択しています。
- Q骨粗しょう症の治療は、続けていくことが大事だそうですね。
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A
▲骨粗しょう症は早期発見・早期治療が重要
骨粗しょう症は自覚症状があまりなく、治療後の変化も感じにくい病気なので、治療を途中でやめてしまう人も少なくありません。でも、この病気は進行すると骨折を繰り返し、特に太ももの付け根部分、大腿骨の骨折は寝たきりや生命予後にも関わるため、治療の継続は非常に重要です。当院では最初に、治療の重要性などを動画も見ていただきながら説明しています。治療中は定期的に骨密度や血液の骨代謝マーカー値を調べて結果を患者さんにお伝えするなど、変化を実感していただけるよう心がけています。また、骨粗しょう症の専門的な知識を身につけた看護師や理学療法士とも連携し、患者さんのモチベーションを維持できるようサポートしています。
- Q健康寿命を延ばすために、どのようなことが必要ですか?
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A
▲理学療法士を中心に適切な指導やわかりやすい説明が受けられる
長生きすればするほど運動器の機能が衰えるのは自然なことですし、骨粗しょう症や運動器の病気も増えていきます。それは仕方のないことですが、そのまま放置していては、立つ、歩く、座るなどの日常生活での動作が困難になり、転倒や骨折が増え、やがて寝たきり、要支援・要介護状態になってしまうリスクも。健康寿命を延ばすためには、運動や食事などにより運動器の機能を保つこと、骨や関節などの病気がある場合は治療をすることで、ロコモを予防することが大切です。また高齢の方だけでなく、子どもロコモの対策も重要。当院では、必要に応じてお子さんに対する姿勢の改善や、運動、食事など生活習慣の指導も行っています。