隠岐 直紀 院長の独自取材記事
おき医院
(府中市/武蔵野台駅)
最終更新日:2025/03/14

京王線武蔵野台駅から徒歩3分の「おき医院」は、大学病院や地域の病院の小児科で経験を積んだ隠岐直紀院長が診療。子どもの病気全般に対応し、アトピー性皮膚炎や乾燥肌をはじめとした皮膚の症状、さまざまなアレルギー疾患の診療に力を入れている。「アレルギーのお子さんはアレルゲンの除去も大切ですが、必要な患者さんには過剰な反応を起こしにくい体質をめざす治療法もご案内しています」と隠岐院長。「子どもが大好きで、子どもを一生懸命育てるお母さん、お父さん、ご家族の方を応援したいです」と話す隠岐院長に、同院の地域での役割や診療の特色について聞いた。
(取材日2021年2月16日/情報更新日2025年3月11日)
子どもが安心できるように、まず笑顔で「こんにちは」
どのような経緯でこの医院を開設されたのでしょうか?

私は東京都三鷹市の杏林大学医学部を卒業して小児科を専攻し、大学病院の小児科などで経験を積みました。大学院修了後は府中市にある産婦人科・小児科の病院で小児科長を務めた際、「今後も地域医療に携わりたい」との思いが強くなり、当院の開設に至りました。お子さんの病気の始まりから治療後までの流れを掘り下げて診られるのは、地域で患者さんとご家族に長く接していく地域医療ならではの魅力です。さらに当院では、お子さんに多い一般的な感染症の予防や早期治療に努め、さまざまなアレルギー疾患の治療によって、少しでも楽に暮らしてもらえたらと考えて診療を行っています。私はお子さんが大好きですし、お子さんを一生懸命に育てているお母さん、お父さんたちも大好きです。そうしたご家族と地域の中でふれあいながら、その成長を見守っていける毎日はやりがいであふれています。
お子さんと接する際の心がけなどを教えてください。
私は診療室に入ったら、まずその子のお名前を呼んで「こんにちは」と笑顔であいさつしています。それを繰り返すと、次第に打ち解けてくれる子も多いのです。「何か痛いことをされるのではないか」と怖がっているお子さんもいますから、キャラクターの人形を置いたり、学校の話から始めたりと、リラックスしてもらえるよう心がけています。また小学生くらいのお子さんには、一緒に来られた親御さんからの話だけでなく、なるべくお子さん本人からもお話を伺うようにしています。お子さんが感じている症状やお悩みを直接くみ取り、親御さんに補足していただくことで、より正確な情報を得られるからです。お子さんは正直ですから、こちらを気に入ってくれれば、診療室でも本当にうれしそうにしてくれます。これは小児科の医師として喜びを感じる瞬間でもありますね。
近年の感染症の傾向などはいかがですか?

コロナ感染症の流行を経て、以前より皆さんが感染症というものをより意識するようになったのは良いことだと思います。ただコロナの流行を経てから、冬に流行っていたインフルエンザやRSウイルスが夏にはやったり、夏に流行するプール熱や手足口病、ヘルパンギーナなどが寒くなってから発生したり、とウイルスに季節感がなくなってきたと感じています。これが一時的なものなのか今後定着してしまうのか、見守る必要があります。また感染症に対する意識の高まりのせいか、予防接種に積極的な方が増えている印象です。当院は開院当初から、熱のあるお子さんは青の入り口、通常の患者さんは緑の入り口にして、診療も別の部屋で行うなど動線を分けて、感染症には十分に配慮してきました。今は院内の換気を徹底し、飛沫防止用のシートで必要な箇所を仕切る、こまめなアルコール消毒など、厳密に対策を行っています。
食物アレルギーの子どもに食の選択肢を増やしたい
アレルギー疾患の治療に力を入れていると聞きました。

アトピー性皮膚炎や喘息、アレルギー性鼻炎、じんましん、花粉症など、お子さんのアレルギー疾患に対する指導・治療に取り組んでいます。症状の抑制に加えて、アレルギーを起こす物質に少しずつ慣れ、過剰な反応が出にくい体質をめざす治療に力を入れています。その一つがスギ花粉やダニによるアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法。薬を舌下に置き、一定時間経過したら飲み込むということを数年間続けるものです。1回目の服用は院内で行いお子さんの状態を確認して、問題がなければ2回目以降はご自宅で服用していただけます。一般的にスギ花粉症の場合は、舌下免疫療法を開始して初めての春でも「良くなった」と感じることが望める方が多いと思います。ダニに関しては「気がついたらグスグスしにくくなっている」という改善の仕方も期待できます。この治療は体質改善に準じているゆえ、症状がいつの間にかに軽減することをめざせる点が良いと思っています。
食物アレルギーに対する取り組みも行っておられるそうですね。
食物アレルギーについても血液検査の数値も参考にしますが、大切なのは食べられる、食べられないは検査で決まらないということ。「うちの子にアレルギーがないか検査してください」というご相談もありますが、検査だけでアレルギーは決まらないのです。たとえ検査で一定の数値が出ても、これまでに症状がなければ、その食物を現時点で除去する必要はありません。逆に数値が出なくても食べて症状が出るのであれば、その食べ物を控えなくてはなりません。一番良くないのは不必要な除去です。私は親御さんに、必要のない除去でお子さんの食の可能性を閉ざさないようお願いしています。子どもは食べない状態が続くと、本当は食べられるようになっていても、「いらないし、これからも食べない」となってしまうのです。
食事指導の流れを教えてください。

何を食べてどんな症状が出たかなど、お子さんの状況を詳しく伺って、必要な場合は血液検査や皮膚検査を行います。こうした問診と検査をもとに、原因と疑われる食物の除去試験を、さらに食物を少量食べたときの反応を見る負荷試験を行って、原因となる食物を特定。そしてしばらく原因となる食物の除去を続けた後、状況を見極めながら少量ずつ再開していきますが、その量と質を親御さんのストレスにならないように変えていくのが腕の見せ所だと思います。
病気の改善を図るだけでなく一緒に成長を見守る存在に
小児科をめざされたきっかけを教えてください。

昔から人と関わるのが大好きで、将来は人と向き合える仕事に就きたいと考えていました。特に子どもが好きで、一時は学校の先生も候補の一つでしたね。最終的に医学部を選びましたが、小児科の医師をめざそうと決めたのは、学部5年生のときに参加したアジア医学生交流会というフィールドワークがきっかけ。私は夏休みを利用してタイの病院を見学し、そこで小児科の女性ドクターがお子さんを診る姿を拝見して、深い感銘を受けたのです。お子さんへの優しい接し方、医療に真剣に取り組む姿勢に感動し、改めて小児科の医師への憧れが強くなりました。
診療室の壁にはお子さんたちが描いた絵がビッシリですね。
お子さんと仲良くなると、絵を描いてプレゼントしてくれるのです。せっかく描いてくれた絵ですから、より多くの方に見ていただきたいと思い診療室に飾り始めました。すると自分の絵が飾られているのを見て喜んだお子さんが、「また描いたよ」と新しい絵を持って来てくれて(笑)。その繰り返しで、うれしいことに飾りきれない数の絵をいただきましたね。今は壁に飾れない絵をファイルにまとめたり、ホームページに掲載したりして、ほかの患者さんにも見ていただけるようにしています。こうした手描きの絵に加え、ライムグリーンと木目を基調とした院内の雰囲気などから、皆さんに温かみを感じていただければ幸いです。
最後に地域の方にメッセージをお願いします。

一人ひとりの患者さんや親御さんとじっくりお話ししながら、関係を深めていきたいと考えています。混み合う時間帯はなかなか難しいかもしれませんが、なるべく多くの方のお悩みや疑問にお答えしたいのです。親御さんたちが抱えている、ご自分の親や知人には話しても伝わりにくいようなお悩みを気軽にご相談いただけたらと思います。皆さんの味方になりたいと考え、ホームページを利用して生活で気をつけていただきたいことや病気の豆知識、地域の感染症情報など、子育てに役立つ情報も定期的に配信しています。そうやって少しでも多くの患者さんのお役に立って、お子さんの病気の治療だけでなく、成長を一緒にサポートできることをめざしていきたいです。