村井 隆三 院長の独自取材記事
おなかクリニック
(八王子市/八王子駅)
最終更新日:2025/06/13

八王子駅北口から徒歩1分、京王八王子駅からも徒歩4分ほどの場所にある、6階建てのビルが「おなかクリニック」だ。その名のとおり、胃と大腸の内視鏡検査や痔の日帰り手術など、おなかに関係する病気の診療に専門的に取り組んでいる同院。大学の助教授や基幹病院の部長などを歴任してきた村井隆三院長が、鎮静剤を用いた苦痛の少ない内視鏡検査や品質管理システムを取り入れ、患者が安心して受けられるような消化器内視鏡検査の提供をめざす。2024年7月には、お尻の診療専用フロアを開設。需要が高まっている痔の治療などのお尻に関する専門的な治療を、よりプライバシーを保ちながら行えるようになったという。今回、リニューアルした院内のことや特徴的な診療内容について、村井院長に話を聞いた。
(取材日2025年2月18日)
多くの内視鏡検査と痔の手術に応えるべく全館を改装
まずは、こちらのクリニックについて教えてください。

当院には3つの理念があります。その1つが、診療の柱としている胃・大腸内視鏡検査と肛門外科の診療を通じて、地域から信頼される品質管理の行き届いた専門的な医療を提供すること。もう1つが、地域の方々のかかりつけ医として、皆さんが長生きできるように支援していくこと。3つ目が、市民の方が住みなれた自宅で最期を迎えられるよう在宅医療の提供。その3つを理念に掲げて、2005年京王八王子駅の駅前に開院し、2011年に、JRの八王子駅北口から徒歩1分ほどの今の場所に移転しました。需要の高まる内視鏡検査に対応するため分院を開院する計画もあったのですが、建築費の高騰や設計がうまくいかないことから断念し、2024年に当院の全館リニューアルを行い、多くのニーズに応えられる診療体制を整えました。
大規模なリニューアルでどのように変わりましたか?
5階にお尻の診療専用フロアを設けたことが、大きな変化の一つです。もともと痔の日帰り手術は、4つある内視鏡検査室の内1つを兼用していましたが、検査が入ると手術を行えないなど制約がありました。今回の改装で、専用フロアに独立した手術室をつくり、緊急手術にも対応できるようになりました。診察室、手術室、リカバリー室、更衣室なども専用フロアにまとめることで、一般診療の患者さんの目を気にせずにお尻の診療を受けやすくなったのではないでしょうか。併せて、効率の良い動線をつくることもリニューアルの目的でした。1階受付の会計事務スペースを広げ、呼び出し表示のシステムなども一新。また、感染症対策にも引き続き取り組み、CT室の滅菌装置を、人体への安全性に配慮した常時紫外線滅菌を行えるものに変更しました。同時に壁紙や照明も森林を描いたものに変え、リラックスして検査を受けていただけるような部屋をめざしました。
現在、患者さんはどういった主訴で来られる方が多いですか?

約5割が胃・大腸内視鏡検査をご希望される方や、おなかの不調に悩む消化器疾患の患者さんです。3割は生活習慣病や風邪、インフルエンザなどいわゆる一般内科の方で、2割が痔など肛門外科の診療でいらっしゃいます。また開業以来、ほそぼそとではありますが、在宅医療にも対応しています。近年はがんでターミナルケアが必要な患者さんたちの行き場がないという現状があります。少しでもそんな方々の力になりたいと考え、がんのターミナルケアを中心に在宅医療を行い、お看取りにも対応しています。これからますます高齢化が進行すれば在宅医療のニーズは必ず拡大しますので、当院が少しでも貢献できるよう経験を積んでおきたいと考えています。
専用フロアで行う痔の日帰り手術。女性患者への配慮も
クリニックの特徴の一つでもある内視鏡検査について教えてください。

内視鏡検査室は全部で4つあり、約40人の非常勤医師で胃と大腸の内視鏡検査を行っています。2024年1月から12月までで胃の内視鏡検査は8893件、大腸内視鏡検査は6342件、合わせて1万5000件以上に対応しています。ほとんどの検査で、苦痛が少なくなるように鎮静剤を使用したセデーションを行っていますので、内視鏡検査が苦手な方でも、安心して検査を受けられるようになっていると思います。大腸内視鏡検査については、もし検査中に切除すべきポリープが見つかれば、その場で切除することも可能です。
専門フロアが完成した、お尻の診療も特徴的ですね。
痔の手術については、内・外痔核、裂肛、痔ろうの3種類の痔疾患のすべての手術を日帰りで行っています。肛門外科の診療は、日本大腸肛門病学会大腸肛門病専門医である羽田丈紀(はだ・たけのり)先生が中心に担当していて、2024年1月から2024年12月までの1年間で約370件の日帰り手術を行いました。お尻の診療は特殊で、怒責診(どせきしん)といって排便時にお尻の状態がどうなっているのか、確認が必要な疾患もあります。そうした場合の診察が可能な広いトイレも同フロアに設置しました。また非常勤ですが、肛門外科を専門とする女性医師も診療を担当しています。肛門外科というのは、特に女性の患者さんにはハードルが高くて受診がしにくいところがあると思いますが、そのような方でも安心してかかっていただけるのではないでしょうか。
NPO法人では、膵臓がんの早期発見のための取り組みをしていると伺いました。

もともと胃がんの撲滅キャンペーンを行うために立ち上げたNPO法人でしたが、胃がんの原因となるピロリ菌の感染率が下がり、今後胃がんで亡くなる方も減少していくと思われ、目標は達成しつつあります。そこで、いまだに検診の手段さえ確立されておらず、予後が悪い「膵臓がんの早期発見・診断」にテーマを変更して活動することにしたのです。膵臓がんは、初期症状がほとんどなく、5年生存率が他のがんに比べて非常に低いという特徴があります。それもあって、広島県尾道市のように早くから膵臓がんの早期診断に力を入れている自治体もあります。われわれ開業医や、病院の先生方が早期診断を意識して取り組めば、予後向上が見込めるため、八王子でも「膵臓がんの早期発見・診断」を根づかせたいと思っています。当院で診療の際に検査を提案するほか、市民の皆さん、地域の先生方への発信にも力を入れています。
かかりつけ医として腹痛や便通異常などにも迅速に対応
検査の品質管理にも取り組んでいるそうですね。

私は開業をする前に東京医科歯科大学の大学院で、医療経営、マネジメントの勉強を2年間しました。そこで学んだのが、品質管理です。過去、そして現在も、いろいろな医療事故が起きていますが、そのような問題が発生するのは、医療の品質管理が徹底されていないことに最大の原因があると思うのです。実際に医療の品質管理は難しいのですが、当院では、例えば胃の内視鏡検査なら、組織を取って検査をする生検をモニターしたり、大腸内視鏡検査ならポリープの切除率や、一番奥にある盲腸までの内視鏡の到達時間をモニターして、数値化することで内視鏡検査の品質を保つよう努めています。加えて、当院で内視鏡検査を受ける方には全員、スマートフォンをお渡ししています。院内の各所にセンサーがついていて、スマートフォンで場所をキャッチするのです。そうすることで、患者さんの安全を確保するように努めています。
お忙しいと思いますが、どのようにリフレッシュをされていますか?
10歳頃からギターを弾いていたのですが、61歳になった時にサックスを始めて、おなかスウィングスという当院のバンドを結成したんですよ。メンバーは当院のスタッフやその家族、関係者など13人ほどで、時々集まって演奏をしています。2025年に開院20周年を迎える当院の周年記念パーティーでも演奏する予定です。
最後に、地域の方たちへのメッセージをお願いします。

当院は胃・大腸の内視鏡検査と痔の日帰り手術を特徴としていますが、腹痛や血便などの症状でも多くの患者さんがいらっしゃっています。万が一急性腹症という入院が必要となるような状態の患者さんが来られた場合も、CTやエコー、あるいは緊急内視鏡検査などでなるべく早く診断をつけ、必要に応じて近隣の急性期病院へお願いできる体制を整えています。地域の皆さんからは「具合が悪い時はおなかクリニックに行けばなんとかなる」と思っていただけるようなクリニックをめざしています。在籍する医師たちもやりがいを持って診療にあたっていますので、おなかやお尻の不調があれば、我慢せずにいらしていただきたいです。