首の腫れや原因不明の不調の裏に
甲状腺の病気が隠れていることも
竹の塚糖尿病内科・ヒフ科
(足立区/竹ノ塚駅)
最終更新日:2025/07/11


- 保険診療
疲れがなかなか取れない、なんとなく体調が悪い、下痢や便秘、生理不順などに悩んでいる人は多い。「竹の塚糖尿病内科・ヒフ科」の佐藤元律(さとう・もとのり)副院長によると、そのような原因不明の不調の裏に、甲状腺の病気が隠れていることもあるという。甲状腺の病気は女性に多く、さらに妊娠にも影響するので注意が必要だ。また首回りの腫れはリンパ節によるもののことも多いが、甲状腺腫大や腫瘍の可能性も否定できない。足立区では数少ない内分泌代謝科のスペシャリストとして日本内分泌学会内分泌代謝科専門医の資格を持ち、バセドウ病や橋本病など甲状腺疾患の診断治療を得意とする佐藤副院長に、甲状腺疾患について詳しく教えてもらった。
(取材日2025年6月30日)
目次
女性に多い甲状腺の病気。疲労感・動悸・首の腫れなど、思いあたることがあれば内分泌代謝科専門医に相談を
- Q甲状腺の病気について教えてください。
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A
▲甲状腺疾患を専門的に診てきた佐藤元律先生
甲状腺の病気は大きく分けると甲状腺ホルモン量の異常と、甲状腺の腫瘍があります。喉仏の下にある甲状腺からは、体の代謝を調整する甲状腺ホルモンが分泌されています。甲状腺ホルモンが過剰な甲状腺中毒症では発汗・動悸・疲労感・手の震え・体重減少・下痢・生理不順などの症状が見られ、バセドウ病や無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎など原因はさまざまです。対してホルモンの分泌が少なくなる甲状腺機能低下症は、太りやすい・浮腫み・疲労感・無気力・便秘・脱毛・生理不順などの症状が表れますが、ほとんどが橋本病によるものです。甲状腺疾患は女性に多く、特に橋本病の抗体は中高年女性の5、6人に1人が持っていると言われています。
- Q甲状腺の病気は見逃されることが多いとか?
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A
▲甲状腺の病気は女性に多いが、自分では気づきにくい病気の一つ
甲状腺の病気の症状は上記のように、甲状腺だけの特有の症状ではなく、症状も全身に及ぶため甲状腺疾患由来とわからないことがあります。「なんとなくおかしい」と思いつつも、ご自身でも気のせいと思い病院を受診しなかったりかかりつけの先生に言い出せないケースがあるようです。また、受診しても、いわゆる不定愁訴や更年期障害、心の問題などと判断され甲状腺を調べず、診断に至らないケースもあります。私も患者さんご自身では甲状腺疾患だとまったく思っていなかった方や、症状があっても放置していて診断が遅れたケースを多数経験しています。甲状腺の腫れに関しても、毎日のことのため、ご自身では気づいていないケースも多くあります。
- Q女性に多いとのことですが、妊娠などに影響はあるのですか?
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A
▲患者に寄り添った診断、治療を提供している
甲状腺ホルモンが過剰な状態での妊娠は母体や胎児に悪影響を与えます。また妊娠中は使いづらい薬もあります。バセドウ病の方は、一般内科ではなく、専門家の管理のもとでコントロールを図ったほうがいいと思います。また、甲状腺ホルモンが十分に足りていないと、不妊や流産の一因になりますし、胎児にも影響が出る可能性があります。これは甲状腺の症状がまったくなくても、橋本病の素因である抗体があるだけで起こる可能性があり、また不妊治療時・妊娠中は非妊娠時と甲状腺ホルモン関連の基準値が異なります。橋本病の抗体は女性の約10~15%が持っているとされています。気になる方は一度専門の科を受診するのをお勧めします。
- Q腫瘍に関しては、どのようなきっかけで受診する方が多いですか?
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A
▲さまざまな検査に対応している
甲状腺腫瘍があっても自覚症状はないため、腫瘍が小さいとご自身では気づかないことがほとんどです。腫瘍が大きかったり、腫れていても、急激でない限りご本人は気づかないことが多いです。健診の甲状腺触診で指摘されたり、家族などに言われて初めて気づき受診される方が多いです。超音波検査で甲状腺を調べることで詳細がわかります。調べてみると、実際は腫れや腫瘍がなかったりするケースもありますが、気になったり、健診で指摘された場合は一度必ず専門の医療機関を受診してください。腫瘍も良性と悪性があります。悪性が疑われる場合はさらなる検査、処置が必要ですし、良性に見えても悪性の場合があるので定期的な超音波検査が必要です。
- Q内分泌代謝科専門医に診ていただくメリットを教えてください。
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A
▲内分泌代謝科専門医である佐藤元律先生
甲状腺ホルモン量が過剰になっている状態である甲状腺中毒は、バセドウ病以外にも原因となる病気がいくつかあります。それぞれ治療法が異なるため、見極める必要があります。またバセドウ病の薬は副作用が比較的多いため、副作用が出ないか様子を見ながら、ホルモン値に応じて再燃、再発がないよう慎重に量を調整していかなければなりません。その判断は、やはり専門的知識を持ち、治療に慣れている内分泌代謝科専門医に任せるのが良いでしょう。橋本病も、特に妊娠前中後は、非妊娠時と異なる対応が必要であり、甲状腺ホルモン値の変動が大きい場合があります。やはり治療に慣れた専門医に任せるのが良いと考えられます。