鈴木 保永 院長の独自取材記事
鈴木内科胃腸クリニック
(足立区/千住大橋駅)
最終更新日:2025/06/10

千住大橋駅から徒歩6分、温かみのある下町の住宅街の中に「医療法人社団永優会 鈴木内科胃腸クリニック」はある。昭和モダンな3階建てビルのたたずまいに懐かしさと安心感を覚える人もいるだろう。柔和な笑顔で待っていてくれるのは、2代目院長の鈴木保永先生。大学病院で長年にわたり内視鏡検査と手術の研鑽を積んできたスペシャリストで、近隣の人々の健康を守るため一般内科診療にも注力し、同院の継承から約20年が過ぎる。ともに年齢を重ね耳が遠くなってきた患者には大きな優しい声でゆっくりと語りかけるなど、優しさを大事にしているという鈴木院長。これまでの道のりや地域医療にかける思いなどを詳しく聞いた。
(取材日2025年2月25日)
親子2代にわたり、地域の健康を守り続けて約60年
60年以上の歴史があるクリニックと伺いました。

私が生まれる前、医師だった両親がこの地で「鈴木医院」を開業したのがすべての始まりです。木造の小さな診療所で2階が住居になっていました。夜、家族だんらん中でもトントンと扉をたたく方がいれば、すぐに対応していた父の姿を覚えています。いつも穏やかで患者さんに優しい父でした。一方、母は朗らかなおしゃべり好きで「泣いて来た子も笑って帰す」がポリシー。昔ながらの町医者そのものの2人の生きざまは、今も私の診療の礎となっています。とはいえ、子どもの頃の私は近所の友達とつるんで遊んでばかり。無事、医師になった後も「あのやんちゃ坊主のやっちゃんが医者になった!」と驚いた方もいたほどです(笑)。
2代目を継承したのは急なことだったとか。
獨協医科大学卒業後は獨協医科大学病院の消化器内科に16年ほど勤務。食道静脈瘤破裂を緊急内視鏡手術で止血するなど、数多くの内視鏡検査を経験しました。外来医長や病棟医長を務め、後進の育成にもやりがいを感じていたある日、父が脳疾患で倒れてしまったんです。長年、通ってくれている患者さんたちを見捨てるわけにはいかないと継承を決意しました。しかし、後遺症で寝たきりになり口もきけなくなっていた父からの引き継ぎはないも同然。最初の1年は本当に大変でしたが「やっちゃん、帰ってきてくれてありがとう」と皆さんが温かく迎えてくれたので頑張れました。以来、あっという間の21年でしたね。
現在はどのような患者さんが多いのでしょうか。

かつて両親が診療していた方々、その子ども世代などが多いですね。医師も患者も2代目同士といったところでしょうか。地域柄もあるのかご高齢の方が多く、中には100歳を越えている方も。高血圧、糖尿病、高脂血症など何らかの生活習慣病を抱えているシニアも多いので一般内科診療にも力を入れています。ただ、年齢を重ねるうちに、どこも悪くないのに「気分がすぐれない」といった訴えも見られるようになるんですよ。中には「もう生きているのが嫌だ」と来る方もいるのですが「でも、先生の顔を見てたら元気になった」とお帰りになる時はホッとします。このように何でも話せて前向きになれる場所であり続けることも、町のクリニックの役目なのかもしれませんね。
精密な内視鏡検査と幅広い消化器疾患の治療が強み
身近な町のクリニックで、先進機器による内視鏡検査も行っているのですね。

これまで積み上げてきたスキルを生かし「迅速かつ安全、苦痛を抑え、精密な内視鏡検査」を追求しています。上部内視鏡検査は基本的に局所麻酔を用いて経鼻で行いますが、経口と変わらない鮮明な画像を撮影できる先進機種を導入しているのでご安心ください。希望があれば経口も可能です。下部内視鏡検査は病変を見逃さないためには最速でも約20分は必要なので、患者さんに軽く鎮静剤を用いて素早く終わるようにしています。また、内視鏡検査は体力さえあればご高齢の方でも問題なく受けられます。むしろ、若い方のように上部内視鏡検査で嘔吐反応が強く出る心配も少ないので、気になる症状があるなら遠慮せずにご活用ください。
どのような時に内視鏡検査を受けるべきですか。
胃がもたれるなどの消化器症状が続いているならば、上部内視鏡検査を検討してみてはいかがでしょうか。実は胃ではなく食道の疾患の可能性もあるのですが、どちらも調べることができるからです。また、一度でもピロリ菌が見つかったことがあるなら、上部内視鏡検査を毎年受けるようにしましょう。除菌をしてもがんになるリスクはありますので。同様に、ポリープができたことがあるなら、年に一度の下部内視鏡検査をお勧めします。何もなければ2〜3年ごとのペースで構いませんが、その間も便潜血検査は続け、陽性になったらすぐに下部内視鏡検査を視野に受診するようにしましょう。その他、何らかの消化器症状があるならば、当院では肝臓、胆嚢、脾臓などの病気の診断に必要な腹部エコー検査も行っているので、早めにご相談ください。
最近、気になる消化器疾患はありますか。

例えば、逆流性食道炎について注意喚起したいと思っています。喉のつかえを感じて耳鼻咽喉科を受診しても異常が見つからない場合でも、当院で診断がつき治療を開始できる可能性もあります。原因としては、食生活、加齢による背骨の湾曲などが指摘されています。また、下痢が続いていて調べてみたら過敏性腸症候群(IBS)だったということも。さらに、下血には潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)が隠れている場合もあります。いずれもストレスが関係している疾患なので、心当たりがある方も多いのではないでしょうか。「おなかが弱い体質だから」などと放置したり、効果が実感できないまま市販薬を頼ったりしがちですが、できるだけ早く消化器内科をお尋ねください。
アットホームな雰囲気の優しさあふれるクリニック
今後の展望についてお聞かせください。

強みとしている内視鏡検査とともに、希望する方が多い生活習慣病の管理などもしっかりと行っていきたいです。一診制ではなかなか大変なので、大学病院の消化器内科に勤務中の息子が、4月から週に2日ほど手伝ってくれる予定なのはとても助かります。いずれは二診制にできたら良いですね。今、診療室は1部屋しかありませんが、もともと両親が診療をしていた頃は2部屋ありましたしね。また、スタッフたちの意見も積極的に取り入れていきたいと思っています。現金以外の支払いを希望する方が増えていると教えてもらったので、スマホによる決済も新たに取り入れることができました。長く働いてくれているスタッフも何人かいて、家庭的な雰囲気を支えてくれている頼もしい存在です。
お忙しい毎日ですがリフレッシュ法などはありますか。
20代の頃はよくゴルフをしました。大学があった栃木のコースを父と回ることができたのも懐かしい思い出です。ここ数年は音楽大学出身の妻の影響もあり、ミュージカルを観に行くのが趣味になっています。最初は妻とまだ子どもだった頃の息子の2人で出かけていましたが、だんだん私も混ぜてもらうようになり、すっかり夢中になりました。私は観劇するだけですが、息子は歌も習うようになり、内輪の発表会で舞台に立つこともあります。妻と2人で「歌って踊れる医者をめざそう!」とからかっていますが(笑)、なかなか良い声で、歌も上手なんですよ。
最後に近隣の方々へのメッセージをお願いします。

父の穏やかさと母の明るさをそのままに「日本一優しいクリニック」をスタッフともども目標にしています。新たに加わる息子とも力を合わせ、今後とも、このエリアの皆さんの健康を守っていきたいです。徒歩約20分の北千住駅まで行けばたくさんのクリニックがあるかもしれませんが、おなかが痛い時にたくさん歩くのはつらいですよね。そんな時、身近な当院を思い出してもらえたら、きっとお役に立てることがあるはずです。ストレス由来の消化器疾患も増えているからこそ、アットホームな雰囲気で患者さんを温かく迎えたいと心から願っています。おなかのこと以外のお悩みでも気兼ねなくお立ち寄りください。また、足立区では特定健診や後期高齢者検診に加え、がん検診も充実しています。胃腸の疾患については、胃がん内視鏡検診や胃がんハイリスク検診、大腸がん検診がありますので、早期発見、早期治療のため受診することをお勧めします。