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山本 亘 院長の独自取材記事

千住中央診療所

(足立区/北千住駅)

最終更新日:2024/02/20

山本亘院長 千住中央診療所 main

北千住駅から徒歩15分、商店街の一角にある「千住中央診療所」は、開業から60年以上にわたって地域医療に貢献してきた町の診療所だ。2007年に父である先代から同院を引き継いだ山本亘院長は、腫瘍内科の黎明期から研究に携わり、埼玉医科大学の腫瘍内科で講師としても活躍してきた経験豊富な医師。高度医療の現場で培った知識と経験を生かし、総合診療からがん治療まで対応できる診療所として地域医療に貢献している。同院の大きな特徴は、地域医療の窓口として患者をサポートするため、病気の治療だけでなく生活を総合的にサポートする点だ。さまざまな相談に対応しながら、広い視野で患者と向き合う同院。優しい笑顔が印象的な山本院長に「かかりつけ医」としての地域への思いや診療所について話を聞いた。

(取材日2023年11月17日)

医療を柱に地域住民の健康と生活を守る診療所

こちらの診療所の特徴を教えてください。

山本亘院長 千住中央診療所1

住宅地の中にある診療所として、この地域の健康と生活をどうやって守るかを主眼に取り組んでいます。父が63年前にこの地に開院した当時も、やはり地域の人たちとどのように生活していくのか、そのために医師としてサポートできることは何かを中心に考えていたのだと思います。私自身も大学病院で診療を行っていた頃は、病気を治療することが主体でしたが、今は治療だけでなく「生活を守るためにはどうするか」に重きを置いています。生活で苦しんだ時にはどこに相談すればいいか、そこをつかんでおいて、患者さんにお話しするというスタンスですね。当院を必要として来てくださる皆さんに「私が何とか対応します」と応える日々です。その人に合わせた治療をし、原因を見つめていかなければ病気を治すことはできません。ですから当院では、同じ風邪の治療でも、喉の所見によって、患者さん一人ひとりの処方が同じことはあまりないですね。

先生は研究者としてのご経歴もお持ちと伺っています。

私が通っていた昭和大学の腫瘍内科は、消化器がんも含めた腫瘍研究で知られていました。当時、すでに欧米では「腫瘍内科」が重要な存在で、日本でもこの新しい分野を育てていこうという中、私も腫瘍研究の前線に飛び込ませていただきました。そこでは、がんで苦しむ人をどう助けられるか、多方面からの診療と研究に取り組みました。その後も広島大学で分子標的薬を用いた治療を学び、オランダのエラスムス・ロッテルダム大学の腫瘍内科へ非常勤講師として留学しました。帰国後は、埼玉医科大学内に腫瘍内科を立ち上げるタイミングで講師に着任し、腫瘍治療を一つの部門に集約するという今の腫瘍内科の草分け的な現場で研鑽を積みました。腫瘍内科は治療を行うだけでなく、患者さんの生活、家族、精神面などもサポートしなくてはいけない科です。腫瘍という窓から終末期についても考えさせられ、この時期に開業医としての下地が鍛えられたとも言えます。

そのご経験が診療所の方針に通じているのですね。

山本亘院長 千住中央診療所2

当院は体や心に不調を起こした時に、一番初めに来るファーストステップの場所です。私のところへ来ればとりあえず何かをしてあげられますし、私が対応できないことは適切な医療機関に紹介する。つまり、医療の入口、それを実践しています。基本は相談に対して応えるという形なので、「こういう時はどういう食事をすればいいのですか?」というようなことで診察に来られる方もいらっしゃいます。どこかが悪くなって来院されるケースもありますが、年齢を重ねれば重ねるだけ相談事は増えていきますからね。患者さんが年を重ねて来院することが難しくなれば、往診や訪問診療にも対応します。また、必要に応じて介護職の方に紹介し、区で介護保険を取得してもらうなど、こうしたらいいよということをお話しします。そのステップをこちらがやらなければ、迷子になってしまう人もいらっしゃいますからね。

真摯な姿勢で患者と向き合い、困り事や悩みをサポート

どのような患者さんが来られるのでしょうか?

山本亘院長 千住中央診療所3

住宅街の中にありますから、地域の住民の方皆さんが来られていますね。年齢層的には高齢者、中間層、小児がほぼ同じぐらいの割合です。生活習慣病の診察と管理も行いますし、心療内科も対応していますから、主訴はさまざまです。このエリアは精神科や心療内科を診療する医療機関が少ないので、どこか専門的な医療機関に行く前に私のところへ相談に来ていただき、治療の道筋を示すことができればと考えています。私は学校医でもあるので、小児のADHD(注意欠如・多動症)や自閉症で来られる方も多いですね。

セカンドオピニオンにも対応されているとか。

はい。他院でがんと診断され、セカンドオピニオンを求めて来られる方は多いですね。「この治療をどう思うか」と相談に来られることもあります。紹介の紹介という形で来られることもあり、先日は青森や秋田から患者さんがいらっしゃいました。宮崎や熊本の方もいますから、東北地方から九州まで幅広い地域から来院していただいています。ありがたい話ですね。

診療の際、大事にされていることは何でしょうか?

山本亘院長 千住中央診療所4

私はカルテと向き合っているわけではなく患者さんと向き合っているわけですから、診療の時は体ごと患者さんのほうを向いて話しています。相手が真剣に伝えてくることに対して私も真剣に答えますし、頭の中をフル回転させて、どうしたら私の持っている手段、知識を使ってその方を助けていけるかを考えます。例えば、当院は眼科は標榜していませんが、患者さんが目の不調で相談に来たら、当院で対応できる範囲で「まずファーストステップとしてこの薬をつけてみましょう、改善しなかったらちゃんと眼科に行ってくださいね」と対応するような感じです。つまり、何でも相談に乗れなければいけないということですよね。それができるのは、腫瘍内科を経験してきたからこそだと思います。基本的には脳の腫瘍と血液のがん以外は診てきましたから、どの分野に対してもある程度の知識があると自負しています。

同じ風邪でも異なる処方。原因を見つめ適切な治療を

地域にとってどのような診療所でありたいとお考えですか?

山本亘院長 千住中央診療所5

看取りができる医師だからこそ、生活もサポートすることができると私は思っています。患者さんの生活をどうしてあげたらいいのか、家に帰したほうがいいのか、入院していただくほうがいいのか、患者さんだけでなくご家族まで総合的にみて、それらを判断していく必要があります。すべての選択肢を考え、一番良い形を提供していくために、患者さんとご家族に正直に想いを話していただけるような診察を心がけていますね。そして腫瘍内科で得た経験をもとに今の患者さんの生活をサポートして差し上げて、ご家族へ患者さんとの接し方や、具体的な緩和ケアについてもお話ししています。地域のかかりつけ医として、患者さんが楽になれるよう、さまざまな支援ができる診療所が最終的な目標ですね。

リフレッシュできるご趣味などはありますか?

以前は山登りでしたが、今は海へ行ってスキューバダイビングばかりしています。ライセンスは学生の時に取得していたのですが、そのまま放置していました。最近になって、誘われて再び行くようになり、ここ3~4年で50~60本潜っています。この辺では伊豆や三浦に行くことが多いですね。旅行がてら沖縄へも行きますが、ダイビングポイントとしてメッカの場所ではなく、潮の流れが強いところなどに行きます。そういうポイントでないと見られないものがたくさんあって楽しいですね。ダイビング中はぼーっとできて楽です(笑)。

最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

山本亘院長 千住中央診療所6

難しいのは継続していくことだと思います。今後、ますます高齢者が増えたらこの地域はどうなっていくのだろうと考えますし、医療が専門化すればするほど患者さんの生活をサポートしてくれる先生が減って、診療所がだんだん少なくなっていくのではないかと思います。また現在、40代から60代前半の医師はまだ何とか総合的に診療を行うことができますが、若い世代は専門に特化しすぎてトータルで診ることができないのではと危惧しています。そのような状況の中で、自分が行っている医療を継続することが後進の育成にもつながっていくのではないでしょうか。病院での治療と在宅医療、介護をどう織り交ぜていくかという部分は今後、当院も検討していかなくてはいけないですね。私は、いわゆる「開業医」でありたいと思っています。そして、今後も、何かわからないことや相談事があれば来ていただいて、丁寧に話を聞き対応していきたいと思います。

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