全国のドクター8,988人の想いを取材
クリニック・病院 161,446件の情報を掲載(2020年2月18日現在)

  1. TOP
  2. 東京都
  3. 足立区
  4. 堀切駅
  5. 柳原病院
  6. 石川晋介 院長

石川晋介 院長の独自取材記事

柳原病院

(足立区/堀切駅)

最終更新日:2019/08/28

35678 df 1 main 1435310594

堀切駅から徒歩2分。駅沿いの土手に上がればすぐ目に飛び込んでくる「柳原病院」は、まさに「地域の病院」というのにふさわしい病院だ。1951年に地域に病院をという人々の声に応えて、診療所として誕生。何度かの改変を経て、1998年にベッド数85床の現在の形となり、地域の急性期医療、一般病棟及び専門多種職のいる地域包括ケア病棟での入院治療、在宅医療の現場を支えるバックアップの3つに力を入れている。2014年9月には医療保険未加入者や生活に困っている人にも受診の道を開く制度・無料定額診療事業も始まった。2013年8月に院長に就任、毎日ロードバイクで通勤しているという明るくきさくな石川晋介院長から、病院の成り立ちや理念、在宅医療を支える地域の医療機関との連携などについて話を伺ってきた。
(取材日2015年6月12日)

「誰にでも平等な医療を」の理念から、無料定額診療事業を開始

まずは病院の成り立ちから教えていただけますか。

35678 df 1 1 1435310594

1950年代初頭から、労働者など貧しさから医療機関にかかれない人に医療を提供しようという「無産者診療所」という運動が起こり、その流れで誕生した民主診療所が始まりです。1951年に柳原診療所として、医師、看護師、事務長の3人体制でスタートし、1968年に45床の病院になりました。1976年には足立地域の高齢者の約1割にあたる2万人を訪問し、寝たきり老人の実態調査を行いました。その結果在宅治療が極めて重要だという認識に。当時は訪問介護体制など全然ない時代でしたが、これをきっかけに看護婦さんが自転車で患者さんのもとを回る無償の訪問介護事業をはじめ、ここから90年代の訪問ステーションの制度化につながっていきました。「地域の人々の健康を守る」というのが当院の出発点であり、今も引き継がれている核の部分ですね。1998年に現在の場所に移り、ベッド数も85床と今の形になりました。

最も大事にされていることは何でしょうか?

「地域と共に歩み、確かな技術が支える安全・安心な医療を提供する」ことです。10数年前に私たちの先輩が作った「柳原・医療福祉ネットワーク宣言」にも書かれているのですが、要約すると、「自分たちの技術を研さんすること」と、「患者さんの権利を守ること」をしっかりやろうということに尽きます。前者に関しては例えば、1979年から月1で発行しており、現在では400号を越えた「病院通信」もその一環で、勉強会や症例研究会、学会報告などの診療情報をみんなで共有し、診療技術を高めることを日々意識しています。後者に関しては、何より大事にしているのが、誰に対しても平等で差別のない医療を提供すること。例えば、入院に個室を利用した時などにかかってくる差額ベッド代というものがありますが、そのために都内の病院から転院せざるを得ない人もたくさんおり、これは本当に理不尽な制度。当院では開院の時から取っていません。また、経済的理由から医療保険に入れない人でも病院を受診できるよう設けられた、厚生労働省の無料定額診療事業も利用してもらえます。

お金がなかったり、医療保険未加入でも無料で治療が受けられるということですか?

35678 df 1 2 1435310594

ええ。患者さんの申し出を受けて当院の管理委員会で判断し、事業対象に該当するので援助しましょうということになれば、2ヵ月間は無料で診療が受けられます。その2ヵ月でしっかり治療して、同時に、医療ソーシャルワーカーにも介入してもらい生活保護が受けられるように支援するなど、何とか生活できる体制を整えられればと。この事業の認定医療機関になるのにはいろいろ条件があるのですが、当院は2014年9月に認定をいただくことができました。当院には常勤の医療ソーシャルワーカーが2人いますが、ある月の新規相談案件、持ち越し案件がそれぞれ百件近くあり、ほとんどが医療費や生活上の相談です。例えば肺炎の治療が順調に進んでも、患者さんが本当に困っているのは費用とか、家に帰ってお風呂はどうやって入るかとか買物は誰がするかなんですね。ですから、病気の治療はもちろん、「その後の生活をどう支えるのか」は非常に重要な部分なんです。

退院後の暮らしを支える地域の医療ネットワーク

在宅治療の重要性にもつながりますね。

35678 df 1 3 1435310594

その通りです。みんなが歩いて元気に退院できるわけではないですからね。当院では週に1回、退院調整会議というのを行っているんですが、そこでは管理師長、各病棟の師長、医療ソーシャルワーカーに加え、地域のリハビリ病院、訪問介護ステーション、往診をしている診療所、ケアサポートセンター、老人保健施設などの各担当者が集まって、「どういうケア体制があればこの患者さんは自宅に戻れるか?」を話し合います。その上で退院に決まったら、今度は病棟の看護師、担当医、ケアマネージャーさんや担当の訪問看護師さんなんかで合同カンファレンスを行い、患者さんがスムーズに元の生活に移行できるように、例えばポータブルトイレは必要なのか、デイケアは介護保険内で大丈夫かなど、具体的なことを決めていく。病院の力だけでは限界がありますが、60年以上かけて作られてきたこのネットワークがあるので、例えば「退院後は訪問看護と往診を続け、もし容態が悪くなったらすぐに病院で対応する」という具合に、自宅での暮らしのために必要なケアを提供できるのがこの地域の強み。高齢での独居やなかなか動けない人でも何とか生活できるので、1ヵ月の入院患者数160〜190人の内、9割以上の方が退院して在宅療養に復帰されています。

その地域の医療ネットワークの中で、「柳原病院」の立ち居地はどういう部分になるのでしょうか。

小さな病院なのでできることは限られていますが、1つは在宅医療のバックアップの役割を果たすこと、もう1つは足立・墨田・荒川の一角という小さなこの地域の急性期医療・2次救急をしっかり担うことが、当院の果たすべき役割だと思います。一般腹部外科手術のほか乳腺外科に積極的に取り組んでおります。外来は一般内科、外科、整形外科に加え、神経内科と腎臓内科、女性の先生の婦人科、脳外科、泌尿器科などの専門科があり、また消化器内視鏡専門医による、内視鏡的ポリープ切除術は力を入れている分野です。基本的には急性期治療と入院治療が主体ですが、退院後に継続診療を希望される方もいらっしゃることから、総合内科の外来も設けています。そして、救急は毎日午前・午後で担当医を決めてしっかりと。また、往診を行っている診療所の先生からの緊急要請はいつでも受け入れる、主な診療所とは電子カルテの情報もネットワークで共有するなどで、在宅医療の最前線の先生たちが安心して活動できるようにしています。地域の開業医の先生方には、MRIやCTなどの検査が必要な時にご利用いただいていますが、もっと連携を密にして、先生方の日常診療に協力していきたいですね。

地域にとってなくてはならない病院ですね。

35678 df 1 4 1435310594

そう言ってもらえる存在でありたいですね。当院はまだ診療所の時代から、地域の人と一緒に作り上げてきた病院。「病院と一緒になって地域に健康の和を広げていこう」という一般の方々がボランティアで行ってくださっている「足立健康友の会」という組織もあって、ずっとそういう人たちに支えられてきたので、それを返していくこと、地域の人々の健康をしっかり守っていくことが何より大事な使命です。この友の会は現在会員が3万人ぐらい。基本は班会という小さなグループでの活動で、そこに当院から看護師や医師が行ってお話したり、健康に関する質問に答えたり。病院職員と地域の人々との交流にも一役買っています。最近、人が健康で生活することができる環境づくり、ヘルスプロモーションが注目されていますが、振り返ってみるとずっとそういうことをやって来ていました。

「私たちの病院」と言われるよう、しっかり役割を果たしていく

将来に向けてさらに力をいれたいこと、強化したいことは何でしょうか。

35678 df 1 5 1435310594

基本的には、この地域のネットワークを大切にしてさらに強力にしていくことです。病院は病気を治すことはできても、患者さんの生活を支えるのは、診療所やデイサービス、訪問看護、老人保健施設、グループホーム……とみんなの連携なしにはできません。健診業務をもっとしっかりできるようにとも考えているので、それも含めてネットワークを広げまた絆を太くして、地域の人々に「私たちの病院だ」と言ってもらえるように、しっかりと役割を果たしていきたいですね。もう1つ、もう少し大きな所では全体としての医療・福祉・介護の充実。大部分は国の政策でしっかりしてもらう必要があることで、直接できることは少ないですが、毎年同法人の柳原リハビリテーション病院の院長と共同で、足立区に対して医療現場の現状まとめやデータに加え、手薄な所や今力をいれると効果的な点などをまとめた要望を出しています。役所の方も大事なことはしっかり聞いてくれるので、こちらも継続して力を入れ、区の人たちと一緒に地域の医療・福祉・介護をよくすることに貢献できればと思っています。

先生ご自身も、診療を担当されるのですか?

管理業務は少なくて、スタッフと一緒に現場にいることがほとんどですね。週2回の外来と病棟をみています。専門は内科で、ここに来る前に20数年いた同法人のみさと健和病院では血液透析や院内感染対策、緩和ケア病棟の立ち上げにも関わりました。ここには緩和ケア専門の病棟はありませんが、ケアをしなければいけない人はたくさんいるので、看護師さんと連携しながら行っています。

実際に患者さんに接する時には、どんなことに気をつけていらっしゃるのでしょうか。

病気は、患者さんから病状などを聞いて初めて「この病気かな」という形ができてくるので、診療では話をどれだけ聞き出せるかが大切。「この先生なら話してもいいかな」と感じてもらえるように、「この先生はちゃんと見てくれている」と思ってもらえるように、話し方や雰囲気などを含め意識しているところです。医療は1人ひとりの係わり合いなので、大事なのはやはり患者さんのお話をきちんと聞くこと。聞いたことをきちんと咀嚼して、何らかの患者さんのためになることを返すことまで含めて「聞く」ことだと思うので、そのためにも常に自分の技術や知識を高める努力は続けていかなければと思います。

最後に、地域の人々に向けて一言メッセージをお願いします。

35678 df 1 6 1435310594

患者さんのことを差別せず平等に、しっかりした技術で安心・安全な医療を提供することを大切にしている病院です。お体のことで困ったことがあれば、経済的なことも含めてすべて相談にのる、というのが創立からの精神であり、私たちの先輩の原点でもあるので、どうぞ気軽にご相談ください。

Access