成人の注意欠陥多動障害(ADHD)
薬剤だけでない治療法も
あべクリニック
(荒川区/日暮里駅)
最終更新日:2024/04/09


- 保険診療
注意が散漫になり、授業中でも席を立ってしまうような注意欠陥多動障害(ADHD)は幼少期に指摘され治療に向かうケースが多いが、成人に関しては治療の対象とされることが少なかった。しかし、近年は成人でも積極的な治療を求める人々が多く、薬剤を含めた治療方法も進化している。この分野に先進的に取り組んできた「あべクリニック」の阿部哲夫院長に聞いた。
(取材日2015年2月13日)
目次
治療法は薬だけではない。患者の選択を最優先
- Q成人になってからの注意欠陥多動障害はどんな特徴がありますか?
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A
▲明るく広々とした診療室
ADHDは長い間、子どもの成育段階での病気として捉えられてきました。生まれつきと言ってもいい病気です。集中力が持続しない、同じことを継続してできない、じっとしていることができないといった症状が特徴となります。近年は小学校に入る段階で診断がつくようになりましたが、一方で何のケアもなく成人になって社会生活で困難に直面する方が多くいます。これまでは「落ち着きがない」「だらしない」という性格の問題で済まされることも多くありましたが、ADHDは精神的な疾患で治療が可能です。身体能力や知能指数などとの相関関係はありません。長時間勉強が続けられない、学習能力が低いと思われがちですが、高学歴の方も多くいます。
- Qどのような症状が出たら受診すべきですか?
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A
▲ADHDの治療に先進的に取り組んでいる
これまでの生活のしにくさについてADHDが原因では?と気づいて、受診される方が増えました。注意力が散漫で仕事でミスが多い、次々に興味が移ってしまう、さらに私生活でも片づけができなかったり、約束や時間を守れなかったりといったことが顕著な症状です。原因は、情報が入ってきた時に整理して考えられず、断片的な情報ばかりになってしまうことです。多動性については、成人になると改善されるケースが多いです。本人の自覚が大切で、「何となく他の人と違う」という感覚を持っている方は専門医療機関での相談をお勧めします。脳の器質的病気なので日常のストレスなどが原因で発症することはありません。
- Qどのような診療の流れになりますか?
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A
▲日本精神神経学会精神科専門医の院長が診療を行う
カウンセリングが主体です。子どもの頃からの成育歴を伺い、生活の中で困った経験などを聞いて、簡単な心理検査もします。ADHDと診断した場合に治療に移ります。本人が自主的に来院した場合はよいのですが、周囲の人に勧められて受診したような場合に、本人がADHDと自覚せず、治療に消極的な方もいらっしゃいます。そのようなケースでは無理に治療を進めることはありません。あくまでも本人の気持ちを優先します。治療は薬剤の処方とカウンセリングとなります。以前は依存性の強い薬だけでしたが、近年は新しい薬が開発されたので使い分けができ、薬漬けといった心配は軽減しました。治療はすべて保険適用で行います。
- Q薬の処方以外の治療はどのようなことがありますか?
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A
▲デイケアも併設し改善に努めている
まず、本人が自分の症状に正確な知識を持つことが大事です。丁寧に説明し、症状の改善を図れることを理解してもらいます。本人の治療へのモチベーションを高めた上で、心理社会教育を取り入れたカウンセリングをします。ミスが多いことに悩んでいるなら、それを自覚して確認作業を増やすとか、一つのことをやり終えてから次の作業に移るなどといった自分の意識で改善できる要素もたくさんあるので、一人ひとりに応じたサジェスチョンを行います。認知行動療法の一種です。また、当院では自閉症やアスペルガー症候群といった広汎性発達障害の方たちのためのグループ活動をしているのですが、このような活動をADHDにも導入しようと考案中です。
- Q周りの人々はどのように接するのがいいですか?
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A
▲ADHDについて正しい知識を持ちポジティブな評価をと語る
本人が自分の症状を理解するのも大切ですが、普段接する方々にも正しい知識を持っていただき、偏見のない対応をしていただきたいと思います。例えば職場で集中力が続かずミスが多いならダブルチェックをするなどの環境調整ができればベストです。そして、ADHDの方は自己評価が低いことが特徴で、それが原因でうつなど二次的な精神障害を起こすことが多くあります。否定的な声かけはしないで、ポジティブな評価をして本人に伝えてください。家庭ではなおさらです。外では失敗が多く落ち込んでいるので、家の中では本人の特性を認めて自尊心を高めてあげることが大切です。