小倉 弘章 院長の独自取材記事
六地蔵クリニック
(江東区/東陽町駅)
最終更新日:2023/01/12

東陽町駅から徒歩10分の場所にある「六地蔵クリニック」は、140坪の敷地を有する開放感のあるクリニック。高い天井の待合室は、ドイツ製の大型置時計が置かれており、時を告げる重厚な音が響く癒やしの空間だ。脳神経外科を中心に、神経内科や循環器内科、高齢の患者のニーズに応えた整形外科やリハビリテーション科など多くの診療科目を設けている同院。「神経に関連する診療なら任せてほしい」と話す小倉弘章院長は、大学病院で数多くの手術を執刀し、さまざまな症例に対応してきた。近隣の病院と連携し、神経に関する疾患を持った患者を紹介されることも多いという小倉院長に、開業の経緯や診療で大切にしていること、今後の展望やプライベート時間まで話を聞いた。
(取材日2022年12月6日)
広い空間にこだわりの設備、進化する片頭痛治療に対応
とても開放感のある空間ですね。

開業の際、父から譲り受けた140坪の広い敷地を十分に生かしたクリニックにしたいと考えました。当院は両隣がビルですから、周りに埋もれないように外観や看板の配置に気をつけましたし、広い駐車場も完備しています。さらに院内は、天井を高くして天窓をつけることで、日の光を存分に取り込める明るい空間になっています。また、広さがあることで、院内の設備環境も充実させることができています。全身用CTスキャンやエックス線撮影システムなどの診断機器、物理療法、運動療法などのリハビリテーション機器も導入しています。広い空間と充実した設備は当院の強みでもあります。
脳神経外科以外にもさまざまな診療科目がありますね。
脳神経外科は、脳、脊髄、末梢神経、およびそれに関連する新血管系、筋骨格系の診断、治療をする科目ですので、おのずと幅広い疾患に対応することになります。開業前には脳卒中を中心とした診療に取り組むことが多かったため、高血圧症や糖尿病といった循環器疾患の治療は積極的に進めています。また、以前から携わってきた脊椎と脊髄の診断と治療を行っていく中で地域に高齢の患者さんが多いため、整形外科をあらためて学び、膝や肩の治療も行っています。患者さんの中で一番多いのは慢性の頭痛や頸部痛、腰痛などでお困りの方ですね。
最近の患者さんの傾向があれば教えてください。

頭痛の患者さんが増えていますね。小さい頃から頭痛があって、その状態が当たり前になっていると、頭痛のない状態を知らないので自分が頭痛持ちかどうかわからない患者さんがいらっしゃいますが最近、テレビやメディアを通して「頭痛の時は受診しよう」という啓発が進んでいるため、自身の症状に気がついて来院される方が増えているのだと思います。頭痛の治療はこの10年弱の間に大きく変化しています。例えば、新たな薬剤が出たことで片頭痛はもう完治に近いような状態をめざせる病気になっています。しかし、ある種類の注射薬の使用には制限があって、一定の条件で使わなければいけないため、江東区内では当院を含め限られた医療機関でしか受けることができません。近隣にお住まいで片頭痛に困っていらっしゃる方は、一度ご相談ください。
「何に困っているのか」を知り、患者に寄り添う診療を
発熱症状を診る外来も設けていらっしゃるのですね。

かかりつけの患者さんだけではなく一度でも当院を受診されている患者さんが発熱された場合は、予約をいただいた上で診療しています。幸い駐車場が広いので、その一角にスペースを設けて診ています。脳神経疾患を専門に診るということに変わりはありませんが、地域の皆さんを診させていただくという意味では、今回の新型感染症の感染拡大下で、発熱症状の患者さんを診療しないという選択肢は考えられませんでした。新型コロナウイルス感染症の患者さんに関しては、東京都立墨東病院、東京城東病院との連携を行っております。また、脳神経疾患において検査や高次治療が必要な方に関しては昭和大学江東豊洲病院、順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター、藤崎病院など多くの病院に連携していただき、本当に感謝しています。
診療で大事にされていることは何ですか。
患者さんが「何に困っているか?」をまず考えることにしています。患者さんによっては、ご要望や不安、疑問などを口に出さない方もいらっしゃいます。「何を望んでいるのか」「何が幸せなのか」は人それぞれです。病気を治すこと、腫瘍を取り除くこと、これらは医師にとって当たり前のことです。しかし、必ずしもそれが患者さんにとっての「幸せ」とは限りません。患者さんだけでなく、できればそのご家族とも密にコミュニケーションを取り、私は患者さんのために何をすればいいのかを常に考えるようにしたいと思っています。
先生が医師を志したきっかけを教えてください。

これというきっかけはなく、なぜか中学生の頃には「医師になろう」と考えていました。しかし、医師になってから父に聞いた話によると、私がまだ幼い頃、父が檀家のお寺のお坊さんに「代々の大きな商家なのだから、1人ぐらい医者にしてはどうですか?」と言われたことがあったそうです。今思えば、当時父からその話を聞かされて、医師という職業を意識していたのかもしれません。その後、埼玉医科大学に入学し、勉学以外でも高校時代の先輩に誘われてアメリカンフットボール部に所属し楽しい学生時代を送りました。大学院では、脳幹の電気生理学、特にGABAやセロトニンの自律神経に対する関与をテーマとして研究しました。2000年代にセロトニンに関連する新規薬剤が数多く出されて自分で使うようになると感慨深いものがあります。
なぜ脳神経外科を専門に選ばれたのですか?
神経学は難しいイメージがあり、専門にする学生は少なかったのですが、私は神経学において新しいことを学ぶたびに、「なるほど、こういう考え方をするのか」と感心し、どんどん興味が湧いていきました。神経学には、脳神経外科と脳神経内科、精神科の3つの科目があります。私は手術などの外科的治療が性に合っていると考えて、脳神経外科を専攻しました。すでにメスを置いて20年近いですが、勤務医時代には脳卒中と脊髄を中心に手術もたくさん経験してきました。
病気を診るのではなく「人を診る」医師でありたい
最近、インターネット予約を導入されたとか。

インターネット予約、AIによる事前問診を導入しました。まだもう少し新しいことを取り入れたほうが良いのではないかと考えていて、オンライン診療やキャッシュレス決済も視野に入れています。ただ、当院の特徴として、脳卒中の急性期や頭の外傷など、早急な対応が求められる患者さんがいらっしゃいます。そのような場合は、予約の患者さんをお待たせしてしまうことになりますから、インターネット予約を含め、今後のIT化については、どこまで取り入れるのか模索中です。
地域にとってどのようなクリニックでありたいですか?
「病気を診るのではなく人を診る」医師でありたいと思います。一つ一つの診療にできる限り時間をかけ、患者さんとしっかり会話することを心がけていて、患者さんの背景にある問題点まで踏み込めればいいなと思っています。情に流されることを恐れずに、患者さん一人ひとりに足を踏み入れること、そしてその踏み込み方を間違わないようにしっかり個性を考えること。そのため、家庭環境や職業などもお伺いし、患者さんの普段の生活をイメージしたり、できる限りご家族とお会いして意見を取り入れたりしています。疾患とは関係ない部分に踏み込むことが疾患の治療にもつながり、患者さんの幸せの道を見つけるヒントにもなります。それが 「人を診る」につながると思っています。
休日はどのように過ごされていますか?

コロナが流行して外出の機会が減り、自室で医師会の会報や講演の原稿を書いていることが増えましたね。一番の趣味といえばeスポーツですかね。いわいるネットゲームが好きで、シューティングゲームに興じています。自分でパソコンを組み立てるところから始めて、毎週金曜日の夜はeスポーツを楽しんでいます。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
脳神経外科を標榜する医療機関は数が少なく、人口50万人を抱える江東区でも片手で数えるほどです。どうしたらいいか困っている方もいらっしゃると思います。高齢の方で何科を受診していいかわからない、うまく治療が進まないなどでお悩みでしたら、まずはご相談ください。何らかの突破口が開けるかもしれません。