松尾 寛 院長の独自取材記事
まつお眼科クリニック
(北区/十条駅)
最終更新日:2024/07/30

JR埼京線の十条駅北口から徒歩3分、十条仲通り商店街にある「まつお眼科クリニック」は、緑内障や難治性網膜疾患など専門的な治療を地域に提供する眼科として、2006年に開院した。松尾寛院長は眼科の医師や専門家をめざす人たちが教科書・参考書にしている専門書の著者でもあるが、その人柄はとても親しみやすく、誰にでも優しく接してくれる先生だ。そういった声を聞きつけ、患者は関東全域から集まっている。眼科を専攻する前には精神科の医師をめざしていたという松尾院長。それが現在の、患者満足や個々の患者の考え方を可能な限り尊重する姿勢にもつながっているという。取材では新たに導入した医療機器とその理由のほか、同院の診療方針などについて語ってもらった。
(取材日2019年6月25日/更新日2024年6月27日)
大学病院の治療を十条の地で提供していきたい
クリニックの特徴から伺います。

開院前はさまざまな高度治療、特に緑内障の症例にも数多く接してきました。そうした経験を眼科系の疾患に苦しむ地域の患者さんの治療のために役立てたいと考え、2006年に開院しました。特徴としては設備面を含めて専門性の高さや安全性の高さなど、大学病院のような診療・治療環境にこだわっている点に加え、大学病院との連携をはじめ小回りの良さやきめの細かい対応など、開業医ならではのメリットを生かしているところですね。特に手術機器は、一定の評価を得ている新しいものの導入に努めています。現在、当院で使用している機器は世界水準で見ても高性能で、安全かつ低侵襲での手術が期待できる点が特徴です。
院内はバリアフリー設計になっていますね。
目が不自由な患者さんに安心して来院していただけるよう、待合室・受付・診療室、トイレと、すべてをバリアフリー設計にしたのです。また医療設備については、白内障や緑内障の日帰り手術に対応するためのオペ室を備えました。また、緑内障の早期発見や経過観察に役立つ自動視野計、緑内障だけではなく糖尿病網膜症、後発白内障などの治療にも対応している各種レーザー治療機器、目の調節機能を調べる調節機能解析装置、手術前の各種予備検査から術後の改善度などを測定する機器などを備えています。これらのおかげで通常の外来診療に加え、白内障を中心とした日帰り手術をハイレベルに提供できていると考えています。
そのほかにも新たな機器を導入されたと聞きました。

緑内障の視野検査データを統計処理しわかりやすくグラフ表示して、患者さんにも病気の進行具合を見てもらえるシステムソフトを導入しました。これは私にとって、東京大学の外来でも使い慣れているものです。どの部分が悪くなっているかも視覚的にわかりやすく理解できるので、現在の治療のままでいいのか、あるいは進行しているので外科手術も考えなければならないのかなど、人生100年時代を見据えてより正確に診療内容をお伝えするために役立っています。さらに先進のOCT(眼底三次元画像解析装置)も導入しました。OCTの導入により、これまで以上に緑内障の早期発見が期待できるようになりましたが、この装置により近年急増している加齢黄斑変性などの診断精度もさらに高くなり、多くの診療実績を上げています。
先進の装置を駆使して、現代人の多様な目の悩みに対応
「調節機能解析装置」による診察も特徴かと思います。

この装置は、使い方が難しいため使いこなすのは容易ではありません。機械が導き出したデータをどう解釈するかは、やはり眼科医師の経験則・技術力にかかっているからです。これは、眼鏡やコンタクトレンズをつくる際に、どの度数がその人にとって目のピントをつかさどる毛様体筋を疲弊させず最適なのかなどを検知するための機器です。現代人はスマートフォンやタブレットの使用により、これまで以上に毛様体筋に負担をかけていますし、そもそも合っていない眼鏡やコンタクトレンズを使用されているケースも多いですから、一度は目の健康診断のつもりで検査を受けられることをお勧めしたいです。
最近は、子どもの近視管理にも目を向けておられますね。

最近、スマートフォンやタブレットが身近となり、長時間動画を視聴するお子さんも増えてきたこともあり、やはりお子さんの近視に関することは無視することができませんね。いつも近くで見守っているわが子であったとしても、お子さんの目の見え方は親にはわかりませんし、特に近視はゆっくりと進行していきます。当院は、近視を進みにくくするような生活指導やアドバイス、管理にも注力していますので、お子さんの目の状態を把握するためにも一度ご相談いただければと思います。
多様化するニーズに真摯に向き合っていきたい
診療において大切にされていることは何でしょうか?
診療を終えて帰るときには、患者さんには安堵の笑顔で帰っていただきたいという思いが根底にあります。私は玄関まで見送れないですから、その部分はスタッフに頼るしかない。幸いスタッフは目が不自由な方やつえをついた方などに付き添いながら自発的にお見送りをするなど、よく気がつき優しい心を持っているスタッフばかりです。院長の私としても、たいへん恵まれているなといつも感謝しています。開院以来働いて、出産休暇明けにまた戻ってきてくれたスタッフもいますし、意思の疎通という面でも「院長ならそうするだろう」ということを私に尋ねるまでもなく患者さんに対して想い、行動してくれています。患者さんからお褒めの言葉をいただくことが多く、当院のスタッフは私の誇りです。
診療ポリシーをお聞かせください。

医療技術は日進月歩ですが、新しい治療法がすべてにおいて優れているわけではないです。例えば白内障の新しい治療法で老眼鏡さえ不要になると聞けば、患者さんはそう思い込んでしまうかもしれません。でも実際には老眼鏡が不要とならないケースや、遠近は確かに見やすくなったけれども生活の中で一番大切な中間距離がぼやけてしまい、あわててセカンドオピニオンを求める方がいるのが現状です。手術となれば、どんなに医師の技量が高くとも、100%リスクがないということはありえません。ですから私は患者さんにご説明するときには、この術式にはこういうメリットがあり、ごくごくわずかだがこういうリスクもあるというように、メリットとリスクの両面について、その発症頻度もあわせて必ず私自身でお話をします。さらに、リスクを最小限に抑えるための技術面については「私が責任を持つので安心してほしい」とお伝えするようにしています。
そもそも先生が眼科の医師になろうと思われたきっかけを教えていだけますか?
実は、高校時代には心理学に興味を覚え、臨床心理士やカウンセラーをめざそうと考えたのです。でも勉強していくと、やはり服薬治療などを同時に行っていかないと、カウンセリングだけで完全に精神疾患を治すことは難しいという現実を知り、最終的に精神科の医師をめざすべく、医学部に入学しました。ところが実際に医学部に入学してさまざまな診療科を経験してみると、精神科よりも、むしろ手術などによって疾患の治癒の白黒がはっきりとつく診療科のほうが自分には向いていると感じ始めました。実は当時は白内障の手術の黎明期で、まさに手術を終えた患者さんが両手でVサインをつくって退院していくという時代だったこともあり、その姿を実際に見て、これほどまでに患者さんに喜びを与えられる診療科は眼科以外にないと思い、最終的に眼科の医師になることを決めました。
最後に患者さんに向けたメッセージをお願いします。

これからも最新の知見を学術大会や論文などでアップデートしながら、安全性・有効性に十分配慮した治療を提供していきたいと思っています。また現在は患者さんの希望やニーズもすごく多様化していて、やって当然と思われていた治療に関しても「必要ない」とおっしゃる方もいます。私はまず目の前の患者さんの声によく耳を澄まして、受け止めることが大切だと考えています。また、多様化したニーズには医師からの押しつけではなく、できるだけ患者さんの人生観や考え方に寄り添い、よりヒューマナイズされた医療サポートを提供していきたい、そのためには医学を越えての勉強も続けていかなければならない、そう考えています。