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篠遠 彰 院長の独自取材記事

篠遠医院

(板橋区/本蓮沼駅)

最終更新日:2022/06/30

篠遠彰院長 篠遠医院 main

都営三田線本蓮沼駅近くの「篠遠医院」では、一般的な症状や生活習慣病を主とする内科と、専門的な分野まで診療可能な整形外科を開設。両分野を総合的に診る篠遠(しのとお)彰院長は、「運動器障害で日常生活の活動量が減ると、内科の病気にも影響するなど関連する部分も多いのです」と話す。「父から受け継いだ当院は地域密着の医療が中心。加えて、私の専門である側わん症の診断・治療も行うのが特徴です」。多職種と連携した在宅医療にも取り組む篠遠院長に、地域医療への熱意、同院の特徴などを詳しく聞いた。

( 取材日2022年6月13日)

内科と整形外科を総合的に診られるのが強み

このクリニックの地域での役割をお聞かせください。

篠遠彰院長 篠遠医院1

当院は私の父が1953年に開院し、地域に根差した診療を続けてきたクリニックで、1990年から私が院長となりました。父も整形外科が専門でしたが何でも屋さんでした。整形外科を専門とする私が内科の患者さんも多く診ているのは、その流れを受け継いだため。高齢になると、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病に加え、骨粗しょう症や関節の痛みなど整形外科の病気をお持ちの方も多くなります。しかも手や足のスムーズな動きを妨げる運動器障害によって日常生活の活動量が減ると、食事や運動の習慣に影響して、生活習慣病をはじめ内科の病気を悪化させるケースもあるのです。その意味で、私が両方の分野をトータルに診られるのは強みの一つと考えています。

診療面の特徴を挙げていただけますか?

内科では風邪や腹痛をはじめ一般的な症状や生活習慣病を中心に診ています。動脈硬化の検査装置を導入したのは、患者さんの健康管理はもちろん、動脈硬化と似た足の痛み・しびれなどの症状を示す脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)との鑑別診断にも役立つからです。実は私の父が脊柱管狭窄症との診断で手術の準備をしていたところ、腹部に動脈硬化による大動脈瘤が見つかり、そちらを先に手術したところ間欠性跛行の症状が消失してしまい、脊椎手術が不要になりました。この経験をもとに動脈硬化の検査を積極的に行うようにしました。このほか、脊柱側わん症という病気の診療早期発見と治療にも力を入れています。これは脊柱が右または左に曲がる病気で、本人は自覚しづらいので、早期発見には周囲の気づきが必要です。

骨粗しょう症の予防や治療も重視されると伺いました。

篠遠彰院長 篠遠医院2

骨粗しょう症は加齢により骨密度が減ったり骨がもろくなったりして、骨折しやすくなる病気です。例えば脊柱の圧迫骨折で連鎖的な骨折が起きれば、寝たきりや要介護の原因にもなります。早期発見と治療による進行の抑制がたいへん重要で、骨密度の検査を定期的に受けていただければと思います。日本骨粗鬆症学会が出している治療ガイドラインによると、2015年の時点では患者数は1280万人で、男性300万人、女性980万人と、圧倒的に女性が多い病気。このため板橋区では40歳以上の女性に受診券を配っており、それが受診時期の目安になるのではないでしょうか。基本的な予防法はカルシウム、ビタミンDなど含む骨を丈夫にする食事と日光を浴びることです。さらにスクワット・片足立ちなどの運動で転倒しにくい体づくりを心がけてください。若くても骨を弱くしやすい不適切なダイエットは禁物です。

側わん症を保険適用の矯正装具着用で治療

改めて脊柱側わん症について教えてください。

篠遠彰院長 篠遠医院3

脊柱の一部が左右どちらかに曲がりねじれる病気が脊柱側わん症です。ほとんどが原因がよくわからない特発性側わん症で、小学校の高学年から中学生くらいに発症しやすい病気です。この年代の側わん症では女児が男児の5倍から8倍多く、背骨が曲がる角度が大きいほど女児の割合が増加。弯曲が見つかるのは全体の3%ほど、経過観察が必要なお子さんは全体の1%程度といわれます。痛みなどの症状はほとんどないのですが、脊柱の曲がりを気にして積極的になれないなど、メンタルや社会活動への影響も懸念されます。また、進行して曲がり具合が大きくなるケースでは、胸郭全体がゆがみ、呼吸器や循環器への影響も考えられます。高齢になって椎間板変性などが進むと、神経を圧迫してしびれや痛みといった神経症状を起こすこともあります。

側わん症はどういった経緯で見つかるのですか?

自覚症状に乏しい病気なので、見つかるのは学校での健康診断やご家族による気づきがほとんどです。近年スタートした学校での運動器検診では、ご家庭に配布されたチェック表でお子さんの脊柱の曲がりなどを確認し、その後に学校医が詳しく診るという連携も行われています。ただ、ご家族も学校医もこの病気の専門家でなければ見逃しも起こり得ます。思春期のお子さんがご家族の前で裸になるのを嫌がることも、発見が遅れる要因の一つです。なお、立ったままでは脊柱の曲がりがわかりにくいため、上半身裸で立ち、そのまま大きくお辞儀するように上半身を前に倒してもらった状態で、ご家族が背骨の曲りやねじれによる背中のゆがみを確認するといいでしょう。

どのような治療方法がありますか?

篠遠彰院長 篠遠医院4

症状が軽ければ運動療法を続けて経過を観察し、曲がりが進むなら矯正装具による治療に移るのが一般的です。体の成長が著しい時期は睡眠中も含めなるべく長時間の装着が望ましいでしょう。とはいえ、入浴中や学校での体育では外しますが、そもそも学校では外しておきたいといった希望も出てきます。その辺りをご本人とご家族でうまく調整して、装着を続けていただくことが大切です。当院では装具製作の1ヵ月後に装着の状態や矯正効果を確認し、その後は4ヵ月に1回のペースで通院。体の成長や弯曲の程度に合わせて装具を調整していくことになります。こうした治療は通常の保険診療に含まれますが、一部で保険外での施術で高額な費用を払われた方もあると聞きます。健康保険の範囲内での治療も十分可能ですから、専門の医師に相談するようお勧めします。

健康寿命を延ばし、みんなが生き生きと暮らせる地域へ

先生がこちらに来られるまでの経緯をお聞かせください。

篠遠彰院長 篠遠医院5

私は千葉大学医学部で、バスケットボール部とスキー部に所属してスポーツ医学に興味を持ち、整形外科やスポーツ分野の医師をめざす先輩がいたことなどで、整形外科を専門にしました。卒業して千葉県の公的病院に勤務した後、母校の大学院で側わん症を専門に研究し、修了後は公的病院や千葉大学医学部附属病院で診療経験を積みました。脊柱側わん症の国際的な勉強会に参加した縁で、カナダのオタワ大学に留学。帰国後は母校の関連病院で整形外科医長になり、診療と若手医師の育成に従事しました。その後、帝京大学医学部附属病院で講師となりましたが、父が体調を崩して当院を手伝うようになり、自分と医療の関わり方を改めて考える機会を得たんです。やがて、父のように地域に密着した医師をめざすようになり、1990年に当院の院長に就任しました。

板橋区医師会での活動にも積極的と伺いました。

地域の医療機関との連携を深め、地域密着の医療に従事したいとの思いで、院長就任時から板橋区医師会に入りました。医師会の活動は地域への啓発活動、学校医など教育関係での医療活動、区の行事への参加など幅広く、地域医療への意識がさらに深まりましたね。さまざまな社会制度による支援を患者さんにご紹介できるなど、こうした経験は診療にも生きています。また、医師会で培った他の診療科の先生方、福祉・介護関係の皆さんとの人脈も非常に貴重で、最近はそうしたつながりから、多職種連携で難病の患者さんの訪問診療も行っています。各分野の専門家に直接教えていただけるので勉強にもなり、特に介護分野を知ったことで、患者さんの生活に密着した関わり方もできるようになりました。

最後に地域の方にメッセージをお願いします。

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当院の目標は地域の皆さんの健康寿命を延ばし、生き生きと暮らす方を増やすことです。そのために患者さんの話をよく聞き、目の前の病気を治療すると同時に、将来の健康リスクまで考え、必要な生活習慣の改善指導にも取り組むつもりです。そして医療と介護の連携を深め、一人ひとりの健康を地域全体で支える社会づくりへの貢献をめざしています。整形外科の医師として皆さんに特にお伝えしたいのは、「元気で長生きのキーポイントは筋力の維持」という点。筋力の衰えは運動器の働きにも影響しますから、食事と運動で筋力を維持し、活動的な生活を心がけていただきたいですね。関節や筋肉が硬くならないよう柔軟性を保つことは病気やケガの予防にもつながります。

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