中野 栄子 院長の独自取材記事
春日町眼科
(練馬区/練馬春日町駅)
最終更新日:2022/12/26
都営大江戸線・練馬春日町駅A3出口から徒歩1分。「春日町眼科」は1999年の開業以来、地域の力となってきたクリニックだ。穏やかで優しい笑顔が印象的な中野栄子院長は、常に新しい知識を学び取り入れながら、小児から高齢者まで幅広い年代の目のトラブルに対応してきた。地域の眼科医師会の活動にも熱心で、かつては区の3歳児健診の他覚的屈折度測定装置導入に尽力。弱視の発見率向上に大きな役割を果たし、近年は通院が難しい高齢者のために、眼科では珍しい在宅医療にも注力している。日々研鑽を積む心強いスタッフととともに診療に取り組む先生に、さまざまな話を聞いた。
(取材日2022年9月21日)
練馬区の3歳児健診の他覚的屈折度測定装置導入に尽力
どういった経緯で春日町で開業なさったのでしょうか。
ここはもともと祖母がアパートを経営していた場所で、小学生の頃、祖母についてお掃除に来たりしていたんです。当時は豊島園からバスで通っていました。その後私は大学を卒業して眼科医になりましたが、息子が小学生になって勤務医を続けるのが難しくなった時、ちょうど大江戸線が開通し、駅前になったこともあって、ここで開業することを決めました。小さい頃の記憶と比べると、大江戸線ができ、大きなマンションも建って、街は随分にぎやかになったと思います。
患者さんはどういった方が多いのですか?
小さなお子さんとご高齢の方が多くなっています。お子さんでは、練馬区は3歳児健診が浸透している区なんですよ。都内でも早くからハンディタイプのレフラクトメーター(他覚的屈折度測定装置)を取り入れ、目の屈折力や眼位を測定し、視能訓練士も入って、すべての3歳児にスクリーニング検査をしています。この視機能に問題がないかがすぐわかる機器を取り入れたおかげで、弱視が発見しやすくなりました。弱視というのは見る機能が成長していない目のことで、見える目にしていくためには、小学校の低学年頃までに治療をしていくことが大切。逆に言えば、小さい頃から眼鏡をかけて訓練していくことで、見えるようにしていきます。その必要性を確認する意味でも、大切な検査ですね。
3歳児健診への機器導入には先生が尽力されたそうですね。
眼科医師会の活動として行いました。3歳児健診については、最初は区のほうから視能訓練士を入れて検査をしたいので、訓練士を探してほしいという依頼が来たのですが、なかなか対応しきれない状況で。ちょうどコンパクトなレフラクトメーターが普及し始めたところだったので、導入をお願いしたら、すぐに入れてくださいました。今練馬区には6ヵ所保険相談所がありますが、最初は2台だったのがだんだん増えて、今はどこの相談所にも設置されています。国から助成金も出るようになり、全国的に普及するようになりましたね。
積極的に、来院が難しい患者の在宅医療に
眼科では珍しい在宅医療もなさっていると聞きました。
ご高齢になるとどうしても来院が難しくなり、「お薬だけほしい」とおっしゃる患者さんが増えてきました。でもお薬だけ処方することはできませんから、「じゃあご自宅に診療に行きますよ」ということで始めました。最初はお昼休みを利用して診ていたのですが、代診をしてくれる後輩の先生が見つかり、今年2月から月曜午前中を在宅医療にあてています。もともと当院で診ていた方はいいのですが、新しい患者さんの場合、基本のデータがないので、情報を集めるところから始めます。ご家族を含め、知らない医師が家に来るのはやはり緊張なさると思うので、少しずつなじんでいく時間も必要です。できれば大勢の先生方が在宅医療を行ってくださればと思い、医師会でもいろいろ動いていますが、先生方もお忙しいですからね。そのあたりが今後の課題でしょうか。
在宅医療の患者さんの反応はいかがですか?
お二人とも見えにくくなっていたご夫婦など、動くことが難しい患者さんには貢献できてるなと思います。それが何よりうれしいんですよね。視野検査はクリニックでないと難しいけれど、視力は近距離での検査経過を診るなど工夫をし、機器もたいていはそろえました。「眼鏡をたくさん持っているが、どれが今の視力に合っているのかわからない」とおっしゃる患者さんには、クリニックに持ち帰って全部の眼鏡のデータを取り、「これがいいですよ」とお教えしたり。そういったことも眼科できちんと視力を検査していればスムーズに進むので、ご高齢の方は体が元気なうちに一度眼科医院へ行って検査をし、ご自分の状態を把握しておくといいですね。
診療の際、大事にしているのはどういったことですか?
1つはなるべく丁寧にわかりやすく説明をすることです。お薬も出しっ放しではなく「効かなかったらまた来てください」とお伝えし、あらかじめ経過の予測もご説明するよう心がけています。もう1つは勉強をすること。医学はどんどん進んでいますから、新しい情報をちゃんと患者さんに届けられるよう、意識して勉強していますし、スタッフにも新しい知識を身につけるようお願いしています。患者さんは医師の私でなく、スタッフに尋ねてみたりするでしょう? その時きちんと答えられるためにも必要なことだと思っています。それに、患者さんとスタッフのそういった会話も診断の手助けになるんです。スタッフも皆忙しいことは承知しているのですが、言われたことだけやっていても仕事は面白くないと思うんですよ。一生の仕事とするなら自分で考えて行動したほうが楽しいし、長続きしてやりがいにもつながります。
きびきびとしたスタッフさんがそろっている印象を受けました。
日々の診療は私1人ではできず、スタッフにとても助けられています。例えばご高齢の方で、お体は元気だけれど少し認知症かなという患者さんの場合、診察している間はわからないんですね。でも、受付や検査のスタッフが気づいて知らせてくれたりします。今度はその患者さんをどうフォローしていくか。ご家族がいればご連絡してアドバイスしますし、最近はご家族のいない一人暮らしの方が増えています。そのときは区の相談員をお願いして、ご親族を探していただいたり、大きな病院に付き添っていただいたり。そういったことはすべてスタッフがやってくれています。スタッフの安定した仕事のためには、働きやすいことが大事なので、半年に1回は面談して、お家のことなどそれぞれの状況も把握しています。
気持ちの問題が見え方を左右する
心のケアも大事にしていらっしゃるそうですね。
以前の勤務先で、若い女性の患者さんの診療をした時、免許が必要なお仕事で書き換えに行かないといけないのに、目がよく見えないとおっしゃるんです。でも視力はちゃんと出ている。「大丈夫だから、受けに行ってらっしゃい」と送り出したら、やっぱりちゃんと合格しました(笑)。きっと強いストレスがかかっていたのでしょうね。「受かりました」と笑顔で報告に来てくれたのが忘れられません。目は敏感な器官で、気持ちが左右するところもあります。目に問題がないとき、話を聞いて差し上げることが助けになることがありますね。
先生が実践している健康法があれば教えてください。
大きな病気をするまでは、ほとんど何も考えず、食卓には息子の好きな肉料理ばかり並べていました。でも病気をして食生活は野菜と魚中心にし、あまり好きではない運動も始めました。今はホットヨガに週3回ぐらい通っています。元気な時は診療が終わってから行くこともありますよ。あとは朝の散歩でしょうか。病気をして少し落ち込んでいる時、主人が散歩に連れ出してくれたのが始まりです。私が元気になったら「歩調が合わない」と言って一緒に行ってくれなくなったんですが(笑)。主人は開院後に視能訓練士の資格を取り、クリニックの事務長も兼ねながら診療を手伝ってくれています。公私ともに支えてくれる頼りになる存在ですね。
今後の抱負をお聞かせください。
いずれ、クリニックでの診療は誰かにお願いして、私は在宅医療を続けていけたらと考えていますが、それまでしっかり診療を続けたいですね。今の時代、多くの方がパソコンや携帯で目を酷使していると思います。目に負担をかけないため、眼鏡やコンタクトレンズの度数が合っているかがとても大事。基本の基本と言ってもいいでしょうね。「見えればいい」ではなく、一度眼科できちんと診察を受け、目を楽にする度数を知っていただきたいです。そして病気にかかっていないかどうかもチェックしてください。早期発見で大事に至らないこともあります。ぜひ近隣で行われている検診を受けてください。