菊地 淑人 院長の独自取材記事
医療法人社団晃啓会 きくち整形外科
(調布市/つつじヶ丘駅)
最終更新日:2024/06/24

東京都多摩地域にあり、都市化が進む調布市。名物のそばや植物公園などの観光地で知られる深大寺周辺は、市内でものどかな街並みが多く残る。そんな深大寺から少し離れた、緑豊かで落ち着いた場所にあるのが「きくち整形外科」。院長の菊地淑人先生は、勤務医時代に生活を始めた穏やかなこの街に親しみ、2006年に開業した。専門とする手外科の治療を行いながら、地域医療、さらには介護サービスへの取り組みを強め、2010年より訪問リハビリーテーション開始し、2016年には通所リハビリテーションを開設。患者の希望やニーズをスタッフとともに丁寧にくみ取り、健康寿命を支えるためにまい進する菊地院長に話を聞いた。
(取材日2018年4月2日/再取材日2024年5月16日)
建築家志望から医学部へ。整形外科との共通点は
開院までの経緯について教えてください。

2006年10月にオープンしましたので、18年目にあたります。僕は調布市生まれではないのですが、勤務医時代から長い間この辺りに住んでいた縁もあり、先輩開業医より紹介を受けてこの街での開業を決めました。調布市は東京都内でありながら自然が多く残り、かつ比較的都心からも近い便利な土地で、とても気に入っています。近くに新しいマンションや分譲住宅が建ったからか、若い世代やお子さんの数も増えてきています。近隣には1学年9クラスもある中学校があるんですよ。都内でもお子さんの多い地域だといえるのではないでしょうか。ですから学校帰りのお子さんも含め、老若男女いろいろな世代の患者さんを診察しています。この地域には古くから住んでいるお年寄りも多く、患者さんにも高齢者の姿が目立ちます。最近では90代の方がだいぶ増えてきた印象ですね。
幅広い患者層とのことですが、症状も幅広いのでしょうか。
そうですね。手外科を専門にしているので、手の症状を訴える方は多く、あとは首、膝、肩、足のトラブルなど、満遍なくいらっしゃいますね。患者さんの高齢化に従って、骨粗しょう症も多く診療しています。背骨の圧迫骨折やちょっと軽く尻もちをついたくらいで骨折するなんてケースもあるので、骨折がきっかけで骨粗しょう症の治療を始める方が多いでしょうか。女性の場合は閉経後にリスクが高くなるため、その年代の方へは検査の啓発なども行い、健康寿命を延ばすためにも、骨粗しょう症に関してはしっかりと治療しています。
菊地院長が医師をめざしたきっかけを教えてください。

実は医学部志望ではなく、建築家になりたかったんです。しかし開業医となり、多種多様な患者さんと接していくうちに、治療の過程をつぶさに見守ることがうれしく、今では天職だと思っています。整形外科を選んだのは、人体の骨格に関わる診療科ということで、どこか建築に近いものを感じたことも要因としてありますね。それと僕は学生時代からずっとスポーツをしていたので、整形外科のお世話になることが多く、自然と親しみを感じていたようです。
通所リハビリで医療と介護サービスの連携に取り組む
通所リハビリについて教えてください。

通所リハビリは2016年から実施しています。これは医療保険での外来リハビリとは異なり、介護保険認定を受けている方が対象です。専用施設を3階に設け、マシンを使った運動に加え、天井に固定したロープを使い自重で無理のない負荷をかけながら行う集団体操や、個別リハビリを組み合わせたメニューを行います。参加される皆さんが各自の目標に少しずつでも近づけることをめざしています。要介護の方に対しては、午前と午後の2回制で、1回につき3~4時間程度のプログラムを提供し、送迎サービスもご用意しています。要支援の方に関しては、送迎はできないのですが1日4回制で行っています。クリニックと同じ建物内にあるので、具合が悪くなった時などはすぐに診療で対応可能です。スタッフは、送迎車のドライバー3人、理学療法士3人、作業療法士1人、柔道整復師1人、介護スタッフ6人が在籍し、多職種が連携して利用者をサポートしています。
なぜ通所リハビリを始めようと思われたのですか?
現在の国の方針は、長期のリハビリを必要とする患者さんは、医療から介護サービスに移してサポートしていこう、というものです。そのため、外来リハビリがある一定期間を超えると、デイケア施設やデイサービスでのリハビリに切り替えることになり、クリニックを離れていきます。僕は医師として患者さんを末長く継続的に診ていきたいという気持ちが強かったため、この場所でリハビリを続けられることを、喫緊の課題と考えていました。その答えが、クリニックに通所リハビリを併設すること。幸い、同じビルの3階が空いていたので、理想的な方向性で実現することができました。開業した頃は、まさか自分が介護の領域に足を踏み入れるとは思っていませんでした。地域で暮らすたくさんの方が長期のリハビリを必要としている現状にふれる中で、自分にできることは何だろうと問い直し取り組むことで、医療と介護の連携について視野が広がったと感じています。
訪問リハビリも行っているそうですね。

2010年ごろ、当院の理学療法士が「訪問リハビリをやりたい」と希望してくれたので、最初はスタッフ1人でスタートしました。患者さんがどうやって家で過ごしているのか、普段の生活環境を見た上でサポートしたい。通院できなくなった患者さんを何とか支えたいと考えたようです。訪問リハビリはクリニックでのリハビリと違い、ご自宅の状況に合わせたプログラムを行うことで、日常生活を直接的に改善する効果があると思っています。昨今では、患者さんがご高齢になって通えなくなる方も増え、訪問リハビリのニーズの声をたくさんいただいており、2名のセラピストで対応しておりますが、残念ながらご希望される方すべてには応えられていないというのが正直なところです。
難しいとされてきた「手外科」の専門性で強みを発揮
ご専門は「手外科」ということですが、どのような症状の方がいらっしゃるのでしょうか。

「手外科」の医師は少なく、都心や八王子市など遠方から通われる方もいます。そのような患者さんは、腱鞘炎や手根管症候群による手のしびれなど、一般整形外科や他の診療科を受診しても診断がつかなかったり、症状が治らなかった方が多いようです。整形外科はお年寄りの病気や子どものケガが多いと思われがちですが、中年期の女性、特に50歳前後になると、手のしびれや手指の痛みなどが出たりすることがあるので、そうした訴えの患者さんもよく来られます。以前、50代の女性に多いヘバーデン結節に関する本を監修したことがあるため、それを見て来てくださる方もいます。「歳のせいだから、しょうがないですね」と言われたという話も耳にしますが、手外科の専門家としてのこだわりがあるので、しっかりと対応させていただています。
手を専門にされたのは、どういった理由からでしょうか?
手の治療に関しては良い結果が得られないことも多いことから、「ノーマンズランド(no man’s land)」といわれ、手をつけないほうがいい分野とされていたこともありました。しかし、やはり手はすごく大事な器官ですので、そのケアができるようになりたいと興味を持ったことがそもそもの理由ですね。手に関する症状であれば、これまでの経験からどのような治療法が適切か、何かしら提案できると思います。手術が必要な患者さんに対しては、手外科分野の手術を行える先生のいる総合病院を紹介し、術後の処置やリハビリを当院で引き受けるケースも多いですね。繊細で複雑な動きをする手のことですから、患者さんは不安だろうと思います。手術が必要なのか、ギプスなどの保存的治療を選ぶべきか。まずは診察を受けていただき、患者さんにとってより良い方法は何か、慎重に考えながら治療にあたっています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

整形外科の疾患の原因やお困りになっていることは、生活習慣やお仕事内容とも密接に関わってきます。ですから診察時には症状だけに目を向けるのではなく、その方の背景も含めてお話を伺って、総合的に判断し治療するようにしています。幅広い症状に対応していますが、先ほどお話したように手外科に関しては僕の専門分野です。手の疾患は積極的な治療があまりされずに、痛みや違和感を我慢しながら生活している方もたくさんいるようです。そんな方でも、来ていただければ何かしらのアドバイスや治療の提案ができるのではないかと思いますので、ぜひご相談ください。