安藤 良将 院長の独自取材記事
武蔵野眼科
(武蔵野市/三鷹駅)
最終更新日:2023/02/07

三鷹駅から歩いて3分の場所にある「武蔵野眼科」は1956年の開院以来、地域に根づき幅広く診療を行う眼科クリニックだ。町のクリニックとして患者の目に関する悩みに寄り添いながら、他院とのスムーズな連携で手術や重篤な症状にも対応する。安藤良将院長は主にぶどう膜炎疾患の診療に携わる医師。2023年1月より同院の院長に就任した安藤先生は「新たな取り組みにもチャレンジしていきたい」と意欲を燃やし、特にロービジョンケアやテクノロジーの活用に注力していきたいと話す。自分の目を知るきっかけになればと、情報提供にも熱心で、どのような症状であっても、現状や治療プランについてしっかり伝えるよう心がけているという。今回は安藤先生に、これまでの経歴や院長就任にあたっての抱負を聞いた。
(取材日2022年12月5日/更新日2023年2月2日)
眼科診療と網膜・ぶどう膜炎疾患の専門的な治療を経験
先生のこれまでの経歴をお聞かせください。

2010年に岩手医科大学を卒業後、新潟市内にある済生会新潟第二病院で勤務しました。そちらは診療科が多く、総合的な医療を提供する病院です。患者さんの年齢層も幅広く、網膜剥離など重い疾患の患者さんもいらっしゃいました。眼科では私の父が部長を務めており、そのもとで2年間、眼科の基礎を学び、主に入院患者さんの診察に携わりながら父が専門としていた糖尿病黄斑浮腫に対する治療・研究を深めました。その後、2012年に杏林大学医学部付属病院に移りました。当時そちらの医局長を務めていたのが、当法人の現理事長である今野公士先生です。そのご縁で、2022年の4月よりグループ内の八王子友愛眼科で勤務を開始しました。今野先生と私は年齢は一回り離れていますが、同郷で偶然にも同じ中学校の出身なんですよ。
杏林大学医学部付属病院ではどのような疾患を診てこられたのでしょうか?
杏林大学医学部付属病院の眼科は、重篤な患者さんにとって最後の砦ともいわれていて、全国から患者さんがいらっしゃいます。網膜硝子体・黄斑変性・角膜・ぶどう膜炎・緑内障・小児眼科・眼窩・神経眼科・ロービジョンと、眼科の中でも分野が細分化されていて、それぞれの分野の第一線で活躍する先生方から専門的な医療を学びました。そして網膜剥離やぶどう膜炎、緑内障、視神経炎など失明につながりかねない病気、角膜移植などの治療にも携わってきました。済生会新潟第二病院勤務時には、目のあらゆる疾患に幅広く対応することを求められた経験もあり、杏林大学医学部付属病院でより専門的に知識を深めることができたと感じています。これらの経験は、目のことで困ったことがあったら何でも相談にのれるような医師をめざす私にとって大きな財産です。
2023年の1月に院長に就任されたと伺いました。

はい、そうです。当院は1956年開院なので、65年以上の歴史があります。今でこそ、この辺りにも眼科が増えましたが、開院当時は「眼科といえば武蔵野眼科」という感じで、当院しかなかったと聞いています。長い歴史の中で武蔵野市に根を下ろし、地域の皆さんから慕われるクリニックを築き上げて今があります。開院からの65年間で、世の中は大きく変わりました。地域の皆さんに寄り添う姿勢は大切に守りつつ、時代の流れを見据えた新たな取り組みにも積極的にチャレンジしていきたいと思います。
テクノロジーを活用し、時代に合った医療を追求
院長に就任し、どのような分野に力を入れていきたいとお考えですか?

今後の展望としては、ロービジョンケア。失明はしていないけれど視力が非常に低い患者さんに対しての、快適な生活のサポートです。設備等、これから準備を進めていきたいです。もう一つは情報提供。医師の立場から地域の皆さんにわかりやすく情報を発信していきたいと思います。私はグループ院である八王子友愛眼科でも診療にあたっていますし、当院の近くには杏林大学医学部付属病院をはじめ、設備や人材の整った医療機関がいくつもあります。手術や重篤な症状はこういった外部との連携をとって対応しながら、患者さんの生活に寄り添った医療を提供するのが当院の立ち位置と考えています。専門分野にとらわれず幅広い症状に対応しながら、テクノロジーを積極的に活用していきたいですね。
テクノロジーといえば、最近は「デジタルヘルス」という言葉をよく耳にします。
デジタルヘルスとは、PHR(パーソナルヘルスレコード)やEHR(エレクトリックヘルスレコード)などのデジタル技術を活用し、予防から治療、回復まで管理することです。一人ひとりの生活や体調をデータで管理することで、その人の変化や不調に気づきやすくなります。しかし眼科には、ここで一つクリアしなければならない壁があります。情報の数値化です。「患者さんの主訴」は、感じ方も表現も個々それぞれで実に曖昧なものですから、具体化する必要があります。解決策としてアプリの活用などさまざまな案が考えられますが、クリニックならではのフットワークで、時代に合った医療を追求したい。「デジタルヘルス」への取り組みは眼科の医師としての、これからの私のテーマです。
ロービジョンケアについても詳しく教えてください。

医療は魔法ではありません。眼科に限らず他の病気でも治療の限界はどうしてもあって、その先はいかに日常生活を送るかのフォローになるのが実情です。「問題ない」という安心感だけではなく、もう少し踏み込んで、生活上の不便の改善に努めるのがロービジョンケアです。視覚に障害がある患者さんにとって最初の課題となるのが「読む」ことと「移動する」こと。杏林大学医学部付属病院の医師にも協力を仰ぎ、拡大読書器の活用や白杖の訓練に取り組んでいます。
自分の目の状態についてもっと知ってほしい
先生が情報提供に力を入れる理由についてお聞かせください。

皆さんに、ご自身の目について知ってほしいからです。問題なく見ることができるのは、ほとんどの方が30代まで。40代を過ぎると老眼が出始め近視も進みます。「眼鏡をかければ解決」と思われる方も多いのですが、眼鏡をかけてもすべてがクリアになるわけではありません。目の構造についてももっとお伝えしていきたいですね。ご自身の目の状態を知ることはとても大切です。今現在どのような状態にあるのかを知っておくことで、もし異常が起こった際にすぐに気づくことができるのです。患者さんには、診断内容や治療についての所見をしっかりと伝えるようにしています。ご自身の目がどのような状態なのか、どのような治療法があるのか。もし重篤な症状だとしても、すべて知った上で前向きに進んでほしいのです。その先にロービジョンがありますから。残っている機能を使ってどう生活できるかを一緒に考えますので、諦めずに希望を見出してほしいです。
この先、眼科医療はどのように発展していくと思われますか?
眼科医療はこれから、遺伝子や再生医療の領域にも踏み込んでいくでしょう。先ほどの話にも通じますが、その方の病状により「ここまで」という限界があり、手術はその目的に向かうための一つの手段に過ぎません。またテクノロジーが発達した現代では、VRやAR、タブレットの音声機能などを使ったアプローチも可能です。失った機能を補うための手段としての、手術・再生医療・テクノロジー。その中から患者さんが選択して選べる時代がもう見え始めていると感じます。
最後に、読者にメッセージをお願いします。

スマートフォンの普及も影響してか、目の不調を感じる方は増え続けています。その中には、患者さんが「病気ではないか」と不安に思っていた症状が、ご自身のもともとの目の特性だったというケースも多いです。反対に、何も問題はないと思って検診に来てみたら病気が見つかったということも少なくないでしょう。「見る」というのはとても複雑なことなので、患者さんとのコミュニケーションを大切に、わかりやすい説明を心がけています。ご自身の目について知るためにも、気になることがあればぜひ一度いらしてください。