安藤 良将 院長の独自取材記事
武蔵野眼科
(武蔵野市/三鷹駅)
最終更新日:2025/02/26

三鷹駅から徒歩3分のビル4階にある「武蔵野眼科」は、65年以上にわたって地域に根づき、患者の目の悩みに寄り添ってきた。2023年1月より同院の院長を務めるのが安藤良将先生。「新たな取り組みにもチャレンジしていきたい」と意欲を燃やし、デジタル技術活用や異業種連携にも注力する。自分の目を知るきっかけになればと情報提供にも熱心で、どのような症状であっても、現状や治療プランについてしっかり伝えるよう心がけているという。常に患者の思いを尊重した個別アプローチを大切にする同院。安藤院長に、同院の特徴や今後の展望について話を聞いた。
(取材日2023年11月30日/再取材日2024年12月12日)
眼科だからこそのより良い眼鏡作りを提案
患者さんの傾向を教えてください。

お子さんから高齢の方まで幅広い患者さんが来院されます。65年以上もの月日にわたり地域に根差している医院であるため、やはり高齢の患者さんが多く、その主訴は緑内障とドライアイ。40歳以上の方の検診にも注力していて、お勤めされている方は週末に来院されることが多いです。またお子さんの目の発達や、視力に関する発達の遅れを調べるための3歳児健診のご相談もお受けしています。当院には3人の視能訓練士が在籍し、例えば3歳児健診の視覚検査で「異常あり」の所見を得たお子さんがいた場合、視能訓練士のもとで時には数ヵ月にわたって経過を観察し、視力の改善をめざします。
治療のこだわりについてお聞かせください。
まず、「マイボーム腺」の詰まりによって発症する「マイボーム腺機能不全」という疾患に対して、当院では眼球へのダメージが少ないとされるIPLという特殊な光を照射する方法を用いています。また、緑内障に対しては点眼治療だけでなくレーザー治療にも対応しています。その他のこだわりとしては、眼鏡を作る際には眼科の医師に相談し、適切に診断した上で必要な眼鏡をアドバイスしてもらうように勧めていることです。当院では視力検査を行って処方箋を出し、院内で眼鏡の作製まで行うことができます。
眼科で眼鏡作りができることのメリットを教えてください。

眼科で眼鏡を作るメリットとしては、近視や乱視の状態を診断して、具体的な数字を知った上で作製できる点があります。また、「よく見るための眼鏡」と「疲れない眼鏡」は違うんですね。かけ続けても「疲れない」眼鏡を作るために、当院ではご本人の目の調節力を測り、調節力の低下の程度に応じて遠近、中近、あるいは近々などの眼鏡の提案をしています。
人それぞれに、眼鏡作りでケアするポイントは違うのですね。
お子さんでしたら、3歳児健診の結果、屈折異常が認められる場合はそれに対応した眼鏡、中高年の方なら調節力の低下を補うための眼鏡など、必要なものは異なります。また、視力に加えてご本人の生活環境を詳しくお聞きすることが重要なんです。デスクトップのパソコンを使用するのかノートパソコンなのか、あるいは楽譜を読みたい、1~2メートル先のテレビを見たいなど日常的な環境によって提案する眼鏡は変わります。また、最近では「スマホ老眼」などと言われるように、IT技術の発達によって以前と環境が大きく変わりました。それに伴って40歳以降くらいの方に、調節力低下に応じたご提案をすることが多くなりましたね。
大学病院を離れ、医師として進むべき方向を見出す
これまでの経験で現在の治療方針につながっていることはありますか。

大学卒業後は大学病院で臨床と研究の研鑽を積みましたが、10年ほど経過した頃にその働き方に疑問を抱くようになりました。学術研究が患者さんや社会に還元できていないという感覚を持つようになったのです。患者さんが喜んでくださる姿により多く接し、お役に立てていることを実感できる働き方に転換したいと考え、大学病院を離れる決断に至りました。具体的な方向性が定まらない中で、当院とのご縁が結ばれ勤務を開始。ここでの経験を通して、目の健康寿命を延ばすにはデジタル技術の活用が不可欠であると知り、私がやりたかったのはまさに「デジタルヘルス」であると気づきました。
医師として忘れられない思い出があれば、お聞かせください。
大学病院の勤務医時代、東京オリンピックの数年前の出来事です。糖尿病網膜症を有する高齢の患者さんが来院されたことがありました。レーザー治療での視力改善が見込める可能性があったので患者さんにお伝えしたところ、年齢とレーザー治療に対する恐怖心を理由に、その治療を拒否されたのです。この患者さんに「見ること」を諦めないでほしいという思いで、「ご自分の目で東京オリンピックを観戦したくないですか、そこまで頑張ってみませんか」というお声がけをしたところ、その言葉が響いたのでしょうか、治療を受けることに同意してくれました。とても良い思い出として脳裏に焼きついています。
診療の際に大切にしていることを教えてください。

人として当然のことではありますが、診察前に必ず自分の名前を伝え、きちんとあいさつすることを心がけています。また、医師として主たる役割の一つは、検査データの内容を患者さんが理解できるように伝え、その結果の情報をしっかりと戻すことだと思っています。大きな病院での勤務時、多忙ゆえにこの点を徹底していなかった自分を反省することもあります。「検査結果の情報を戻す」ことにはこだわりを持っています。対面で丁寧に説明を行ったとしても、その場で理解できない事柄もあるでしょう。検査結果の情報をお戻しすれば、帰宅後に患者さんが自ら振り返ることができて理解も深まりますし、自分にしかわからない事情とすり合わせて、治療を検討いただくことも可能です。先に申し上げたデジタル技術の活用が、この点でも力を発揮すると考えています。
院長の治療スタンスについてお伺いします。
経験を重ねる中でスタンスが変化したように感じます。経験が浅い頃は患者さんにとって適切な治療法を提案し、患者さんの同意のもと自分が考えた治療を行っていました。振り返ると、患者さんの主体性を尊重していなかったと恥ずかしく思うことも。患者さんは私以上にご自分のことを理解されています。私と異なる考えをお持ちの方もおられるはず。今考えるのは、患者さんが希望する治療が、その方にとって適切なアプローチであるということ。私が適切な方法であると思っても、患者さんが別の方法を望むのであれば考え直します。私のミッションは、患者さんの主体的な希望を実現することだと思っています。
自分の役割は、患者の希望に応えること
医院としての強みをお伺いします。

武蔵野市では40歳以上の眼科検診を特定検診の一つに指定しており、当院でも対応しています。当院ではそれだけでなく、治療が必要か否か、裸眼視力、矯正視力、眼圧値などの検査結果をお伝えし、また症状に関する丁寧な説明を行っています。地域密着型の医院として、真摯な姿勢を持って検診に向き合います。また、先進の医療機器が装備された八王子の本院と緊密に連携し、先進の術式が必要な場合は紹介状なしに迅速に受診できる体制を整えています。
今後の展望を教えてください。
スタッフのITリテラシーを高め、デジタルヘルスを推進したいですね。例えば、武蔵野市の特定検診と当院オリジナル検診の2本立てを思案中です。この構想を思いついたのは、患者さんから検査結果のデータを携帯機器に送信してもらいたいというリクエストを受けたこと。当院オリジナル検診が運用されれば、個人情報規制を遵守した上で検査結果のデータを特定機器に送信することは可能だと考えています。昨今の医療機器業界は目覚ましく進歩しているため、医師もそれに遅れることなく前進するには、医学以外のテクノロジーにも目を向ける必要があると思います。医療の枠にとどまることなく、社会全体の健康基盤づくりに貢献したいですね。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

当院では、医学的観点から望ましい治療方法を提案しますが、それを押しつけるのではなく、患者さんが主体的に選択した方法を全面的にサポートします。例えば糖尿病網膜症や加齢黄斑変性などの治療で、毎月注射するものの再発を繰り返し、視力の改善も見込めない場合、治療を継続する気持ちが途切れる傾向は否めません。継続が悪化予防につながることを説明はしますが、最終的には患者さんのお気持ちを尊重して判断していきます。患者さんに、これからの時間をより快適に過ごしていただけるよう、全力でお手伝いするのが私の役割。視覚や目の症状で、気になることがありましたら気軽にご連絡ください。
自由診療費用の目安
自由診療とはIPLを用いたマイボーム腺機能不全の治療/1万円〜