寺下 勇祐 副院長の独自取材記事
Terraファミリークリニック
(千代田区/飯田橋駅)
最終更新日:2025/05/20

飯田橋駅から徒歩圏内の「Terraファミリークリニック」は、患者の健康管理や治療における意思決定をかかりつけ医の立場からサポートしている。患者は近隣エリアの住民のみでなく、日本全国、さらには海外の患者とも長年にわたり関係を築いてきたという。寺下勇祐副院長の父である寺下謙三院長は「安心の提供」を自身の軸に据え、診療だけでなく研究開発や医療システムの改善にも取り組んできた。その信念と情熱は寺下副院長にも受け継がれ、現在同院では2人の強みを生かした独自の医療を展開している。勤務医時代に何を思い、父からどのような影響を受けたのか。同院を語る上で欠かせないエピソードの数々を寺下副院長に聞いた。
(取材日2025年2月13日)
民間版の侍医として、安心を提供し続けてきた
院長であるお父さまが取り組まれてきたことや、クリニックの特徴をお聞かせください。

父は大学卒業後、脳外科や老年内科の診療をしていました。その一方で「医療を提供する以前に、医療システムの革新によって人々に安心を与えられないか」と、常々考えていたそうです。まだ電子カルテがない時代に患者情報が入ったチップを共同開発したり、MRIやCTを診療所が共有使用するシステムを企業と一緒に実現しようとしたり……。患者さんのためを思い、寄り添おうという気持ちから、診療とは違う形でいろいろなことに取り組んできたと聞いています。また、当院は前身にあたる「寺下謙三クリニック」から数えて25年以上この地で診療していますが、私が副院長に就任するまでは自由診療専門のクリニックとして、健康管理を徹底すべき立場にある経営者などの医療相談を中心に行ってきた歴史があり、患者さんも海外や関西など広域にいらっしゃいます。
お父さまは「侍医」という考え方もお持ちだそうですね。
「侍医」とは天皇や皇族の診療を担当する医師のことです。父は侍医のような診療こそ、人々が安心して過ごす上での最善のシステムと考え、当院で侍医システムの民間版を確立しました。何かあったときの医療相談をはじめ、患者さんのプライベートドクターとしてあらゆるお困りごとにいつでも対応し、必要があれば適切な専門家に連携する。豊富な人脈と人徳がある父だからこそ可能なスタイルだと思います。さらに父は一時期、医療判断学という診断学とも治療学とも異なる学問を大学で教えていました。これは「仮に病気が治る確率が90%、死に至る確率が10%の薬があったとき、自分が飲む場合と家族に飲ませる場合とで意見が一定数変わる」など、医療方針の決定に影響を与える因子について学ぶ分野です。100%正解といえる選択肢がない中でいかに考え、判断するかに重きが置かれており、父と私が何より重視していることです。
勇祐先生ご自身の生い立ちやご経歴も気になります。

父の考え方は今でこそ尊敬していますが、子どもの頃は厳しい、うるさいとしか思っていなくて(笑)。父は病院以外にもいろいろな所を飛び回り人と会っていましたので、医師だという認識も薄かったですね。ただ、父のきょうだいは全員医師で、母方も6~7代続く医師家系のため、自分の進路候補にも当然のように医学部がありました。加えて、人助けをしたいという気持ちがあり、相手に喜んでいただけていると実感しやすいのも医療行為だろうと考えて同じ道に進みました。大学卒業後は救急や心臓血管外科にも興味を抱きつつ、最初は消化器外科に配属されたのですが、研修医になって3ヵ月で早くも医師人生のターニングポイントを迎えました。
思いを継ぎ、より多くの人のプライベートドクターに
ぜひ、ターニングポイントとなったできごとを教えてください。

研修医時代、知識も技術もなかった私はひたすら患者さんたちのもとへ行き、全員の好物を把握するくらい頻繁にコミュニケーションをとっていました。その中には女性のがん患者さんもいたのですが、ある時エックス線画像を見た先輩が厳しい顔をしていて。一見お元気な方だからこそ先輩の見立てをにわかには信じられずにいたものの、残念ながら数ヵ月後にそのとおりになってしまいました。医師になったから何とかできるわけではなく、むしろ医師になったのに何もできなかったことが本当に悔しくて、自分でも驚くほど泣いてしまいました。父は昔から「命より心」とよく口にしていましたが、後になって振り返ると、まさにその患者さんに対して「たとえ命を救えなかったとしても、心はもっと救えたのではないか」と、思うところがあり、「あの時できなかった」という心残りが私の医師人生の原点になっています。
お父さまの言葉が気づきとなったのですね。
知らぬ間に父の思いを受け継いでいたんだなと思います。がん診療に注力したいと思うようになったのも「患者さんの人生に寄り添い、一緒に考えながら病気と付き合う手助けをしたい」という理由でした。そして、またある時、緩和ケアで最期まで寄り添った患者さんを看取った直後、ご家族から「先生には助けてもらいました」と声をかけていただきました。実際は助けることができたわけではないのですが、そのお言葉は「研修医時代できなかったことが少しはできるようになったのかもしれない。自分が取り組んできたことは間違ってなかった」と、思わせてくれました。特にがん治療において、医療判断を個々それぞれに応じて行う必要性は、時に診断や治療以上に高いと実感しています。
副院長になるまでの心境の変化も伺います。

消化器外科で手術や化学療法、緩和ケアなどに携わるほか、救急の現場も経験し、最終的には「手術が必要になる前の段階で病気の予防に介入したい」と考えるようになりました。そこで初めて父のプライベートドクターというスタンスに共感し、当院でより多くの患者さんのかかりつけ医をめざそうと思いました。患者さんとしても、いつでも相談できて自分の話を親身に聞いてくれる医師がいたら安心できるのではないでしょうか。父がつくってきた環境と私の経験をうまく融合させ、新しい診療の形を実現しようと去年から模索しています。
かかりつけ医は常に味方。だからこそ相談してほしい
現在の診療内容を教えてください。

昔から父を信頼してくださっている患者さんの医療相談・意思決定支援は、引き続き父が対応しています。一方、保険診療はほとんど私が担当しており、可能な限り時間を取ってご要望やお悩みに耳を傾けています。父の人脈の広さを信頼しており、ご紹介が必要な際に手を借りることも多いですね。単に名前を知っているだけではなく基本的に面識があるため、直接連絡を取って専門家を指名できるのが大きな強みです。紹介状も一般的な内容にとどまらず、生活背景や薬の好みまで細かく丁寧に共有しています。さらに、人間ドックを受けたいけれどどの項目を選べばいいか判断できない、結果の見方がわからないという方に対し、個別に説明・アドバイスを行うサービスも始めました。ご自身の健康をきちんと管理したいとお考えの方はぜひご相談ください。
勇祐先生が思うかかりつけ医の姿をお聞かせください。
多分野に精通し、患者さんが気軽に話せる存在であり、必要に応じて専門家に紹介できる体制を整えている、海外のホームドクターのような医師が然るべきかかりつけ医の姿だと考えています。さらにいうと、患者さんにとって自分の味方になってくれる医師のことだと思います。例えば、当院では入念な事前調査を行った上で専門家にご紹介していますが、万が一納得がいかなかった場合に患者さんが戻ってこられる場所が必要です。また、多くの患者さんは治療を担当する医師に面と向かってノーとは言いづらく、疑問があってもなかなか聞けません。そんなときに頼れるのがかかりつけ医です。私たちは皆さんの質問にお答えしたり、紹介先を変えたりと柔軟にフォローします。
読者へのメッセージをお願いします。

現代はどの領域でもデジタル化が進み、どんどん便利な世の中になっています。そんな中でも人と人とのアナログなつながりは大事にしたいと私たちは考えています。医師と患者さんという関係ではなく、互いに安心・信頼できる相手として深く、長くお付き合いできれば幸いです。父のモットーは「手を抜かない、諦めない、やり過ぎない」。検査でわからないことがあればとことん追究し、さまざまな術を使って解決法をご提案し、一緒に方向性を決めていければと思います。「本当は薬を飲みたくない」などの本音も当院では大歓迎です。自身のことをよく知る、ちょっとしたときもいざというときも気軽に相談できるかかりつけ医を持ってみましょう。
自由診療費用の目安
自由診療とは医療意思決定支援/初診8万8000円、人間ドックサポート/11万円