小口 美香 院長の独自取材記事
石川小児科医院
(杉並区/鷺ノ宮駅)
最終更新日:2024/12/03

西武新宿線の鷺ノ宮駅から徒歩10分の閑静な住宅街にある「石川小児科医院」。妙正寺川にほど近く、小学校に隣接するこの場所で、父から1998年に同院を継承し、診療を提供するのが小口美香院長。「患者である子どもだけでなく、その家族も元気づけることがモットーです」と穏やかな笑顔を見せる。2児の母でもある小口院長が特に力を入れているのが、悩みを抱える子どもや家族の心の問題に寄り添うカウンセリングや育児相談だ。院内はアットホームな雰囲気で、小口院長自身も子育て中に元気をもらったという絵本と、絵本のキャラクターのぬいぐるみが並ぶ。そんな小口院長に、同院の特徴や今後の展望などをじっくり聞いた。
(取材日2024年10月31日)
増加する子どもの心の問題へ真摯に向き合う
診療におけるクリニックの特徴は何でしょうか?

地域密着の小児科として、風邪などの感染症、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、気管支喘息、熱性けいれんなど小児全般の症状・病気を診ます。当院が特に力を入れているのは、予防接種、健診、育児相談、「子どもの心」相談です。これらへ注力するようになったのは、長年お子さんの体調不良と向き合う中で、薬だけでは対処できないケースにしばしば出会うようになったからです。そこには体の問題だけでなく、心の問題が隠れているんですね。そこで「病気の治療だけでは根本的な解決にならない」と考えまして、当院ではお子さんの心の問題にも向き合うようになりました。近隣で扱っているクリニックが少ない分野ということもあり、受診される方が年々増えています。一般診療は近隣でも診てもらえるクリニックが多くあるので、当院ではニーズがあっても受け皿が少ない心の問題に注力するようになりました。
「心の問題」を抱えるお子さんは増えているのでしょうか?
以前と比べて体は丈夫に育っていても、心の問題を抱えてしまうお子さんが増えているように感じます。「友だちとうまくいかない」「学校に居づらい」といった悩みを抱えていて、不登校になっているケースも多いようです。当院では、特に小学生以降のお子さんの相談が多く、未就学児のお子さんはチック症などのご相談もあります。腹痛・頭痛など受診のきっかけはさまざまです。発達障害のご相談も多く、昔はそうした子がいても、特別に対処しなくても社会の中で普通に生きていけたと思うのですが、最近は本当に難しい時代だなと感じますね。不登校が増えていることは実感していますが、それが学校側の問題なのか、子どもが些細なことをとても気にするようになったのか……。何が要因なのか考えながら、心の問題に向き合っていきたいですね。
どういった経緯での相談が多いですか?

体調不良での受診をきっかけに、心の問題のケアを希望されるケースもあれば、ホームページなどから直接カウンセリングのお問い合わせをいただくケースもあります。風邪などの診察と異なり、心の問題は長期的なフォローが必要な場合が多く、1ヵ月、2ヵ月後と予約をお取りいただいて、少しずつ解決の手段を一緒に考えていきます。一般診療が終わる夕方からそうした患者さんに対応していますが、地域に受け皿が少ないこともあり、どんどん希望者が増えています。そのため、一般診療は徐々に縮小していき、今後さらにお子さんの心のケアや親御さんに向けての子育て相談をお受けする時間を増やしていきたいと考えています。
子どもの成長を見守る喜びを実感する日々
親御さんに向けた子育て相談もされているのですね。

最初は診療中にお悩みを聞ければと考えていたのですが、次の患者さんが待っている中では、ゆっくりお話を伺う時間が取れません。そこで、火曜日の午後に予約制の子育て相談を受けています。「子育てがうまくいかない」「子どもが思ったとおりの反応をくれない」などお子さんとの関係の悩みを中心にお聞きしています。近くの親御さん同士で相談し合うのもいいと思いますが、違う立場の意見を聞くことで「こんな考え方もあるのか」と参考にしてもらえることも多いと思います。子育て経験のある母として、また医師としての視点からアドバイスできることもあります。医療機関だからと身構えず、気軽に相談に来ていただけるとうれしいですね。
クリニックは、お父さまから受け継がれたと伺いました。
父が長年こちらで小児科と内科を診ていまして、住居兼診療所である当院の2階で生まれ育ち、父の仕事ぶりをずっと見ていました。本格的に医師をめざそうと決めたのは、高校3年生の受験目前の時期。ある新聞記事を読んだことがきっかけでした。10代で泌尿器のがんを患った息子さんを持つ、お母さんからの投書でした。息子さんは結果的には亡くなってしまわれたそうなんですが、担当の医師がとても良い方で、緊急時にすぐ駆けつけてくれるなど、最期まで誠心誠意診てくれたそうです。「息子は亡くなったけれど、先生と出会えたことですごく救われた。良い関係を築くことができて感謝している」という内容でした。その文章を読んで心底感動し、自分のめざす人物像がやっと具体化され、自分もこんな医師になりたいと思ったんです。1998年から私もこちらで診察を始めました。
小児科を専門に選ばれたのはなぜですか。

子どもが好きだったのはもちろんですが、悩み苦しむ人の中でも、特に小さくて力の弱い存在である子どもの力になりたいと思いました。それに、小児科は頭のてっぺんから足の先まで診ることができます。そんなふうに、一人ひとりを総合的に見守ることのできる、小児科ならではの患者さんとの関係にも魅力を感じたんです。実際に小児科の医師として長年子どもと接してきて、子どもは話をしていると一人ひとり反応がまったく違うので面白くて楽しいです。あとは小児科の醍醐味として、成長していく過程を見届けることも喜びです。とても内弁慶だった子が、物凄くはきはきした子になるなど、成長を見届けられることはこの仕事のやりがいです。第三者目線で子どもの成長を見届けるのは、自分の子どもを育てることとは違う楽しさがあります。
憩いの場となり、親子の笑顔を見届けたい
休日はどのように過ごされていますか。

子どもが自立して手が離れたこともあり、最近は自分一人の時間が持てるようになりました。もともと好きだったコンサート、劇、バレエなどの鑑賞にも、最近はよく出かけます。あとは小さい頃から続けているピアノと、30年近くピラティスをしています。ピラティスは週1回のゆるやかな運動ですが、たまに期間が空くと調子が悪くなります。ハードすぎないのも自分には合っていて続けています。今は、杉並区医師会の活動にも力を入れていて、忙しくさせてもらっていますね。医師会の活動を通じて、他の区や他県がどのような取り組みをしているのか知る機会が増え、医師としての視野が広がったと感じます。医師会の仕事が落ち着いた後は当院のリニューアルなど、ずっとやりたかったことを少しずつ始めたいと考えています。
今後の展望を教えてください。
いかにも医療機関という場所で白衣を着ていると子どもは怖がるので、普通の家のようなアットホームな空間で健診やカウンセリングをしたいと考えています。もっと絵本を増やして小さな図書館のような空間をつくりたいですね。そんな本に囲まれた空間で、健診をしたりお子さんと親御さんのご相談に乗ったり。昼間は子どもたちが遊びに来て読書して過ごしてもらってもいいと思っています。昔ながらのボードゲームを置いてもいいかもしれませんね。私もそうした子どもたちの姿を見ると幸せですし、地域にそんな憩いの場があってもいいかなと。それが私の夢ですね。
読者へのメッセージをお願いします。

お子さんにとって親御さんは、信頼できる一番近い大人です。生まれてから3、4歳までの時期に、「親子の絆」という土台をしっかりと築くことがたいへん重要です。「自分が困ったら、お父さんお母さんが側にいて助けてくれる」という安心感を持てれば、子どもは自立して外の世界へ出てさまざまな経験を得ることができるでしょう。親子の絆という土台がしっかり築けていれば、将来学校や社会で悩むことがあっても、自分で立ち直る原動力になるのです。つまり親子の絆という土台は思春期よりも前から構築し続けることが大切なのです。スマホなどの便利なツールを活用する場面があってもいいのですが、普段はできるだけ寄り添って声をかけ、会話をすることが大切です。私も子育ての真っ最中、行き詰まったり悩んだりすることが多かったので、悩みがあれば気軽に相談してくださいね。
自由診療費用の目安
自由診療とは1歳児健診/3000円~
インフルエンザワクチン接種料金(3歳以上)/1回目4000円 2回目3000円