中冨 寛 院長の独自取材記事
中冨歯科
(台東区/御徒町駅)
最終更新日:2025/10/15
JR山手線御徒町駅の南口から徒歩3分の所にある「中冨歯科」。1993年の開院から30年以上、地域住民の口の健康を守り続けているクリニックだ。中冨寛院長を中心に、歯科医師と歯科衛生士たちが一丸となって連携し合うチーム医療が印象的で、院内は清潔で明るい雰囲気が広がる。中冨院長は、山形県にある日吉歯科診療所の熊谷理事長の考えに共鳴し、長年予防歯科に注力してきた。現在は歯科衛生士5人体制で、予防歯科専用の診療室も設け診療を行っているという。そんな中冨院長から予防歯科における誤解や重要性について話を聞いた。
(取材日2025年3月26日)
虫歯・歯周病から歯を守るために、予防歯科を実践
こちらはどんな特徴を持つ歯科医院なのか、ご紹介ください。

一般的な歯科治療に対応しつつ、治療前後の「予防」を重視した診療を行っています。予防というと、歯磨きの指導や歯石の除去などをイメージされる方が多いと思いますが、当院では個々の患者さんに、虫歯や歯周病になっている根本的な原因を調べ、それを止めるために予防プログラムであるメディカルトリートメントモデル(MTM)という診療の進め方を取り入れています。一通りMTMの手順を踏まれた患者さんは、以後それぞれの状態に応じて数ヵ月から半年、場合によってはそれ以上の期間を置いてご来院いただき、メンテナンスを行っていきます。これを継続することで、お口の健康維持をめざしています。お口の健康を保つことは生活習慣病発症の予防を図るという点でも大切にしています。
予防歯科についてはどのように学んだのですか?
最初の数年間はまったくの手探り状態で、歯磨きをしっかりやりましょうとか、麻酔をして歯石を取りますとか、その程度の方針にとどまっていたんです。しかし、1997年頃、予防歯科に力を入れている山形県酒田市にある日吉歯科診療所の熊谷崇先生の講演を聴き、虫歯を安易に削ってはいけない、根本の原因を止めなければ駄目だという主張に、目からうろこが落ちました。その後は患者さんに定期的なメンテナンスを積極的に勧めるようになったのですが、それでも再治療の患者さんが出てしまうことも考えられたため、2014年に歯科衛生士さん全員と一緒に山形まで赴き、熊谷先生のセミナーに参加しました。この経験が大きな契機となって、私やスタッフも新しい診療の流れをよく理解し、現在につながるスタートを切れたと思っています。
普段どのような患者さんが多く来院しますか?

虫歯や歯周病の治療のために来院する患者さんもいらっしゃいますが、当院では予防に力を入れていることから、近年は歯科衛生士による定期的なメンテナンスを受けに来られる方の割合が大きくなりました。日によっては治療の患者さんを上回るほどになってきましたね。男女比だと女性のほうが若干多く、年齢は30代から50代、中でも40代をピークに、お年寄りやお子さんの姿も目立ちます。最寄りのJR山手線御徒町駅をはじめ、地下鉄も複数の駅が近いため、地元の台東区に限らず、さまざまな地域から足を運んでくださっています。
歯磨きだけでなく食習慣の見直しが歯を守る第一歩
地域の方々の予防歯科への意識は高まっていますか?

以前は「歯科は虫歯などを治療する所」「予防のために歯科医院に通って何か得があるの?」と思っていた方が多かったのですが、メンテナンスに来る方の割合が増えていることもあり、少しずつ意識は変わってきているように思います。また、お子さんに自分と同じような体験をさせたくないと思う親御さんも多く、予防意識は高まっているように思いますが、「歯磨きを頑張れば虫歯にならない」と考える方は少なくありません。予防歯科は虫歯と歯周病によってアプローチ方法が異なるため、正しい知識を伝えることが重要だと考えています。
虫歯と歯周病では、予防のアプローチが異なるのですね。
そうなんです。歯周病は正しいブラッシングや歯石除去が予防の基本にはなりますが、虫歯の予防となるとアプローチが異なります。虫歯予防は歯磨きを頑張ることだと思われがちなのですが、虫歯は「歯」「虫歯菌」「食習慣」の3つの条件がそろったときに発生し「カイスの輪」と呼ばれる考え方で説明されます。実は、虫歯は歯磨きだけで防ぎきれないケースが多く、それよりも「食習慣」の乱れが大きく影響しているのです。通常、飲食をしたあと、唾液によって再石灰化が起こりますが、これには2時間ほどかかかります。しかし、頻繁に間食を行うことで再石灰化が追いつかず虫歯ができやすくなるのです。歯磨きを頑張っているのに虫歯ができる人と、あまり磨いていないのに虫歯にならない人がいるのはこのためです。歯を守るためには、原因に応じた予防方法を知ることが大切です。
食習慣についての指導はどのように行っているのですか?

食習慣の見直しは、患者さんにとっては簡単なことはありません。そのため、丁寧にコミュニケーションを重ね、ライフスタイルをお伺いしながら、その方が虫歯になりにくい生活に変えていくための計画を一緒に立てていくことが大切だと考えています。甘い食べ物や飲み物を頻繁に取ってしまうことがお口の一番の天敵なのですが、お話を伺っていると、部活動でスポーツドリンクを飲んだり、夜食を取ったりしている方が多いです。意識せずそういった生活になってしまっているため、「まずは2時間あけてみましょう」などと、無理のない範囲で食事のスタイルを見直していただきます。その方のライフスタイルに合わせて提案することが、予防歯科には大切です。お口の中の状態を知っていただくための唾液検査や、フッ素の利用や食事の取り方など、その方に合った計画を一緒に立てますのでぜひ一度ご相談ください。
定期検診での変化を見逃さず、今ある歯を守る
予防において、定期検診にはどのような意味があるのですか?

定期検診は虫歯や歯周病のチェックをするだけでなく、患者さんの現状と変化を見ることにあります。例えば、高齢の方は服薬の影響で唾液量が減ることで、急に虫歯が進行するケースもありますよね。当院では3〜4年に1度は全体のデンタルエックス線写真を撮り、必要に応じて年に1回、咬翼法という手法で見えにくい場所の虫歯チェックも行っています。そこで、初期の虫歯が見つかったとしてもすぐに治療するのではなく、飲食習慣や生活背景を把握した上で経過観察をすることもあります。年齢や生活環境の変化に合わせた継続的なチェックと指導が大切だと考えています。
予防歯科への思いをお聞かせください。
治療をすればそれで終わり、と思っている方もいらっしゃいますが、実際には治療した歯が一生持つわけではありません。できるだけ治療を避け、自分の歯で一生食べられることこそが理想です。そのためには予防が何より重要で、歯磨きだけでなく食習慣や生活習慣まで含めて見直す必要があるのです。患者さんが虫歯にならないよう、飲食の回数や内容、再石灰化についてなど細かくお伝えしています。また、微糖の飲料はもちろん、「シュガーレス」と表示されている商品にもわずかに糖分が含まれていることがあります。こうした見えないリスクに対しても、私たちがしっかりと説明していかなければならないと思っています。予防は小さな気づきを重ねていくことで、治療よりもずっと負担が少なく済むのです。
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

長い経験を経て思うのは、自分の歯を持ち続けることこそが一番の価値だということです。すでに治療をされた方も、その歯を虫歯のない元の姿に戻すことはできませんが、今の状態を長持ちさせることは可能です。過剰に削らず、予防に重点を置いた診療を行い、患者さんの歯をしっかりと守ることで、QOL(生活の質)向上に貢献できるよう努力していきたいと考えています。予防歯科だけでなく歯周病や補綴、矯正やインプラントにおいても、専門的な知識と技術を持って対応しています。総合的な診断が行えるからこそ、予防を基礎とした総合的な歯科治療を行うことができると思っています。病診連携も整っており、互いの強みを生かし合うことで患者さんにとってのベストな提案をすることも可能ですので、気軽にご相談ください。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント/51万7000円~、矯正歯科/77万円~、唾液検査/4400円、フッ素塗布/1540円(保険適用の場合もあります)

