八木下 恵子 院長の独自取材記事
八木下歯科医院
(台東区/浅草駅)
最終更新日:2026/06/26
浅草・合羽橋交差点の近くにある「八木下歯科医院」は、開業から30年以上、地域の人々に親しまれてきた。生粋の江戸っ子である八木下恵子院長の人柄を慕って、乳幼児から高齢者まで幅広い年代の患者が訪れる。その一方、八木下院長は、東洋医学の考えを取り入れ、患部だけではなく全身の状態を確認し治療に生かしたり、臨床心理学を専門的に学ぶことで患者の心理的サポートをしたりと固定観念にとらわれない歯科治療に注力。「患者さん一人ひとりとのつながりを大切にしていきたいです」と話す八木下院長に、診療方針や患者との温かな関係などについて聞いた。
(取材日2026年3月10日)
東洋医学の見識も深め、歯科医療分野に新たな可能性を
先生は歯科医療に多様なアプローチを取り入れているのですね。

私は鍼灸や漢方について長年学んでおり、東洋医学の考え方も取り入れつつ、口の周りの不快症状を診ています。東洋医学の考え方の中に「患部だけではなく全身を診る」というものがあります。例えば、顎関節症でもないのに朝起きたら急に顎が開けにくくなる開口障害は、東洋医学の考え方に則ると、全身のバランスのゆがみからきていると判断できます。であるなら、ゆがみの要因になる間違った生活習慣を見直すことが大切だと考えます。このように東洋医学の観点を取り入れることで、新たなアプローチが見出せると考えています。口腔内乾燥症や舌がピリピリとするような症状に漢方を用いることもあります。患者さんのためになるのなら、固定観念にとらわれず、どんなことでも学んで診療に生かしていきたいです。
臨床心理学を学ばれていると伺いました。
以前、メンタルの疾患を抱えた患者さんが来院され、いろいろな話をしたことがあります。その時、「心理的なサポートができるよう学ぶことで、患者さんの助けになるかもしれない」と思い、心理学について学びました。このことを当院のホームページで告知してからは、精神的な悩みや服用中の薬について、問診票にきちんと書いてくださる方が増えましたね。お口の状態はメンタルの状態にも左右されるもの。病気や薬について話してもらえれば、その方に合った治療やケア方法の提案にもつながると思いますので、ぜひご相談ください。
診療の際には、どのようなことを心がけていますか?

一つは患者さんとのコミュニケーションを大切にすること。私自身、もともと話をするのが好きですし、患者さんとの会話の中にヒントを見つけることもあるんです。会話が弾んで時が過ぎ、「あら、今日はもう帰らなくちゃ」なんておっしゃる方もいるんですよ。一方、緊張や遠慮をしているように見える方には、こちらから「何かお困り事はないですか」などと尋ねるようにしています。もう一つは、患者さんが納得して治療を受けられるように、複数の提案をすること。歯科医師が「この治療をします」と決めつけては、患者さんは何も言えなくなるでしょう。いくつかの選択肢を提示した上で、一緒にお話をしながら決めていきたいですね。
地域に根差した、アットホームな雰囲気を守り続ける
ここで開業された経緯を教えてください。

私は浅草生まれの浅草育ちで、祖父の代からの江戸っ子です。この場所は実家でして、ここで長く内科と小児科を営んでいた叔母が亡くなった後、彼女のような地元に根差したかかりつけ医になりたいという思いから、この場所に開業しました。大学では口腔外科を専門に学び、卒業後は東京女子医科大学の口腔外科に勤務していましたが、今は幅広く一般歯科を診療しています。患者さんの年齢層も幅広く、本当にいろいろな方がお見えになります。午前中は年配の方や保育園にお子さんを送った後のお母さんたち、午後になると学校から帰った子どもたち、夕方5時を過ぎると会社帰りの方が訪れるという具合です。また、日にちは限定されてしまうのですが、通うのが難しくなった方に対しては往診も行っています。
子ども連れの患者さんも多いそうですね。
物心つく前から歯科医院に慣れておくことは、お子さんに治療が必要になった時にも役立ちますからね。小さな歯のケア方法をお伝えしたり、舌やお口周りの筋肉の発達を促すトレーニングも取り入れています。親御さんの治療中は、お子さんを膝に乗せたまま受ける方もいますし、スタッフがお預かりすることも可能です。もう少し大きなお子さんですと、待合室で近所の方々が遊んでくれる風景も目にします。狭い待合室がまるで保育園のようになっていてアットホームな雰囲気です。新しくこの町に引っ越してきて、地域になじむきっかけがほしい方にも、ぜひ利用していただきたいと思います。
子どもの治療では、どのようなことに配慮していますか?

初めて来院するお子さんは、玄関のドアを開けたものの中へ入ろうとしないこともあります。それを何回か繰り返し、次は診察室のドアを開けてみる、というように段階を踏めば、どんな子でもいつかは診療用の椅子に座れるようになります。最初は親御さんと一緒で構いません。「ここからお水が出るよ」「これは口の中の掃除機だよ」「5つ数える間だけお口を開けられるかな?」といった感じにトレーニングしていきます。1つ進めたらシールをあげて、とにかく褒めて自信をつけてあげるんです。ご両親にも「今日うまくできたことは、お家で褒めてあげてください」とお伝えしています。するとそのうち、一人で診察を受けられるようになるんです。
妊婦の歯科検診も受けつけているとお聞きしました。
台東区では、妊娠中に1回の歯科健診を受診できまして、当院でも対応しています。できるだけ薬剤を使わず、安全性に配慮して必要なケアのみを行いますのでご安心ください。妊娠中はホルモンの関係で妊娠性歯肉炎になりやすく、そこから歯周病になることもあるんですよ。これから生まれてくる赤ちゃんのためにもしっかりとケアしていきましょう。そして赤ちゃんが生まれたら、また一緒にいらしてくださいね。
患者の声に耳を傾け、できるだけ歯を削らない治療を
できるだけ歯を削らない治療をしているそうですね。

東京女子医科大学の教授が同窓の先生と開業された歯科医院に、大学病院勤務の後、3年半ほど勤めました。とても研究熱心な先生方で、なるべく歯を削らない治療もそこで学んだのですが、「接着ブリッジ」という治療法もその一つです。例えば歯を失った際にはインプラントや義歯などの選択肢がありますが、歯を削ることや手術に抵抗のある方には、歯と同じ形をした素材を接着剤でつける「接着ブリッジ」で治療していきます。歯ぎしりをする方など、歯が取れてしまうリスクがある場合はできませんし、時間は多少かかりますが、通常のブリッジと比べてほとんど歯を削らずに済むのがメリットです。また、歯ぎしりやいびきに対して睡眠時に装着するマウスガードを作製するなど、天然歯を守るために多岐にわたって対応しています。
休日はどうお過ごしですか?
書の稽古に長年通っています。教室に着いて40分くらいはひたすら墨をするのですが、気持ちがとても癒やされますね。何を書くのかは師匠と相談して決めています。現在待合室に飾っている「幸」という字は、母の名前の一文字でもあるんです。きれいにバランスよく書くのが難しく、これまで何度も挑戦してきた、思い入れのある字の一つです。私の「幸」だけでなく、訪れる患者さんたちにも「幸」を感じていただきたいという願いを込めて書きました。待合に飾っている書は時々違う作品に変えているのですが、楽しみにしてくれている患者さんもいるのがうれしいです。
読者へのメッセージをお願いします。

開業して35年を迎え、小さかった患者さんも大人になり、自分のお子さんを連れてきてくださることも増えてきました。また補綴治療や嚥下に関する悩みなど、長年通われている患者さんから新たなご相談をいただくことも。私も定期検診のご案内はがきに一筆添えたりと、皆さんと長く温かいお付き合いができるのは、歯科医師として何よりの喜びです。小さな歯科医院ではありますが、患者さん一人ひとりとのつながりを大切に、私にできることを精いっぱいやって、大好きなこの町の役に立っていきたいですね。
紹介動画
自由診療費用の目安
自由診療とは接着ブリッジ/7万7000円〜

