八木下 恵子 院長の独自取材記事
八木下歯科医院
(台東区/浅草駅)
最終更新日:2024/10/29

浅草・かっぱ橋道具街近くにある「八木下歯科医院」は、開業から30年以上、地域の人々に親しまれてきた。祖父の代から3代続く生粋の江戸っ子である八木下恵子院長の人柄を慕って、乳幼児から高齢者まで幅広い年代の患者が訪れる。その一方、八木下院長は、東洋医学の考えを取り入れ、患部だけではなく全身状態を確認し治療に生かしたり、臨床心理学を専門的に学ぶことで患者の心理的サポートをしたりと固定観念にとらわれない歯科治療に注力。できるだけ歯を削らない治療を心がけ、地域の高齢化に伴い訪問診療も視野に入れているという八木下院長に、同院の強み、幼児や妊婦の歯科治療、診療に際して心がけていることなどを聞いた。
(取材日2024年10月15日)
東洋医学の見識も融合し歯科医療分野に新たな可能性を
貴院の特徴を教えてください。

私は長年、鍼灸について学んでいます。というのも、口の周りの不快症状には、東洋医学を取り入れたアプローチも役立つのではないかと考えたからです。東洋医学の考え方の中に「患部だけではなく全身を診る」というものがあります。例えば、顎関節症でもないのに朝起きたら急に顎が開けにくくなる開口障害は、東洋医学の考え方に則ると、全身のバランスのゆがみからきている可能性があるんです。であるなら、ゆがみの要因になる間違った生活習慣を見直すことが大切になりますね。つまり、口が開かないといった悩みを東洋医学の観点から診ることで、新たな可能性が見出せるかもしれないんです。このように、私は東洋医学の考え方も取り入れつつ、口の周りの不快症状を診ています。とにかく、患者さんのためになるのなら、固定観念にとらわれず、どんなことでも学んでいくという姿勢を大事にしています。
先生は臨床心理学にも精通されているんですね。
以前、メンタルの疾患を抱えた患者さんが来院され、いろいろな話をしたことがあります。その時、「心理的なサポートができる資格を取ることで、患者さんの助けになるかもしれない」と思いました。ちょうどその頃、大学の同級生が臨床心理学を専門的に学べる学校に通っていると聞き、一緒に勉強することにしました。精神的な悩みや疾患を抱えていらっしゃる患者さんは、問診票に病気のことや、飲んでいるお薬のことを書いてくださらないことが多いのですが、当院のホームページで告知してからは、問診票にきちんと書いてくださる方が増えましたね。別途、カウンセリングをご希望の方には、当院がお休みの日などに対応することもできるので、ぜひご相談ください。
診療の際には、どのようなことを心がけていますか?

歯科医院で診療を受けるなら「よく話を聞いてくれる先生に診てもらう」ことが一番だと思います。そのため私は、患者さんの要望によく耳を傾け、「この患者さんは何を求めているのか?」を真剣に考え、個々のニーズに合わせた提案をしています。もともと話をするのが好きなので、患者さんとの会話の中にヒントを見つけることもあるんです。ただ、若い方などは遠慮して、主訴以外は訴えてくれないこともあります。だからこそ、患者さんが何も話さなくても、体調や気分が悪そうに見えたら「何かありましたか」と尋ねるようにしているんです。同じ患者さんでも、日によって体調はもちろん、心の調子も異なるので、しっかりと観察することが大切だと考えています。
地域住民に愛されるアットホームな雰囲気を守り続ける
ここで開業された経緯を教えてください。

この場所は実家でして、私は浅草生まれの浅草育ちで、祖父の代からの江戸っ子です。ここで長く内科と小児科を営んでいた叔母が亡くなった後、彼女のような地元に根差したかかりつけ医になりたいという思いから、この場所に開業しました。大学では口腔外科を専門に学び、卒業後は東京女子医科大学の口腔外科に勤務していましたが、今は幅広く一般歯科を診療しています。患者さんの年齢層も幅広く、本当にいろいろな方がおみえになります。午前中は年配の方や保育園にお子さんを送った後のお母さんたち、午後になると学校から帰った子どもたち、夕方5時を過ぎると会社帰りの方が訪れるという具合です。
子ども連れの患者さんも多いそうですね。
歯科医院に行きたいけれど預け先がないという親御さんたちには「赤ちゃんを連れてきていいですよ」とお伝えしています。物心つく前から歯科医院に慣れておくことは、いざお子さんに治療が必要になった時にも役立ちますからね。親御さんがお子さんを膝に乗せたまま治療することもありますし、スタッフがお預かりすることもあります。ですから、スタッフを採用する時は、子どもが好きかどうか確認しているぐらいです。もう少し大きくなると、お母さんの診察中に待合室で近所のおばあちゃんたちが遊んでくれることもあります。狭い待合室がまるで保育園のようになっているアットホームな歯科医院なので、新しくこの町に引っ越してきて、地域になじむきっかけがほしい方にも、ぜひ利用していただきたいですね。
子どもの治療では、どのようなことに配慮していますか?

初めて来院するお子さんは、玄関のドアを開けたものの中へ入ろうとしないこともあります。それを何回か繰り返し、次は診察室のドアを開けてみる、というように段階を踏めば、どんな子でもいつかは椅子に座れるようになります。最初はお母さんと一緒で構いません。「ここから風が出るよ」「ここからお水が出るよ」「これは口の中の掃除機だよ」「5つ数える間だけお口を開けられるかな?」といった感じにトレーニングしていきます。1つ進めたらシールをあげて、とにかく褒めて自信をつけてあげるんです。ご両親にも「今日うまくできたことは、お家で褒めてあげてください」とお伝えしています。するとそのうち、「一人で大丈夫だから、ママはついてこないで」と言うようになるんです。
妊婦の歯科検診も受けつけているとお聞きしました。
妊婦の時に、当院でも実施している妊婦歯科検診を必ず受けてほしいですね。妊娠中はホルモンの関係で妊娠性歯肉炎になりやすく、そこから歯周病になることもあるので、これから生まれてくる赤ちゃんのためにもしっかりとケアしていきましょう。
患者の声に耳を傾け、できるだけ歯を削らない治療を
できるだけ歯を削らない治療をしているそうですね。

東京女子医科大学の教授が同窓の歯科医師と開業された歯科医院に、大学病院勤務の後、3年半ほど勤めました。とても研究熱心な先生方で、何にも代え難い経験を積むことができました。なるべく歯を削らない治療もそこで学んだのですが、「接着ブリッジ」という治療法もその一つです。例えば、前歯が1本失われた時、インプラント、義歯などの選択肢がありますが、手術はしたくない、削りたくないという方には歯と同じ形をした素材を接着剤でつける「接着ブリッジ」で治療していきます。歯ぎしりをする方など、歯が取れてしまうリスクがある場合はできませんし、時間は多少かかりますが、通常のブリッジと比べてほとんど歯を削らずに済むため、患者さんには喜んでいただけると思います。また、歯ぎしりやいびきなど睡眠時のお悩みに関しても睡眠時に装着するマウスガードを作製するなど、天然歯を守る相談は多岐にわたって対応しています。
休日はどうお過ごしですか?
書の稽古に10年くらい通っています。教室に着いて40分くらいはひたすら墨をするのですが、気持ちがとても癒やされますね。作品を作る時には、何を書くのか、師匠と相談して決めます。現在待合室に飾っている「幸」という字は、母の名前の一文字でもあるんです。きれいにバランスよく書くのが難しく、これまで何度も挑戦してきた、思い入れのある字の一つです。私の「幸」だけでなく、訪れる患者さんたちにも「幸」を感じていただきたいという願いを込めて書きました。待合に飾っている書は時々違う作品に変えているのですが、楽しみにしてくれている患者さんもいるのがうれしいですね。
読者へのメッセージをお願いします。

開業して30年以上たちました。最初に来院した時は2歳だった患者さんが大人になるまで来てくれたり、自分のお子さんを連れてきてくれたりすることも増えてきました。先日も、幼稚園の頃から知っている子が結婚して、新婚旅行で行ったイタリアのお土産を持ってきてくれたんですよ。そんな長いお付き合いをさせていただけることは、歯科医師として何よりの喜びです。小さな歯科医院ではありますが、患者さん一人ひとりとのつながりを大切に、私にできることを精いっぱいやって、大好きなこの町の役に立っていきたいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とは接着ブリッジ/7万円~、歯間空隙閉鎖術(歯の隙間を埋めるための施術)/1万~3万円
※詳細はクリニックにお問い合わせください。