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高橋 弘 院長の独自取材記事

麻布医院

(港区/麻布十番駅)

最終更新日:2019/08/28

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エレベーターを降りると、そこは病院というよりも応接室のようで、漂う香りもどこか上品で気持ちを落ち着かせてくれる。麻布十番駅のすぐ近くにある「麻布医院」だ。「誰よりも自分が働きたい環境にしたかった」と話す高橋弘院長も、決して白衣は着ないという。ガンや肝炎の研究で海外で活躍してから帰国し、開院。病気の奥深いところまで理解し、適切にくすりを処方し、食事の注意を出してくれる。歌うように話す話し振りは穏やかで深く、センシティブな感覚は芸術家の姿を思わせる。ファイトケミカルという植物の天然成分の活用の第一人者でもある高橋先生に、ご自身の医療のスタイルと特徴、現在の医療の問題、これからの医療のあり方について存分に語っていただいた。
(取材日2013年4月25日)

世界的な研究者から日本の臨床医へ

とても病院には見えないインテリアと雰囲気です。どんなところにこだわっていらっしゃるのでしょうか。

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病院という所は、独特の雰囲気と匂いがあって、病院に行くだけで病気になってしまう気がしませんか? 私は逆に病院に来たら、その瞬間に気分が落ち着いて、治ったような気がするような、そんな環境を作りたかったんです。そのためにはまず、できるだけ“気”の流れを良くします。気といっても非科学的なものではなくて、文字通りの空気です。奥の部屋の窓と、診察室の入り口の窓を開けると、空気が良く通って換気が出来るので、1日3回、決まった時刻に空気を入れ替えるようにしています。それから、空気清浄機を7台入れています。デパートの地下のように、人が大勢集まるところに行くと空気がむっとしているでしょう。そういう場所では空気がよどんで、風邪も引きやすくなります。病は気からと言いますが、その通りで気は目には見えませんが「整えておく」ことが重要です。病院にいらっしゃる方は、心に何か抱えていることもありますから、なごやかな気持ちになるだけで、体の調子が良くなることもあるんです。それに、私自身が行きたい、そこで働きたいと思える環境にしたいという思いもありました。細かいところですが、規模が大きくない病院では、トイレは男女一緒になっていることも多いと思いますが、当院では男女別々に分けていますし、コートを掛けたり、着替えたりできるように広い作りにしています。

先生は研究の実績が多く、開業されているのが意外な印象があります。

確かに、私も最初は開業するつもりはありませんでした。それを説明するには、留学に行ったことからお話ししたほうが分かりやすいでしょう。日本の大学を出て臨床医として始めた当初は、ほとんどが教えてもらった知識を活用していました。治療で大切なことは、病気の本質をつかむことです。例えば風邪ならいろいろな風邪があって、扁桃炎があり、咽頭炎から気管支炎、肺炎もある。高血圧もいろいろあります。脈の速い人、どうしても下の血圧が下がらない人、遺伝的な問題で上がる人、塩分のとりすぎで上がる人、交感神経の緊張で上がる人もいます。病態のバックグラウンドが違うんですね。投薬するならそれを見極めなければならないんですが、それを正確にやるには知識が必要です。それも非常にベーシックな知識です。私は内科専門医として内科全般はもちろん、特に消化器、特に肝臓とガンを専門にしていましたが、臨床で新しい疾患に出会ったときになかなか解決できない。そこを深く勉強するために留学したんです。もともと専門にしていた肝炎、免疫学、ガンに加えて遺伝子も研究テーマにして2年取り組み、一時帰国。その後恩師に招かれ、再び渡米し、ハーバードで講師から準教授まで務めました。

渡米時代には『サイエンス』『ネイチャー』にも論文が掲載されましたが、帰国してからは臨床に戻られましたね。

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『サイエンス』に掲載されたのがガンの免疫療法の論文でしたが、帰国したら臨床で応用したいと思っていました。ちょうど、免疫治療を行う病院が日本にできたところだったんです。日本の大学病院では研究と診療の両立難しくて、患者さんのための免疫治療もできませんでした。免疫療法には元々深い関心を持っていました。それでその病院で勤務するようになりましたが、実は私は、一般の外来にもすごく興味を持っていたのです。特に専門にしている肝臓疾患の外来も診ていきたかったのです。だから、免疫療法を行う病院の他にも、肝臓の専門医として病院を掛け持ちしていましたし、ハーバードでの実績を見込まれて、特殊なメディカルクラブのセカンドオピニオンを務めたりもしていました。転機になったのは、免疫療法の病院が、大きくなって名古屋でも開院することになり、そこに行かないか、といわれたときでした。そこに行くと、免疫療法しかできなくなるだろうと思ったんです。免疫療法はすばらしい治療だし続けたいのですが、それは自分の中の一部で、内科も肝臓もセカンドオピニオンも、やりたいことはたくさんある。そう思ったときに、それを全部一カ所でできる場所を自分で作ろうと思い始めるようになったんです。その折に、たまたま麻布のこの物件に縁があって、開業することにしたんですね。

病気を理解して本質を攻める治療

麻布に開院した縁とは。

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開業なんて少しも考えてなかったときに、1回この物件を案内されて見に来たことがあったんです。他の物件はまったく見てなくて、本当にここひとつだけ。麻布は若い頃からよく来る場所でなじみがあったんです。夜勤や研究で遅くなったときにも食べ物屋さんが開いていましたし、有栖川公園も近くにあるし。お蕎麦が好きなんですが、有名な更科蕎麦屋が3つもありますし、おいしい野菜を置いている八百屋もあります。こういうおいしいものが近くにあったり、好きな環境だということは結構大事だと思うんですよ。最初にここを見たときは開業するつもりもなくて、そのままにしておいたんですが、風のうわさで誰かが開院することになったと聞いていたんです。その後1年以上経って自分の夢を叶えてくれるクリニックを自分で作ろう考えたときに、ここを思い出して問い合わせたら、前の開院予定が白紙に戻っていたところでした。不思議な縁を感じましたね。麻布十番のいいところ、それはこの場所が地に足のついた町であり、切磋琢磨する人がいるということなんです。下町なんですが落ち着いた土地柄で、この地域の人は病気や治療のことにすごく興味をもって話を聞いてくれるんです。

患者さんはどういった方がいらっしゃいますか。

専門は掲げていますが、普通の内科医ですから、風邪などの日常的な疾患の患者さんもいらっしゃいます。ただ、東京都の肝臓専門医療機関に指定されていることもあって、ウイルス肝炎の患者さんに加えて、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)の方がすごく増えています。NASHを診断・治療できる病院はそれほど多くはないのが現状で、なかなかNASHが改善しないと訴えてこられる方も多くいらっしゃいます。中には10年近くずっと治療しても治らないという方もいて、こちらにいらしてスーッと治ったと不思議がっていらっしゃいました。

何か特別なことをされているのですか?

病気のメカニズムを理解していれば、原因はつかめるんですよ。例えば病気は何でも元になる体質や原因があって「予備軍」の状態になります。そこに悪くなる因子が加わると発症します。例えばNASHの場合は、高血圧や高脂血症、糖尿病、肥満などが、ファーストヒット(一つ目の原因)となり脂肪肝になり、その他のある因子がセカンドヒット(二つ目の原因)とし加わると、NASHになる。ある因子とは、活性酸素が発生したり、鉄分を摂り過ぎたり、糖をいっぱい摂ったりすることなんです。糖というのはご飯ですよね。鉄分というのは分かりやすくいうと血の滴る肉やレバーなどです。糖分も鉄分もどちらも必要な栄養素なんですが、摂りすぎると体には良くないんですね。それは糖、脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラルという五大栄養素すべてに言えます。一時はガンも予防する万能薬のように言われたビタミンAだって、摂り方を間違えるとガンの原因にもなるし、ビタミンEの過剰摂取は骨粗しょう症を招くこともあるんです。

食事が大切ということですか。

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そうですね。NASHの患者さんは、徹底して鉄分を減らして、糖分の少ない低GI食品にしていきます。そして、もうひとつ加えるのが「ファイトケミカル」というものです。これは植物に含まれる天然の物質で、有名なものにポリフェノールやイソフラボンがあります。「7番目の栄養素」なんていわれますが、本当は栄養素じゃありません。栄養素というのは体を作ったり、エネルギーになったりするもので、ファイトケミカルは、エネルギーにも人間の体にもなりません。役目は体のバランスをとるコンダクターのようなもの。例えば、糖分を摂るとエネルギーになりますが、これは車のエンジンでガソリンを使うようなもので排気ガスのように活性酸素も出ちゃうわけです。その排気ガスをそのまま放っておけば大気汚染になっちゃいますから、中和作用のあるファイトケミカルを摂れば活性酸素が中和されて無毒化されるということなんです。

ファイトケミカルの力とは

ファイトケミカルにはどんな作用があるんでしょうか。

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例えばトマトのリコピンは、前立腺ガンを抑える作用があります。キャベツや大根に含まれるイソチオシアネートは、肝臓の解毒酵素の誘導で発ガン物質を無毒化してガンを予防する作用がありますし、イソチオシアネートから出るインドールという物質はガン細胞を殺してくれます。イソチオシアネートは、実は虫が葉を食べようとすると産生されるもので、虫にとっては苦かったり辛かったりして食べられなくなるんですが、人間にとっては抗酸化作用があって、ガンを予防してくれるものなんですね。だから、実はファイトケミカルは農学者がすごく研究しています。野菜の苦味をとるような品種改良のためですね。ただ、それを人間に当てはめて研究している人はほとんどいないんです。日本では数人じゃないかな。私もその一人で、「栄養免疫学者」と冗談めかして呼ぶ人もいます(笑)。病気の食事療法というと、「あれを食べてはいけません」「たくさん食べてはいけない」と制限するばかりなんですけど、「これを食べましょう」「これはたくさん食べても大丈夫です」と、積極的な方向に変えると、すごく成果が出るんですよ。例えば、体の抵抗力が落ちている人にバナナやキノコを食べさせると、白血球が増えて少し良くなるんですよね。ただ、ファイトケミカルが人の体の中でどう作用しているのかを知らないと適切な指導ができません。

こちらでは免疫療法も、内科も皮膚科もNASHの外来もありますが、先生1人でやってらっしゃるんですか。

そうです、看護士は常勤4名、非常勤2名ですが基本的に医師は私一人です。いろいろな科を挙げてますが、私にとっては全部一緒。皮膚科もアレルギーは免疫ですから分かるんです。今、日本の大学病院は内科なら、呼吸器科、消化器科、循環器科……と細かく分かれています。しかも外科も同じように細分化している。こうやって細分化すると、患者にとっては、例えば胸が痛いから心臓を見る循環器科に行こう、と選びやすくはなるのですが、一方で、本当は胃液が逆流して胸が痛いだけだったとしたら、循環器では分からず、異常なしとされてしまいます。今は過渡期なんだと思います。今後、免疫や遺伝子、情報伝達などを総合的に学んだ医師がどんどん出てくれば、さまざまな症例をきちんと治療できるようになると思います。例えば、内科では呼吸器科、消化器科、循環器科と臓器別に細かく分かれていますが、それぞれの専門科で扱う病気は、アレルギーや自己免疫疾患などの免疫の病気、ガンなどの遺伝子の病気、内分泌疾患や代謝疾患などの情報伝達異常の病気、感染症などで、臓器は異なっても細胞レベルでみるとどの専門科でも病気に大きな違いはないのです。したがって、免疫、遺伝子、情報伝達、感染症などの基礎的なコンポーネントの内容を深く理解していればどの専門分野の病気にも対応ができるようになるんです。

先生が目指す治療もそこなんですね。

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病気は深いところで見ると、遺伝子や免疫など5つくらいの要素のコンポーネントに突き詰められるんです。そこをやるには、大学病院ではシステムがなくてダメだったんですね。やりたいことができる場所を探して、たどり着いたのが、新しいスタイルで診療を行うことだったということです。そして、本当にやりたいことは、診療を行いながら、新鮮なメッセージを発信して行きたいということです。何か発見したり、感動したときには誰かに伝えたくなりませんか? 例えば絵描きなら絵を描きますよね。私は、研究して何かを発見して、治療法がわかったときに、世の中の役に立ちたいと思うし、メッセージを発信して伝えたいと思います。それが伝わるのが今の診療スタイルなんだと思っています。麻布という土地を選んだのも、そういうことだと思います。

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