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瀬野浦洋 院長の独自取材記事

新宿睡眠メディカルクリニック

(新宿区/新宿駅)

最終更新日:2021/10/12

瀬野浦洋院長 新宿睡眠メディカルクリニック main

最近メディアでも目や耳にする機会が増えたので、この病名をご存じの方も多いだろう。睡眠時無呼吸症候群――これを専門的に診療しているのが「新宿睡眠メディカルクリニック」だ。瀬野浦洋院長は、新宿という大都会でまだ比較的新しい医療を提供する精鋭ドクターだが、一方で高齢者を対象とした地域医療の専門医としての顔も併せ持つ。睡眠時無呼吸症候群の診療を始めたのも、発端は高齢者医療にあったのだとか。だいぶ増えてきたとはいえ、まだその数自体がメジャーではない睡眠の専門クリニック。患者に敷居の高さを感じさせないように、あまり病院らしくない雰囲気作りなどの工夫もしているそうだ。クリニックで飼っているカメの存在もその一つだろう。そんな瀬野浦先生に、睡眠時無呼吸症候群についてご説明いただくとともに、趣味や健康管理などのプライベートなお話までたっぷり伺った。あのビートルズの来日公演を観に行ったという貴重な体験談も飛び出した色濃い内容のインタビューを、ぜひお楽しみいただきたい。

(取材日2012年7月3日)

睡眠時無呼吸症候群の診療は、予防医学においても大きな役割を果たす

ここにはどんな症状の患者さんが来られるのでしょうか。

瀬野浦洋院長 新宿睡眠メディカルクリニック1

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)という言葉は、最近はテレビやマスコミでも騒がれているのでご存じの方も多いかと思います。2003年に起きた山陽新幹線の居眠り運転の事故以来、脚光を浴びるようになりましたよね。実は昔から存在していた病気ですが、診断をする専門医療機関も少なく放置されていたところがありました。呼吸が止まるのは睡眠中なので自覚症状が乏しく、ご家族だったり、旅行などで同室になった友人や同僚から指摘されたりしないと気づくのが難しい病気です。睡眠時無呼吸症候群の3大症状としては、睡眠中のいびきと無呼吸、そして日中の眠気が挙げられます。呼吸が止まっていると本人は苦しいですから、いびきといってもうなり声のようになったりするので、そこでご家族が気づき、ご本人に受診を勧めるというケースが目立ちますね。こうした専門医療機関ではいびきの合間に無呼吸があるかどうかを診断して、症状によって治療法を決めていきます。

睡眠時無呼吸症候群を治療せずにいると、どのようになりますか。

睡眠中に無呼吸があるとメタボリックシンドロームの原因になったり、高血圧、糖尿病の原因になることもあります。当クリニックで睡眠時無呼吸症候群の治療をされている方でも8割程度で肥満の傾向が見られます。肥満になるとどうしても首の周りが太くなりますので、仰向けに寝た際に気道が塞がりやすくなってしまうのです。一方、無呼吸が発生すると睡眠中の新陳代謝が悪くなるため、夜に召し上がったものが消化されずに体重が増える結果になるケースも見られ、まさに相関関係にあるといえます。患者さんは30〜50代くらいの働き盛りの男性が多いのですが、最近の若い方は小顔で顎が細い方も多いので、やせ型の方でも発症するケースが増えています。また、70歳を過ぎると4人に1人くらいの方がこの病気になりやすいといわれています。顎を支えている筋肉が下がってくると自然と睡眠中に口が開いてしまい口呼吸となり、それが気道を狭くする原因となるからです。ただし眼鏡をかけても視力は戻らないように、こちらでの治療はあくまでも対症療法なんです。例えば肥満の方ならダイエットをしていただくことが根本的な解決策にもつながりますので、そうした生活習慣に関わるアドバイスなどもさせていただいています。

さまざまな診療科目がある中で、睡眠時無呼吸症候群の治療をしようと思った理由は?

瀬野浦洋院長 新宿睡眠メディカルクリニック2

実はこのクリニックを開設する前に、13年間ほど神奈川県の座間市でクリニックを開業しており、そこで在宅や訪問診療などの高齢者医療を行っていたんです。ただ、年月が経つにつれて寝たきりや認知症などの高齢者の数はどんどん増えていきますよね。もっと先のことを見据えて、20年後にもしも団塊の世代がそんな状態になったらと考えた場合、予防医学の大切さを感じたのです。具合が悪くなってから治療するのではなく、まずは寝たきりや認知症患者を増やさない予防的な診療はないだろうか。そこでたどり着いたのが睡眠時無呼吸症候群でした。潜在的に、全国で200万人くらいの罹患者がいると推定されているのですが、現在、治療を受けている方は約25万人。残り175万人ほどの罹患者の存在、放っておくと脳卒中や心筋梗塞の原因などにもなりかねません。皆さん、食事や運動には気をつけていますが、睡眠に関しては後回しにされがちでしょう。ですので睡眠の大切さということも皆さんにご案内しなければいけないと思って、このクリニックを開設しました。

超高齢化社会を見据えて、将来的には在宅診療の経験を生かすようなスタイルに

以前は在宅診療に携わっていたとのことですが、どのようないきさつで始められたのでしょう。

瀬野浦洋院長 新宿睡眠メディカルクリニック3

聖マリアンナ医科大学を卒業した後、高齢者の診療を専門とした病院に勤務していたことがあったんです。そこで患者さんたちといろいろなお話をさせていただいた時に、皆さん希望されるのが「家に帰りたい」ということでした。ちょうど家庭の事情や受け皿の問題で長期入院をされている、いわゆる社会的入院が多い時期だったこともあったのでしょうね。自宅で医療を受けられるようにするためには往診する医師が必要ですが、それを行っているドクターの数が足りないという背景がありました。実は他界した私の父も医師で、50年くらい板橋で開業医をしていたんです。それこそ外来も往診もやっていましたから、僕からすれば医師が往診するのは当たり前という感覚があったんですが、自分が医師になってから周囲を見ると往診や在宅診療をしている病院はほとんどないのが現状でした。それならば、ということで患者さんのニーズに応えるべく、自分で在宅診療や往診を始めたんです。

医師をめざしたのは、お父様の影響だったのでしょうか。

そうですね。やはり父の影響が大きかったと思います。父は内科医でしたが、その当時は医師が少なかったこともあり、内科・外科・放射線科など多科目をオールマイティーに診療していました。今でいうところのホームドクターですね。子どもの頃からそんな父の姿をずっと見ていましたから、僕にとっては医師といえばそんな診療スタイルが当然だったんです。在宅診療は、医師にとっては忙しくて大変というイメージもあるかもしれませんが、幼い頃から父の姿を見ていたので僕には抵抗がなかったんですよ。けれど父のような医師になりたいと思う一方で、別の職業に憧れたりもしました。高校時代にバンドを組んでドラムを叩いていたので、芸能界に入りたいという夢も抱いたことも。仮にデビューしていたとしても売れなかったと思いますけどね(笑)。今はこうして医師になれたことをありたがいと感じていますし、この仕事が僕にとっての天職だと思っています。

診療などで、これまでに印象に残っているエピソードなどがあれば教えてください。

瀬野浦洋院長 新宿睡眠メディカルクリニック4

患者さんとのエピソードではないのですが、在宅診療をしていて良かったと感じたことがあります。父は仕事中にくも膜下出血で倒れたので病院で亡くなりましたが、母は家で看取ることができたんです。最後は寝たきりのような状態でしたが、自分が在宅医療に携わっていたおかげで、どんなふうに関わればいいかという知識もあったので、それを母にしてあげられたのが良かったなと思います。僕自身もできれば家で最期を迎えたいという思いもありますから、同じように感じていらっしゃる方たちの力になっていきたいですね。この先、睡眠時無呼吸症候群の患者さんもどんどん高齢化していくため、通院するのが困難になるケースも予想されます。そうなった時に、これまでの経験を生かして、将来的にはこちらからご自宅にお伺いして診療するような形を取っていければいいなと考えています。

今後の夢は、お年寄りの方々が楽しく暮らせるような場所を自分の手で作ること

先ほどバンドのお話も出ましたが、診療室にビートルズのCDが飾ってありますね。

瀬野浦洋院長 新宿睡眠メディカルクリニック5

ちょうど僕が15歳の時に、ビートルズが来日したんですね。その頃は本当にビートルズの影響を受けまして、手に入れるのがとても難しいといわれた武道館公演のチケットも探しました。もう時効かと思いますが、授業をさぼって観に行きましたよ(笑)。武道館の最上階のほうの席でステージも遠くて、女性の悲鳴でほとんど音も聴こえないんですけど、同じ空間にいて生の演奏を観られたというのはとても貴重な体験だったと思います。そのプラチナチケットは今も診療室に飾ってあるので、患者さんからも「あのビートルズの武道館公演に行ったんですか?」と聞かれることも多いですね。昔からピアノを習ったりしていたので、音楽自体には興味があったものの、ビートルズやGSを聴いた時は本当に新鮮でした。今は忙しくてなかなか楽器を演奏する時間が持てないのですが、たまにバンド活動などに参加させてもらっています。あとは読書も好きですね。

日頃から行っている健康管理などはございますか。

やはり快食・快便・快眠が基本ですよね。快眠についてお話すると、人間にとって一番重要な成長ホルモンの分泌が、夜の10時から12時の間に寝ないと低下するといわれています。当然、肌にも影響しますから美容やアンチエイジングなどが気になる女性の方は、できるだけ夜の12時前にお休みになっていただくのが理想です。睡眠時間については、統計的には7時間くらいお休みいただくと糖尿病になりにくいともいわれていますが、皆さんお忙しいので夜の10時に寝るのは難しいという面もあるかと思います。夜に十分な睡眠ができなかった場合は、例えば昼食後に15分くらい仮眠を取っていただくのも効果的でしょう。ただし30分以上寝てしまうと今度は夜の睡眠に影響が出てしまうのでご注意ください。

先生の夢や、今後の展望についてお聞かせください。

瀬野浦洋院長 新宿睡眠メディカルクリニック6

自分もだんだん年を重ねて高齢者になるわけですから、その時に「終の棲家」というものがあればいいなと思います。渡辺淳一さんの『エ・アロール』という小説があって、そこには価値観の合った高齢者同士が一緒にお洒落な老人ホームで暮らす内容が描かれているんです。僕もそんな施設を作ってみたいですね。まずはモデルケースとなるような何かを自分の手で作りたいというのが夢なんです。僕はちょっと早口で少々せっかちな性格です。ですから談話室でカメを飼っているのも、反面教師みたいなものでしょうか。カメさんを見ながら、こんなふうにゆったりした生き方をしなきゃいけないな、と。ただ、クリニックに生き物がいるというのは患者さんにとってもプラスになっているようです。談話室は検査の結果をお伝えする時などにも使うのですが、カメさんに興味を持たれる方が多いですし、スタッフも癒されているみたいです。最後に、現在も睡眠時無呼吸症候群の症状で日常困っている方々が一人でも多く、一日でも早く治療を受けていただくよう、診療を続けたいと思います。

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