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酒井 隆 院長の独自取材記事

荏原中延クリニック

(品川区/荏原中延駅)

最終更新日:2020/04/01

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荏原中延駅を降りて駅前商店街を少し脇に入ると現れる「荏原中延クリニック」。心療内科、皮膚科を標榜し、認知症疾患の治療にも力を入れている。下町の診療所として開業から20年以上、地域の人のより良い暮らしのため、治療と生活サポートにあたってきた同院。デイケアや体操教室、認知症カフェといった多方面にわたる取り組みも印象的だ。「患者さんの人となりを大切にしたい」と話す酒井隆院長に、地域への思いや大切にしている考えなどを聞いた。
(取材日2017年9月25日)

パーソンセンタードケアを地域で実践

この地に開院されて、20年以上と伺いました。

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この地は私が生まれ育った「わが町」です。この地域の温度を感じながら、認知症、うつ病、神経症、パニック障害、などの診療を行う心療内科、さらには皮膚科の専門医師による外来を併設して早25年たちました。当院がめざすのはパーソンセンタードケアすなわちその方の人となりを大切にする医療です。開院以来、臨床心理士、精神保健福祉士などの専門資格を持つスタッフとともに患者さん・ご家族をサポートしてきました。またケアマネジャーや訪問看護師さんたちとも連携を取りながら質にこだわった医療を展開してきました。

認知症診療にあたって医師としての役割をどう考えていますか?

当院の患者さんの半分は認知症の方です。当院は、都が各区ごとに一ヵ所指定している「認知症疾患医療センター」にあたります。認知症の診断と薬の部分はもちろん大切ですが、根本的に治す薬が見つかっていない現在、その後の生活をどう送っていくのかを考えることが、より大切だと思います。そのためには、ご本人・介護者をはじめとした、かかりつけ医やケアマネジャー、訪問看護師などのチームをつくり、認知症医学目線からの情報を発信することが特に重要な役割だと考えています。また、介護者ご自身の体の健康や介護ストレスに対する配慮も大切なことだと思います。当院においてはご本人の診察とは別に、介護者の方だけの診察も行い、認知症の症状や行動の捉え方、それに対する工夫についてもアドバイスをしています。必要に応じて臨床心理士によるカウンセリング、看護師による相談もご案内しています。

医師としてどのような考え方を大切にされていますか?

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私が大学病院に所属していた頃は、今のように地域支援の重要性が叫ばれていなかった時代なのですが、その頃から地域における活動の重要性をたたきこまれました。具体的には、保健所での相談業務などにも私たち新米医師が携わっていました。そういった活動の中で学んだことは、医学的知識だけでは駄目だということです。また、医師がどのように伝えたかではなく、患者さんにどのように理解していただいたかが大事だと学びました。それは、患者さん一人ひとりに真摯に向き合う姿勢につながっているかと思います。医療はサービス業の一つで、人に喜んでいただく仕事です。医学がいくら進歩してもデータだけで成立するものではなく、患者さんにもご家族にもお目にかかってコミュニケーションを重ね、信頼関係を築いていくことがとても大切です。それぞれにオーダーメイドの対応をしていくものだと思っています。

一人ひとりにオーダーメイドの対応を

診察の際には、患者さんを待合室に呼びに行かれるそうですね。

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それは、第一に「ようこそ」という気持ちを伝えたいためです。少し敷居が高い診療科の門をたたいてくださったこと、当院を選んでくださったこと、また皮膚科以外は予約制なのですが、天候の悪い中予約時間どおりにお越しくださったこと。そんなことを思うと自然に「ようこそ」が湧いてるんです。このスタイルを皮膚科医を含めた当院の医師4名全員がとっています。さらには待合室に行くことで、これから診察する患者さんの今日の様子、医師の前でのかしこまった様子ではない自然体の様子がわかり、密度の濃い診療に役立っています。

スムーズな診療を行う上での工夫をお聞かせください。

待合室での様子が気になる患者さんには、ベテランの相談員が事前に適切な対処をしてくれるので、それも密度の濃い診察につながっています。具体的には血圧を計ったり、同行のご家族に、患者さんの前ではお聞きしにくいことを別室で確認して医師に伝えたいことを事前に整理するなど、臨機応変に対応できる体制をとっています。患者さんご自身は認知症だとは思ってもいない場合もありますし、トイレの問題や介護負担の大きい問題について、ご家族に事前に伺っておいたほうがよい事情というのもありますから。そのほか、必要に応じて○×式シートで、前回受診からの生活のご様子などを記しておいていただくことで、スムーズな診療に役立てています。

認知症以外にはどのような患者さんがおられますか?

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パニック障害やうつ病といった病気の方ですね。20代から、多くは働き盛りのビジネスパーソン、出産後のマタニティーブルーを抱えている方、定年を迎えて生活リズムが変わったり、お子さんが独立して手が離れ戸惑われていたりする方などがいらっしゃいます。治療にあたっては「お聞きする」ことから始めます。患者さんご自身が心の内を言葉にすることで整理がつくことも少なくありません。その上で薬を中心にするのか、心理療法が大切なのかを見きわめていきます。薬物療法については専門的な知識を駆使しながら、その方に合った治療法を一緒に考えていきます。心理的アプローチが重要な場合は臨床心理士のカウンセリングをアレンジすることもあります。

地域の高齢者や認知症の人が悩みや情報を持ち寄る場に

精神科のお薬についての著書もおありですね。

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「こころの治療薬ハンドブック第10版」という本の編著者を務めました。私はもともと、心理学に興味を持ち精神医学の道に入りました。次第に薬が効くのはなぜ? 人によって効き方が違うのはなぜ? お年寄りはなぜ薬に弱いの?といった疑問がどんどん膨らんできました。その中で薬理学は私にとってその謎に迫る大切な学問になりました。自分でも柱としている一つなのです。認知症の薬も近年、選択肢が増えています。ただ、認知症は異常なたんぱく質が脳に徐々にたまって神経細胞を壊してしまう病気なのですが、今ある薬は、元気な細胞の働きを活発にすることで病気の進行を先延ばしにする考え方です。そのたんぱく質の悪影響そのものを絶つ薬ができれば画期的ですが、まだ時間がかかりそうです。

デイケアなどのさまざまな取り組みについてお聞かせください。

デイケアは当院の1階で、少人数グループでさまざまなプログラムや生活で役立つリハビリテーションを行っています。軽度認知障害(MCI)という、対処次第ではその後の生活の質を長期間高いまま維持できそうなグループや、脳梗塞や交通外傷による高次脳機能障害のグループなどがあります。後者は主に専門病院での治療を終えた方が中心で、自分ができていない部分や克服すると生活しやすくなる点などへのお手伝いをしています。また、2017年12月より新たな取り組みとして「スタジオふわり」がスタートします。これは認知症の患者さんご本人とご家族、地域にお住まいの高齢者の方を対象とした体操教室です。専門のインストラクターと当院の看護師が担当させていただきます。認知症の患者さんとご家族でひとつのことを一緒にやる場を設け、それが穏やかな生活のきっかけに少しでもなればという思いで設立しました。

新たに認知症カフェも始められたそうですね。

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常々、お年寄り一人で、あるいはご家族や福祉の方と一緒にお昼ごはんが食べられる「みんな食堂」をつくりたいと考えていました。しかしながら現実的には解決すべき運営課題があり、実現はまだ先になりそうです。そこでまず第一歩として、日頃からよく接している認知症のご家族を中心に地域の方にも参加していただける「場づくり」から始めました。飲み物は提供いたしますので、ご自分のお弁当を持参してそこで召し上がっていただくもよし、おしゃべりして過ごすのもよし。困り事や悩み事、地域のお得情報、介護の耳寄り情報、いろいろなものを「持ち寄る」場所にしたいとの思いを込めて、名前を「中延もちよりカフェ」としました。コミュニケーションロボットをはじめとして、便利グッズの展示や紹介を行っております。介護や健康に関する専門職からのお話も計画しています。

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