永倉 仁史 院長の独自取材記事
ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック
(品川区/目黒駅)
最終更新日:2021/10/12
現在、3人に1人がアレルギー性鼻炎や喘息など何らかのアレルギー疾患を持っているといわれる。そんな患者たちの悩みに対応するのが「ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック」だ。院長を務めるのは、患者の気持ちを理解することを何より大切にする、永倉仁史先生。さまざまなアレルギー疾患に精通したエキスパートで、耳鼻咽喉科の一般診療をはじめ、各種アレルギーの治療を行っている。さらに耳鼻咽喉科ではまだ少ないという、スポーツ選手の健康管理やスポーツによるケガの治療などにあたるドクターでもある。アレルギー疾患を抱えるスポーツ愛好者やアスリートにとって、心強い存在だろう。取材の中ではスギ花粉症の新しい治療法にも言及しているので、花粉症で悩んでいる人はぜひチェックしてみてほしい。
(取材日2018年7月25日)
常に「患者にとっては主治医がすべて」と考える
まずは先生の子ども時代についてお聞かせください。
クリニックの近くで生まれ育ったため、この辺りは昔から慣れ親しんだ場所でした。自然にあふれた素晴らしい環境の中で伸び伸びと遊ぶ一方で、図鑑を見たり博物館へ行ったりすることも大好きでした。私の父も耳鼻咽喉科の医師で、ずっと大学病院で勤務医をしていました。幼い頃、私は父が勤める下町の病院に虫歯の治療に通っていて、歯の治療後に父のところに寄るんですが、いつも外来の最中で……。患者さんを診ている時は家族が会いに行っても相手にしてもらえないので、ずいぶん待たされました。そんな時は、父の診療している姿をじっと見ていましたね。父は本当にいつも忙しそうでしたから、子どもながらに「お医者さんて大変なんだな」と感じたことをよく記憶しています。
医師になったのは、やはりお父さまの影響が大きかったのですか?
それはあったと思います。父は母校を心から愛して誇りにしていましたから、私たち兄弟はみんな父の出身校である東京慈恵会医科大学を卒業しています。ちなみに兄は小児のアレルギーの専門家になりました。父は出張病院の部長を任されて定年まで勤め上げた後、郷里に帰って診療したいと言い出しました。その頃だと60歳を過ぎてから新たな環境で働くのは異例だったと思います。結局それから20年以上静岡県の沼津で開業医を続けたので、生涯診療していたような印象があります。父にとって診療はおそらく生活の一部だったのだと思います。亡くなってから9年になりますが、体力の続く限り治療していた姿を本当に尊敬しています。
ほかに先生が医師をめざした理由はありますか?
私は子どもの頃斜視でした。小さい頃に手術を受けましたがうまくいかず治りませんでした。小学生くらいになると自分でも気にしていたのを覚えています。それでもう一度手術が必要だということになって、今度は父の同級生に、その後母校の眼科教授になった先生ですが、腕を信頼しその先生にお願いしました。今度はいとも簡単に治りました。その時に感じたのが、病気は手術法を選んだり、正しく治療したりすれば治るということです。自分にとってもこのことは大きかったですし、子ども心にもうれしかったですね。こんな経験もあって、自然と医療の道に進むことを決めていました。
普段の診療で先生が心がけていることを教えてください。
最も大切にしているのは、どんなに忙しくても相手の身になって考え、話をよく聞くことです。医師にとって、目の前にいる患者さんは診察で出会う何十人何百人の中の1人ですが、患者さんからすれば、その時に診てくれている医師というのは、自分にとってすべてといって良い存在。それに治療のヒントとなる情報は、患者さんが話してくれるものですからね。
花粉症治療に注力しつつ、スポーツ選手の診療にも対応
どんな症状の患者さんが多いですか?
アレルギー性鼻炎の方が多いですね。喘息やアトピー性皮膚炎を持っているなどその症状はさまざまで、当院ではできる範囲でトータルに診療したいと思っています。診療では、内視鏡を使って患者さんに画像を見てもらいながら、病気の状態や治療内容を詳しく説明しています。ただし、私の説明を全部覚えられなかったり忘れてしまったりする方もおられるので、パンフレットを作って渡し、十分に治療内容を伝えられるよう心がけています。また、必要な場合は積極的に大学病院などを紹介します。開業に際してこの場所を選んだのも、大学病院と密に連携したいと思ったから。患者さんには適切な治療を受けてもらいたいですからね。
花粉症に悩む方も増えているそうですね。
花粉症はもう日本人にとっては国民病といっていいほど重要な課題です。ここ何年か、文部科学省でもスギ花粉症の克服に向けて力を入れていて、仕事を委託されたりしました。新しく取り入れられた「免疫療法」は、これからもっと進歩していくと思います。これまで花粉症といえば、薬を使って抑える「対症療法」と、アレルギー症状を起こす原因物質を注射して少しずつ体を慣れさせていく「減感作療法」がありました。この「免疫療法」で注目されているのが「舌下免疫療法」という、舌の下に薬を入れる方法です。スギ花粉症とダニに対しては保険適用となりました。注射は痛いし、腫れたりすることもあるし、何度も通院する煩わしさもありますが、経口なら服用も簡単、子どもでも取り入れられるというメリットもあります。
スポーツ選手の診療にも携わっておられると伺いました。
アレルギー性鼻炎や喘息などの症状を持つスポーツ選手が多い中で、運動の環境や条件を理解して治療できる耳鼻咽喉科の医師は、まだまだ不足しています。自分も運動好きなので実感しますが、運動中に鼻がつまっていたら苦しいですし、それでコンディションが悪くなったら困ります。また競技者にはドーピング問題などの課題もありますから、そうしたことに対応していきたくて、スポーツ選手の診療に携わっています。主に水泳が多いですね。日本水泳連盟の下に「日本水泳ドクター会議」という水泳が好きな各科の医師たちが集まったグループがあり、年1回、総会と研究会を行っています。普段は競技会の時に医務室の救護班を持ち回りで行うといった活動をしています。中にはオリンピックなどの国際レベルの大会に関わるドクターも。それと今は「ダイビングと耳鼻咽喉科」についても注力していて、減圧症を含め潜水医学をより勉強していきたいと思っています。
子ども連れや女性が通いやすいクリニックに
患者層について教えてください。
生後数ヵ月の赤ちゃんから高齢の方まで、幅広い年齢層の患者さんが風邪をひいた、咳が止まらないとおみえになります。この辺りには大使館などが多いせいか、外国人の方も目立ちます。ベビーカーや車いすでも通いやすいようバリアフリーにしました。お母さんが風邪をひいたら、ベビーカーを横に置いて赤ちゃんをあやしながら治療を受けてもらえるように、お母さんが聴力検査をしている時には、待っている子どもからガラス越しに様子が見えるように工夫しました。また受付を中心に院内を見渡せるようにして、隅々まで気が配れるようにもしています。プライバシーにも配慮した院内レイアウトになっていますので、女性の方も受診しやすいと思います。
健康管理で実践されていることは?
自分の体調が良くないと仕事に差し支えますし、患者さんにもご迷惑がかかってしまうので、食事には気を使っています。それから週1・2回スポーツクラブに通い運動をしています。以前ケガをしたこともあって、トレーニングは欠かさないように心がけているんです。気分もリフレッシュできて心身ともにリセットできるのがいいですね。患者さんと対峙する時、自分の体調不良で患者さんの容体を見過ごしたりすることがないよう、いつも100%感性を研ぎ澄ました状態で仕事したいという思いが強いので、そのためにも常にベストな体調を維持したいと思っています。
今後やってみたいことをお聞かせいただけますか?
スポーツ全般が好きで、水泳やテニスをはじめ、ほぼ何でも経験しました。まとまった休みが取れたら、海に行ったり運動したりしたいですね。そして、もっといろいろなものを見たいと思います。例えば日本でも世界でも旅行して、刺激を受け見聞を広めたいという気持ちが強いです。開業してから今年で13年目を迎えますが、もっとこのクリニックを良くしていこうと走り続けているような状態ですね。もう少し余裕ができたら、自分のライフワークのようなことも考えていきたいと思っています。