松本 有紀 院長の独自取材記事
桃山レディースクリニック
(京都市伏見区/丹波橋駅)
最終更新日:2026/10/07
近鉄丹波橋駅の東出口を出ると、すぐ右手に和風モダンな2階建ての建物が見える。2026年6月に開院した「桃山レディースクリニック」だ。院長の松本有紀先生は、周産期母子医療センターや産婦人科病院で研鑽を積んだ日本産科婦人科学会産婦人科専門医。自身も3人の子どもを育てる母親であり、さばさばとした語り口の中ににじむ温かさが頼もしい。アート作品が飾られた院内は、プライバシーに配慮した動線やバリアフリーが整い、ほっと一息つける空間。「『これにしましょう』ではなく、『これにしてみませんか』と提案するのです」と話すように、患者自身が納得して治療を選ぶ「自己決定」を支えることを重視している。思春期から更年期まで女性の人生に寄り添う伴走者でありたいという松本院長に、セルフチェックの重要性や診療への思いを聞いた。
(取材日2026年9月10日)
故郷・伏見で、女性の人生の伴走者となりたい
開院までの歩みと、この場所で開業されたきっかけを教えてください。

藤田医科大学を卒業後、周産期医療や婦人科腫瘍、手術に強い基幹病院で3年間研鑽を積みました。多くの症例を経験し、産婦人科専門医を取得。その後は京都大学の医局に所属し、京都市内の複数の病院で周産期や手術の研鑽を重ねてきました。3人の子どもを育てながらの勤務で、当直が難しくなってからは、市内の産院に移り、キャリアをストップすることなく6年間しっかり現場で経験を積むことができました。伏見は中学生の頃から暮らしている地元で、実家も徒歩10分ほどの距離にあります。当初は50歳くらいでの開業を漠然と考えていたのですが、縁あって駅前の立地の良いこの場所と出合い、このタイミングで挑戦してみるのも面白いかもしれないと思い、開業を決断しました。
先生にとって、婦人科はどのような場所であるべきだとお考えですか。
女性の人生は、結婚や出産、介護、更年期と、節目ごとに大きな変化があります。それを「女性だから我慢しなさい」で片づけてしまう風潮があったと思いますが、それは違うと思っています。体の不調はもちろんですが、大変なことがあって調子を崩しているというお話を聞く場所でもありたいと思っています。何かあったら「先生に話を聞いてもらおう」くらいの気持ちで来ていただけたらうれしいですね。話しに来るだけでもいいですし、その中で検診など必要なことを進めていけばいい。めざしているのは、婦人科でありながら、女性のお悩み全般に対応する外来のような雰囲気のクリニックです。不調があったら「とりあえず行ってみよう」と思ってもらえる、地域の女性のかかりつけでありたいと考えています。
どのような段階で、婦人科を受診すればよいのでしょうか。

生理がちょっと気になった、という段階でもぜひ来てください。婦人科の範囲かどうかわからなくても、女性であればまずお話を聞きます。婦人科でなければ適切な科へご紹介しますし、お子さんのことで小児科には相談しづらいという内容も、まず伺った上で必要な科へおつなぎします。内診に関しては、まずおなかの上からのエコーで確認し、それだけでは適切に把握しきれない場合に、こういう理由で必要ですよとご説明した上で、同意をいただいてから検査を進めるようにしています。検査がつらい経験になって、次に必要な時に受診をためらうようになってほしくないのです。大切なのは、何かあった時に「行ってみよう」と思える関係を続けていくこと。そのための配慮は大事にしています。
体の変化に気づく習慣が、健康を守る第一歩に
年代ごとに多い相談や、診療の特徴を教えてください。

思春期の方で多いのは月経痛や月経不順、それから子宮頸がんワクチンのご相談です。思春期の方には内診はせず、おなかの上からのエコーで病気がないかを必ず確認します。親御さんの安心にもつながりますし、治療として漢方薬やピルをご提案する際の根拠にもなります。ピルについて「この年齢の娘に飲ませるのが怖い」とおっしゃる親御さんもいらっしゃいますが、丁寧にご説明しています。ピルは種類が豊富で含まれるホルモンも異なりますから、しっかりお話を聞いた上で、婦人科医として専門的な視点から一緒に選ぶのが当院の方針です。院内処方ですので、帰りに立ち寄ってすぐ受け取れます。30代後半からのプレ更年期や更年期の不調にも対応していますので、気になったときにご相談ください。
体調の変化に気づくために、日頃からできることはありますか。
最近はアプリで生理周期を管理している方も多く「ちょっとずれたから気になって」と受診される若い方が増えていますね。こうした日頃の小さな気づきはとても大切です。私はフェムケアグッズの監修にも関わっているのですが、フェムケアの根底には「女性の体を労って大切にしよう」という精神があるんですね。例えば毎日10秒でもフェムケアの時間をつくると、体調の定点観測になります。忙しくて改めて時間を取るのは難しくても、10秒や1分なら続けられますよね。その中で「いつもと何か違うな」と気づけたら、それが受診のきっかけになります。大事なのは、ふと気になった時にそのまま来られるような婦人科であること。当院はそういう場所でありたいと思っています。
定期的な婦人科検診の大切さについて、先生のお考えを聞かせてください。

子宮頸がん検診は、受診率が約2割にとどまっているのが現状です。来てくださる方は意識の高い方が多いので、つい皆さん受けているように感じがちですが、まだまだ少ない。まずは行政が実施している2年に1回のがん検診を活用していただきたいと思いますが、毎年来ていただけると、ご自身の体調や病状の変化に早い段階で気づくことができます。そのためにもかかりつけの婦人科を持っていただけたらと。「来年もこの人来てくれるかな」と、私はいつもそのようなことを考えながら診療しています。「ここなら毎年行ってもいいかな」と思えるような雰囲気づくりは、常に意識していますね。
自分の体のことは、自分で決めていい
クリニックの環境づくりで、こだわった点を教えてください。

当院は女性医師と女性スタッフによる診療体制です。完全予約制で、24時間対応のオンライン予約で当日でもご予約いただけますし、キャンセルや変更も気軽にできます。院内は1階が受付と待合室、2階が診察フロアという構造で、来院される方と帰られる方が鉢合わせしにくいよう動線を分けました。個室での問診にも対応し、プライバシーに配慮しています。子育て中の方にはベビーカーで入れるおむつ替えスペースもあり、手すりは角を丸くするなどバリアフリーにも配慮しました。壁面には華道家に見立てていただいたアートを飾り、ほっとできる空間を意識しています。ピルなど定期的なお薬は院内でお渡しでき、検査結果はオンライン診療でもお伝えできますが、じっくりお話しすべき内容は対面で伺います。
今後、どのようなクリニックをめざしていきたいですか。
保険診療を軸に、女性の健康の土台をしっかり守っていくクリニックをめざします。健康であるからこそ人生を謳歌できて、毎日が楽しくなる。そもそもの健康のところを診ていきたいのです。今後はオンライン診療をピルの処方などにも広げていきたいと考えていますが、めざしている方向性はとてもシンプルです。どのような小さな不調でも、気軽に相談に来てもらえる場所であり続けること。婦人科ではありますが、ご自身の体のこと、お子さんのこと、日々の中でつらいなと感じていることも含めて何でもお話しいただきながら、健康を良くするための情報や医療を届けていきたい。そのような女性のかかりつけとして、長くお付き合いいただけるクリニックをめざしています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

クリニックは、治療法を決めてもらう場所だと思っている方が多いかもしれません。でも私は、自分の体のことは自分で決めていいと考えています。私がいつも心がけているのは「これにしましょう」ではなく「これにしてみませんか」と提案すること。治療の選択肢と必要な情報はしっかりお伝えしますので、最終的に「そうします」と決めるのは患者さんご自身です。自分で選んでいるのだという感覚を持てれば、人生の幸福度は上がると思うのです。「そうは言っても決められない」という方もいらっしゃるかもしれませんが、決められるように支えていくのが私の仕事です。どのような小さなことでも構いませんので、気軽に相談しに来てください。
自由診療費用の目安
自由診療とはピル処方(1ヵ月分)/2750円~

