竹之内 菜菜 院長、小澤 寛史 さんの独自取材記事
あだち在宅クリニック
(足立区/谷在家駅)
最終更新日:2026/09/11
2026年7月に開院した在宅医療専門の「あだち在宅クリニック」。竹之内菜菜院長は、大学病院で消化器内科の診療や救急医療に取り組む中で、在宅医療に興味を持ち、同院が属する法人グループの在宅クリニックで経験を積んできた。一方、小澤寛史さんは訪問看護に携わってきたが、同院の開院を機に在宅医療の支援に取り組むことに。生活に根差した視点に立ち、患者と家族の生活を支えたいと在宅医療に二人三脚で取り組む2人に、同院の特徴や在宅医療、地域連携について、今後めざすところを聞いた。
(取材日2026年8月20日)
患者の生活に根差した視点で、医療と生活支援を提供
御院は開院されたばかりと伺いました。

【竹之内院長】当院は、足立区を拠点に在宅療養支援診療所として24時間365日診療を行う在宅医療専門クリニックで、一部、埼玉県や千葉県も対象としています。現在は、ケアマネジャーや、患者さん・ご家族からの依頼が少しずつ増えているところです。大事にしているのは、極力患者さんをお断りしないことと、往診の依頼があったときはできるだけ医師が足を運ぶようにしていることですね。法人のネットワークがありますので、他の診療科の先生に相談することもできますし、法人としての実績や経験を生かして、地域の皆さんに安心していただけるような、医療と生活支援を両立させたサービスを提供したいと思っています。
お二人のプロフィールを聞かせてください。
【竹之内院長】医師の多い家系で育ち、自然と医学部を選びました。学生時代はいろんな挫折を経験して、ときには反発もしたりしていましたね(笑)。でも勉強できる環境のありがたみを感じて、結局は医師を志しました。卒業後は日本医科大学付属病院の消化器内科に入局し、救命救急にも携わり、その後、2020年に当法人に入職して在宅医療を経験しました。当法人は千葉県を中心に在宅クリニックを展開していますが、以前から、足立区に関連する高齢者施設があり、当院を開院する構想がありました。私は自宅が近隣の川口市にあるので、なじみのあるこの地でいずれは院長を担いたいと研鑽を積んできました。
【小澤さん】私は、大学卒業後、一般企業に就職したのですが「合わないな」と悩んでいた時に介護士の母の助言もあり、看護師になりました。病院勤務を経て、約7年間訪問看護に携わり、2026年6月にこちらに入職しました。
お二人は以前からのお知り合いであると聞きました。

【竹之内院長】夫が介護関係の仕事をしていた時に小澤さんと同じ職場で、家族ぐるみのお付き合いをしてきました。小澤さんは、看護技術に関してはもちろん、患者さんやご家族への対応も安心して任せられるので、お声がけしたのです。今は、看護だけでなく事務や相談対応もお願いしています。
先生の診療方針や診療の特徴を教えてください。
【竹之内院長】医師としての視点だけでなく、女性であり子育てもしているという生活に根差した視点も大切にしています。というのも、在宅医療の患者さんに対しては、医療行為として行うことは限られていて、病気を抱えた生活をいかに工夫して充実させていくかが中心になります。生活面で、何が苦労なのか、ご家族が何に困られているのかは、生活に根差した視点で見なければ気づけないこともあるでしょう。いわゆる見えない家事など、生活者目線で患者さんの生活や介護されるご家族の負担を把握して、多職種と連携し、現実的なケアや処置などの助言も行えるところが特徴だと思っています。
消化器内科の専門性を生かし、介護の負担軽減にも注力
救急医療や消化器内科の経験はどのように役立っていますか。

【竹之内院長】救急医療で、一般的な疾患に関しては一通り経験しているので、消化器以外の疾患も診られるところは強みかと思います。また、在宅医療では、便秘や下痢といったお通じの問題がとても重要になってくるので、消化器内科の専門性は役立っています。私も、以前はこれほど大きな問題だとは気づいていなかったのですが、在宅医療に携わるようになってから、便秘や下痢のトラブルは患者さん本人の尊厳にも関わり、ご家族も本当に苦労される重大な問題だと痛感しました。在宅医療では、病気を治療すればいいというものではなく、周辺の日常生活の困り事を解決することが求められます。どのような症状に対しても、常に介護者の負担を考え、いつまで続くかわからないというつらさにも配慮することを心がけています。
先生が在宅医療に取り組むようになったきっかけなどはありますか。
【竹之内院長】大学病院で、消化器内科への通院を中断した患者さんが救急搬送されたことがありました。中断したのは生活保護の受給中は通院できたが、社会復帰したら仕事で時間が作れず、費用の負担も難しく、通院できなくなったということでした。治療を受けたいが通院が難しい、病院に行くべきなのに心身の負担が大きく受診できないといった理由で病状が悪化する人の存在に気づき、こちらから伺う在宅医療に興味を持ちました。また、非常勤医をしていた訪問クリニックで、夜に誰かわからない人から電話があったとの当直の申し送りに対して、看護師さんたちが「その薬を使っていて、そのような電話をかけてくるのは、きっと○○さんだ」と特定してすぐに解決したことがあり、エキスパートたちがチームワークで患者さんを支えるのが在宅医療だと感じました。もともと予防医療や健康管理に関心があったので、在宅医療は私に向いているなとも思いました。
小澤さんは、看護師としてどのような思いで在宅医療に取り組まれていますか。

【小澤さん】病院に勤務していた時は一人で多くの患者さんを担当するので、ケアや処置に追われ、患者さんのお話をじっくり聞く余裕がないことに、もどかしさを感じていました。訪問看護では一人ひとりの患者さんとじっくり向き合い、ご本人がつらいと感じられることを一つずつ解消する、環境を整えていくという目線で取り組めるところにやりがいを感じてきました。訪問診療では、医師のサポートが中心となりますが、ご家族とのコミュニケーションなどは看護師の大切な役割でもあり、訪問看護の経験が生かせていると感じています。患者さんやご家族とお話しするのも好きですし、医師やケアマネジャーと相談しながら、患者さんがどうしたらより良く生活できるかということを重点的に考えていきたいという思いは変わりません。
在宅医療の理解を広め、患者と家族の生活に役立ちたい
今後に向けての展望を聞かせてください。

【竹之内院長】このエリアは、地域連携に力を入れている病院やケアマネジャーも多く、在宅医療に理解のある病院が多いと感じますので、私たちもできるだけ地域のニーズに応えていきたいと思っています。今後、患者さんがもっと増えてくれば医師や看護師、事務スタッフも拡充していきたいです。また介護事業所や訪問看護ステーションなどと密に連携して生活面を重視するというのが、私の得意分野でもありますので、老老介護のケース、介護をされる方も支援が必要というような場合は、ぜひご相談いただきたいと思います。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
【竹之内院長】在宅医療、訪問診療がどういったものかイメージできない方も、まだ少なくないと思います。一般的なクリニックとの違いや、訪問診療ではどのような診療を行うのか、ご存知ない方も多いと思うので、在宅医療や当院のことを知っていただきたいと思っています。高齢や病気のために通院が難しくなったときに、次の一手として訪問診療を思い浮かべていただき、介護生活のさまざまな問題の解決に役立てていただけるように、まずは存在を知っていただきたいですね。そして、地域の医療、介護関係者の方々にも、当院の存在を知っていただきたいと思います。今はまだスケジュールに余裕があり、緊急のケースや困難症例にも対応しやすいかと思いますので、ぜひご相談ください。
小澤さんはいかがでしょうか。

【小澤さん】この地域は、古くからお住まいの方が多く、地元愛にあふれている人が多い印象があります。その分、高齢の方も多いですから、通院の付き添いに苦労されている方、介護に悩まれている方は、積極的に在宅医療を検討していただければと思います。そのために、当院は、患者さんやご家族に安心して頼っていただけるような存在をめざしたいと思っています。もともと通っていたクリニックに遠慮されて、在宅医療に移行できないというご家族もあるかと思いますが、必要があれば連携して対応しますので、お気軽にご相談ください。

