柿本 聖樹 院長の独自取材記事
舟入おとなこども総合診療クリニック
(広島市中区/舟入川口町駅)
最終更新日:2026/08/28
「何科を受診すればいいかわからない」。そんな患者の不安や困り事に寄り添うため「舟入おとなこども総合診療クリニック」は開院した。院長の柿本聖樹先生は、総合診療・感染症を専門に大学病院から広島県のへき地医療に携わり、子どもから高齢者まで幅広い診療を経験してきた。同院では、西洋医学に加え漢方医学も取り入れながら、一人ひとりに合った治療法を模索する。「何かできることはないか」を常に考える柿本院長に、総合診療や地域医療にかける思いについて話を聞いた。
(取材日2026年6月20日)
「私ができることはないか」を常に問い続けたい
医師を志した理由と、開業の経緯を教えてください。

原点は、子どもの頃に通っていた診療所の先生です。中耳炎で何度もお世話になったのですが、受付終了時間の間際に駆け込んでもしっかり話を聞いてくださったり、病気を診るだけではなく人そのものを診ている姿に憧れを抱きました。さらに中学生の頃、母が病気になった時に、主治医の先生が医学用語を私にもわかるように丁寧に説明してくださいました。その姿から「自分もこんな医師になりたい!」と思うようになりました。患者さまやご家族さまの背景まで診られるという理由から総合診療を選び、開業した今は「どこへ相談すればいいかわからない」時に最初に思い浮かんでいただける場所でありたいと思っています。
患者さまが安心して過ごせるよう、意識されている点はありますか?
一番こだわったのは、患者さまがほっとできる空間であることです。待合室は天井を高くし、閉塞感のない設計にしました。体調が悪くて来院される患者さまにとって、狭く圧迫感のある空間は気持ちまで重たくなってしまいます。だからこそ、リラックスして過ごしていただける環境をめざしました。私は、診断や治療の技術はもとより、患者さまが安心して通える環境が大切だと考えています。私が医師を志したきっかけも、技術だけではなく、親身に接してくださる先生との出会いでした。その経験があるからこそ、クリニックは「安心」と「温(ぬく)もり」をテーマにしています。
患者さまの年齢層や主な症状など、特徴があれば教えてください。

小さなお子さんからご高齢の方まで、毎日さまざまな患者さまが来院されます。風邪や発熱、頭痛、腹痛といった一般的な症状はもちろん、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病、湿疹などの皮膚症状、更年期・アレルギーに関するご相談まで、さまざまなお悩みをお聞きしています。多いのは、「症状がいろいろあって何科を受診したらいいかわからない」というお声です。複数の症状があったり、いくつもの医療機関へ通っていたりする方も少なくありません。そういうときこそ、総合診療の出番だと思っています。まずはお話を伺い、必要な診察や検査を行います。その上で、当院で対応できるものは責任を持って診療し、より専門的な治療が必要であれば適切な医療機関へおつなぎします。総合診療は、患者さまと専門家をつなぐ入り口でもあり、地域医療を支える大切な役割を担っていると感じています。
「困ったら相談してください」と胸を張って伝えたい
先生のご専門分野を教えてください。

私の専門は総合診療、患者さまのすべてを診る医療です。これまで大学病院以外にも、へき地の診療所など、さまざまな現場で診療してきました。そういう地域では、「専門外だから診られません」と言ってしまうと、患者さまはお年寄りでも車で何十分もかけて別の病院へ行かなければなりません。内科だけでなく、けがの処置など、できる限り対応することを求められた経験が、今の診療に大きく役立っています。実際、頭を縫合したこともありますし、小児の診療もしてきました。専門の医師がいない地域だからこそ、「まず自分が診る」という姿勢が自然と身につきました。また、感染症について専門性を持つことも私の強みの一つです。感染症は日常診療でも非常に多い上、適切な診断や治療が求められます。総合診療と感染症の2つの専門性を生かしながら、幅広い症状に対応できる医療を提供していきたいと思っています。
漢方も積極的に取り入れられていると伺いました。
私は、西洋医学と東洋医学はそれぞれのいいところを生かしていくことが大切だと思っています。西洋医学には科学的な根拠があり、東洋医学には何千年という歴史があります。長い年月の中で積み重ねられてきた知恵も患者さまのために生かしたいと考えています。漢方に関心を持ったきっかけは、新型コロナウイルス感染症でした。治療法が限られる中で「何か新しい選択肢を増やせないか」というのが出発点でした。私は「ほかへ行ってください」、「様子を見るしかないね」と言って終わるのではなく、「何かできることはないか」と常に問い続けたいと思っています。その一つの答えが、漢方医学を取り入れた治療の選択肢だと考えています。
総合診療について教えてください。

総合診療は、「何科へ行けばいいかわからない」という段階から相談していただける診療科です。例えば、頭痛や腹痛、発熱、咳、皮膚の症状、生活習慣病など、一見すると別々の診療科へ行くような症状でも、まずは私たちが診察します。その上で、当院で対応できるものは責任を持って診療し、専門的な治療が必要であれば適切な医療機関をご紹介します。まずは幅広く、患者さまの背景まで診て、必要な医療につなぐことが総合診療を行う医師の役割だと思っています。まず診て、必要な処置を行い、その先につなぐ。そのような経験を重ねてきたからこそ、「困ったらまず相談してください」と胸を張って言えるのだと思います。
患者の困り事に最後まで向き合う
患者さまと向き合う上で大切にされていることについてお聞かせください。

診療で一番大切にしているのは、患者さまのお話をしっかり聞くことです。何に困っていて、どうしたいと思っているのか。それによって必要な検査や治療法を提案します。私は、医師が一方的に治療方針を決めるのではなく、症状や検査の結果をご説明し納得された上で、一緒に治療を組み立てていくことが大切と考えています。症状や検査の結果によっては、その分野を専門とする医師にお願いしたほうがいい病気もあります。しかし、その前に「自分に何かできることはないかな」と考えたいんです。病気を診ることはもちろんですが、患者さまが今何に困っているのか、その困り事にしっかり向き合いたい。それが私の診療の基本姿勢です。
スタッフとの連携をとても大切にされていると感じました。
クリニックでは、看護師も事務スタッフも、それぞれがプロフェッショナルです。だからこそ、職種に関係なく、みんな対等な立場で仕事をしてほしいと考えています。それぞれが気づいたことをお互いが話し合える環境でなければ、より良い医療にはつながりません。医師一人では良い医療はできません。それぞれの専門性を持ったスタッフが力を合わせチーム一丸となることで、患者さまに安心していただける医療が提供できると思っています。これからも、お互いを尊重しながら、チームで地域の皆さんを支えていきたいですね。
今後の展望や目標について教えてください。

これからも「困ったらまず相談してみよう」と思っていただけるクリニックでありたいです。治療はもちろん、患者さまが何に困っているのか、一緒に考えながら伴走していきたいです。総合診療を専門とする医師として幅広く診療を行いながら、必要に応じて他科の医師とも連携する。そして、漢方も含めたさまざまな選択肢の中からその方にベストな治療法を提案し続けていきたいですね。患者さまにしっかり向き合い「何かできることはないか」を問い続けることが、開業前から変わらない私のモットーです。地域の皆さんにとって、安心して相談できる存在であり続けたいと思っています。

