市川 洋平 院長の独自取材記事
東京血管クリニック 葛西
(江戸川区/葛西駅)
最終更新日:2026/07/15
葛西駅から徒歩2分のビル3階に、「東京血管クリニック 葛西」はある。照明を抑えたグレーベースの待合室には、血管をモチーフにした丸いアーチ状のオブジェが置かれ、曲線を生かしたソファーが穏やかな印象を添える。手術も行うクリニックとは思えないくつろぎの空間だ。院長の市川洋平先生は、杏林大学卒業後、大学病院の心臓血管外科で10年以上にわたり執刀を重ね、血管外科全般のスキルを磨いてきた。透析用シャントの造設・血管内治療の日帰り手術と下肢静脈瘤の治療を二本柱に、専門性の高い医療を届けている。「患者さんは“患者さん”である前に”一人の人間”であるということを、絶対に忘れないようにしています」と語る誠実なまなざしが印象的な市川院長に、血管外科を専門とする医師ならではの強みや診療への思いを聞いた。
(取材日2026年6月22日)
培ったシャント手術と下肢静脈瘤治療の技術を地域に
こちらのクリニックではどのような診療をされていますか?

当院は血管外科のクリニックとして、透析用シャントの造設・メンテナンスと下肢静脈瘤の治療を二本柱にしています。シャントを新しく作る手術、シャントの調子が悪くなった際に行う血管内治療をいずれも日帰りで実施しており、下肢静脈瘤の治療についても、必要な場合は日帰りでレーザー治療などを行います。シャント治療については、透析クリニックからのご紹介に加え、総合病院からご紹介いただくケースも多いですね。血管外科を専従で担う医師は総合病院でも多くはなく、そうした背景もあるかと思います。特にシャントの血管内治療は、透析が1日でも遅れると患者さんへの負担が大きいため、可能な限り即日でお受けする体制を整えています。迅速にお応えできるのは、クリニックならではの利点だと感じています。
開業に至るまでの経緯をお聞かせください。
杏林大学を卒業後、母校の大学病院の心臓血管外科で10年以上にわたり勤務してきました。大動脈の手術や足のバイパス手術など、大がかりな手術から小規模な手術まで幅広い経験を積み、バイパス技術について学びました。患者さんにベストな治療をお届けできるよう、技術を磨いていたのですが、大学病院では診療や研究以外にもさまざまな業務があり、自分の技術を患者さんに使うことになるべく集中したいという思いが募っていきました。並行して非常勤で勤務していた施設で血管外科の需要の大きさを実感したことも重なり、葛西エリアで地域に貢献したいと考えて開業に至りました。
手術を行うクリニックとは思えないほど、落ち着いた空間ですね。

血管の手術を行うクリニックと聞くと、やはり身構えてしまう方が多いと思います。ですので、あえて医療機関らしくない空間にしたいと考えました。待合室には血管をモチーフにした丸いアーチ状のオブジェを置いて、ソファーや椅子も角のない曲線的なデザインを選んでいます。待っている時間から、少しでも緊張をほぐしていただけたらという気持ちです。また、手術室の天井には、見上げたときに星空のように見える照明を配置しました。当院の手術はすべて局所麻酔で行うため、患者さんは意識のある状態で手術を受けることになります。手術となればどうしても緊張しやすいかと思いますので、視線の先に少しでも気持ちが和らぐものがあればと思い、こうした工夫を取り入れました。
専門の医師ならではの、丁寧な見極めと幅広い選択肢
シャント治療で特にこだわっていることはありますか?

内シャント手術は、透析のための血液の取り口と返し口になる血管を作る手術で、静脈の血流を増やすことが本質です。十分な血管がない方には、人工血管を使って同様の手術を行う場合もあります。私が特に重視しているのは、手術前のエコー検査による血管の評価です。表面上は血管がしっかりあるように見えても、少し下流で細くなっていることがあり、そこを見落としたまま手術をすると血管が詰まってしまうリスクがあります。つなげる場所は患者さんごとに異なりますので、毎回同じところでいいというわけではありません。術前評価が不十分なまま手術が行われると、やり直しが必要になる恐れもあります。不要な再手術を避けるためにも、この見極めには特に力を注いでいます。
下肢静脈瘤の治療はどのようなものですか?
下肢静脈瘤は、脚の静脈にある弁が壊れて、本来心臓に帰るべき血液が足先へ逆流してしまう疾患です。むくみやだるさといった症状が現れ、テレビやインターネットをきっかけに気づいて受診される方も少なくありません。治療の基本に据えているのはレーザー治療で、実績が豊富なスタンダードな方法です。グルーという接着剤を用いた比較的新しい治療もありますが、アレルギー反応が生じることがあるため症例に応じて選択しています。そのほか薬剤で血管を固める硬化療法にも対応しています。手術を希望されない方には、弾性ストッキングによる圧迫療法もご提案できます。手術ありきではなく、患者さんの状態やご希望を踏まえて幅広い選択肢をお示しすることを大切にしています。
クリニック選びで患者さんに意識してほしいポイントはありますか?

血管に関わる治療では、万が一トラブルが起きたときに対処できるかどうかが大切です。全身の血管に対してカテーテル治療からバイパス手術まで幅広い経験がある血管外科医がいるかどうかは、一つの判断基準になると思います。手術だけを行う医師やカテーテル治療だけを行う医師もいらっしゃいますが、その両方を見渡して総合的に判断できるのが血管外科を専門とする医師ならではの強みです。もう一つお伝えしたいのは、血管外科には対になる内科がないということです。他の外科領域では手術後に内科へ引き継ぐ流れが一般的ですが、血管外科では初診からその後の経過まで一貫して診続けるのが標準的な在り方です。手術をする・しないに関わらず、長期的な視点で患者さんを見守る姿勢が自然と備わっているのも血管外科医の特徴ではないかと思います。
一人の人間として向き合い、寄り添っていきたい
患者さんと接する上で心がけていることを教えてください。

外科領域の医師として手術の技術や治療の質をお届けするのは、当然のことだと考えています。その上で特に大切にしているのは、患者さんを一人の人間として尊重する姿勢です。透析を受けている患者さんに対して、当たり前のつもりで少しお話をお聞きしただけで、「話を聞いてもらえただけでもここに来てよかった」とおっしゃる方がいて、とても印象に残りました。患者さん一人ひとりと人間同士として向き合い、持てるものをすべてを誠実にお届けしたい。この思いはスタッフにも共有し、クリニック全体で大切にしています。
治療の質を高め続けるために意識されていることはありますか?
当院には非常勤を含めて血管外科医が4人在籍しています。自分一人で診療を続けていると、いつの間にか時代からずれたり、軌道修正すべき点に気づけなくなったりするリスクがあると感じます。お山の大将のようになってしまったら医師としては成長が止まってしまうと思っていますので、互いにチェックし合える仕組みを整えました。学術活動も継続し、感覚だけに頼らずデータとして治療成果を示していくつもりです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

当院は血管の手術に対して高い専門性を有していると考えておりますが、すべての方に手術をお勧めする考えはまったくありません。必要な場合にはもちろん全力でお応えしますが、大切にしているのは、患者さんに納得して治療を受けていただくことです。そのためにも、患者さんは”患者さん”である前に”一人の人間”であるということを絶対に忘れず、日々の診療に臨んでいます。これは、研修医の頃からずっと自分に言い聞かせてきたことです。クリニックの空間づくりにも、少しでもリラックスしていただきたいという思いを込めています。気になる症状がある方も、受診先を決めることに迷っている方も、「ちょっと話を聞いてみようかな」くらいの軽い気持ちで構いませんので、一度お話しできればうれしく思います。

