大石 暢彦 院長の独自取材記事
大石歯科クリニック
(横浜市戸塚区/東戸塚駅)
最終更新日:2024/12/23

JR横須賀線・東戸塚駅徒歩5分の場所にある「大石歯科クリニック」。大石暢彦院長は健全な子どもの成長発育を促す口腔育成の取り組み、歯科医師を対象としたセミナーや、市民講演も行うなど活動の場を広げる歯科医師だ。開業後、町の成長とともに子どもの患者が増え、歯並びや噛み合わせに問題のある子が多いことに気づいたことをきっかけに、口腔育成として生活習慣改善のための指導や口腔筋機能療法を行うようになった。地域の「健口長寿」に尽力し、家族そろって来院できるクリニックでありたいと語る大石院長に、同院の診療の特徴や、小児歯科における口腔育成の可能性などについて話を聞いた。
(取材日2024年11月26日)
赤ちゃんから高齢者まで家族みんなで通える歯科医院
クリニックの特徴をお聞かせください。

小児の口腔育成を中心にしながら、家族みんなで通える歯科をめざして診療を続けています。来年で開業から20周年になりますが、家族3世代で通ってくれる患者さんも増えてうれしい限りです。そのために、これまで赤ちゃんから高齢者まで幅広い診療技術を身につけてきました。歯科医院は、歯や歯茎が痛くなってから治療に来るだけではなく、口腔内のトラブルを予防し、健康を維持するために来る場所でもあるという意識を地域に伝え、「健口長寿」を延ばすことが使命だと考えています。また「常に最善のものを選ぶ」ことを重視し、保険診療など経済的な問題以外のところでは、その時代を反映した最善の方法、最良の技術と材料を提供することをめざしています。
院内のこだわりを教えてください。
先日、リニューアルでアクティビティールームを設置し、エデュケーターと呼ばれるスタッフが子どもの患者さんに呼吸や嚥下、姿勢などのレクチャーに集中できる空間をつくりました。このことで治療だけでない、小児の口腔育成にさらに注力できるようになっています。また予防のために定期的に通っていただきやすくすることを心がけ、診療室はゆったりした半個室でプライバシーも確保し、静かな音楽が流れるようにしています。
スタッフについてもお聞きします。

口腔筋機能療法で行う呼吸や嚥下に関するトレーニングの指導や姿勢についてのアドバイスはエデュケーターと呼ばれるスタッフが担当しています。上から目線の指導ではなく、子どもたち一人ひとりと同じ目線で寄り添い、正しい方法を獲得するまで責任を持って伴走をする役割を担ってもらっています。エデュケーターは口腔育成に関する豊富な専門知識を持っています。子育て経験があるスタッフがほとんどで、自身の成長のためにも勉強をしたいという意欲が強い人が集まっていますね。
呼吸から姿勢まで全身につながる口腔育成に取り組む
子どもの口腔育成に注力されるようになったのはなぜでしょうか。

子どもの治療や予防を行う中で、歯並びが悪い子がとても多いことに気づき、正常な発達を促す口腔育成に力を入れるようになりました。例えば母乳で育つ時期が短いと顎が弱く、頬・唇・舌のバランスも悪くなりがちです。口呼吸や、加工食品などやわらかい物の多い食生活も歯並びや噛み合わせに影響を及ぼします。人間は息をすることや、食べることは教わらなくてもできるのですが、それらを必ずしも正しくできているとは限りません。そこで、呼吸法や姿勢、食生活などの改善を指導し、頬と唇、舌のバランスを整えるため、マウスピース型装置を用いた咬合誘導を行います。この取り組みにより、歯並びも自然に整うことが期待でき、ワイヤーによる矯正治療が不要になる、もしくは非抜歯矯正が可能になることも期待できます。ただ歯並びが整うというのはあくまでも期待できる結果であり、大切なのは子どもたちの健康発育だと考えて口腔育成に取り組んでいます。
マウスピース型の装置を使った咬合誘導とはどのような内容なのでしょうか。
口を閉じて鼻呼吸し、正しい位置に舌がある状態に整えるためのマウスピース型の装置を着けてもらいます。基本的には夜寝る時に口の中に装着しますが、大抵の場合、初めの1ヵ月くらいは朝までつけ続けられずに、布団の中に落ちてしまうでしょう。けれども、起きている時にお風呂や勉強、ゲームなどをするときに装着し、鼻呼吸や舌の位置を癖づけることでだんだんと長い時間着けていられるようになります。
口腔筋機能療法や咬合誘導など、口腔育成を開始する年齢はいつ頃が良いのでしょうか。

ベストタイミングは5〜7歳くらいですね。そのくらいから保護者がお子さんの歯並びに気がつきはじめると思います。矯正というと抜歯をしたり、ワイヤーで動かしたり、というイメージがあると思いますが、当院では早い段階で介入することで、歯を抜かずに「良い歯並びに育てる」ことをめざしています。歯並びが悪く育ってしまうと、虫歯になりやすくなってしまいます。歯並びを育てるところから、予防歯科は始まっているんですね。当院では大人の歯並びになる12〜13歳くらいまでは口腔育成の指導を続け、その後は定期検診に移行します。
子ども一人ひとりの性格まで把握し、治療法を提案
子どもの治療で心がけていることはありますか?

この治療法ではご自宅でいかに継続できるかが肝になるので、歯科医師がすべてをコントロールできるわけではありません。お子さん本人の意思と保護者の協力が重要になってきますので、治療の内容や目的をしっかりとお子さんと保護者の両方に伝えるようにしています。そして、治療するかどうかの判断の際には「この歯をきれいにしてみたい?」などと本人に伺うようにしています。主体性が大事な治療なので、そこですぐに答えが出ない場合には、治療を開始してもうまく行きません。保護者の思いが強くても、本人の意思が定まってから開始することをお勧めしています。治療では呼吸や嚥下の仕方を少しずつクリアしていけるように、宿題ノートで指導しています。ほかにもお子さんに合わせて風船を膨らませるトレーニングを提案するなど、それぞれの性格に合った方法を提案します。そのため子どもたちの性格や好きなものはカルテに書いて、覚えています。
診療以外では、講演会も多いそうですね。多忙な中、プライベートはどのように過ごされているのでしょう。
子どもたちの口腔環境を正しく導くことが私の歯科医師としてのやりがいやモチベーションになっているので、多くの保護者、そしてほかの歯科医師たちにも、この重要性を知ってほしいという思いで講演会を続けています。長年、講演を続けていますが、自分も勉強しないと人には教えられないと思い、勉強時間が減ることはありませんね。一方で、休日には歯科以外の分野のインプットも大事にしています。オペラ鑑賞をしたり、近くの海で自然を感じたりと気持ちを切り替えて楽しむ時間も必要だと感じています。
ところで、先生が歯科医師を志したきっかけは何だったのでしょうか。

父も歯科医師で、子どもの頃、父が患者さんに感謝される姿を見るたび、いい仕事だと思っていました。患者さんに対して父はとても丁寧に説明し、正しいブラッシング方法が身につくまで教えるのです。そんな父の背中を見て、何の迷いもなく歯科の道へ進みました。息子としては後を継いで地域医療に貢献することが親孝行と思っていたのですが、父は自分ができるうちは仕事をしたいと言うので、私は独立して東戸塚でこの歯科医院を開業したのです。大学では噛み合わせや、顎関節症などの臨床と研究に携わり、幅広い年代の診療にあたってきたので、その経験を生かして地域医療に貢献したいと考えています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
子どもの成長にとって、正しい呼吸、嚥下、姿勢はとても重要であることが近年ではよく知られるようになりました。例えば、口がぽかんと開いて口呼吸をしてしまっていると、歯が乾いて虫歯になりやすくなり、歯並びも悪くなってしまいます。それが良質な睡眠を妨げると、勉強やスポーツをするにも気力も体力も出てこなくなってしまいます。子どもたちの健康の基本には口腔育成につながる大事な要素が詰まっています。当院では楽しい雰囲気づくりで歯科が苦手という子も嫌がらず来てくれるように配慮しています。子どももきちんと説明すれば納得しますし、治療後に予防へ移行すれば歯科医院は怖い場所ではなくなります。そのため、ご家族で楽しく通院していただけるようこれからも前進したいと思っています。
自由診療費用の目安
自由診療とは小児の咬合誘導/50万円~