鳥越 史子 院長の独自取材記事
つばめキッズクリニック
(大阪市城東区/野江駅)
最終更新日:2026/08/12
京阪本線・野江駅から徒歩5分、城東野江クリニックモールの2階で2026年5月に開院した「つばめキッズクリニック」。パステルカラーを基調とした院内は、曲線を生かした建具やツバメの巣を思わせる照明なども、優しげな雰囲気を醸し出す。鳥越史子院長は大学卒業後、複数の病院の小児科・小児循環器科・NICUで研鑽を積んできた。その中で、疾患だけでなく家族との関わりや生活背景まで含めたサポートの必要性を痛感し、「何かあったときにすぐ来られるかかりつけでありたい」と開業を決意。スタート時から心理士と保育士が常駐し、発達相談や不登校のカウンセリングにも対応できる体制を整えている。冷静な判断力と子どもへの深い愛情を併せ持つ鳥越院長に、開業の経緯や診療への想いを聞いた。
(取材日2026年6月11日)
子どもへの想いを原点に、家族を支えるかかりつけ医へ
先生が医師を志し、小児科の道を歩まれた経緯を教えてください。

大阪南部で育ち、地元の公立高校に通っていました。身内に医療従事者はいませんでしたが、親の勧めもあって医学部へ進みました。大学卒業後は、初期研修を経て大阪大学の医局に入局しました。実は子どもが好きすぎて、最初は小児科にはなれないと思っていたんです。注射など痛いことを、好きな相手にできるのかと。ところが初期研修で小児科を回った時、痛いことをしたのに「抱っこして」と何事もなかったかのように接してくれる子ばかりで。好きだからこそできるのかもしれない、と思い直し、小児科を選びました。もともとエコーが好きで、技術で診断に迫れるところに惹かれ、主に小児循環器に関わるようになりました。
勤務医時代を経て、開業を決意されたきっかけを教えてください。
勤務医時代、入院中のお子さんが、入院中に会えない母との交換日記に自分のことではなく「ママ、おにぎり作ってくれてありがとう」と、お母さんへの感謝ばかり書いていたんです。一番つらいはずのその子が、妹や家族のことまで気にかけている様子を見て、院内だけでしかサポートできない自分に歯がゆさを感じました。疾患だけでなく、家族との関わりや生活背景も含めてサポートしたい、と。それに大学病院はハードルが高いですから、何かあったときにすぐに行けるかかりつけ医でありたかった。発達の面でも、早い段階で気づいてあげたいケースが多く、そこに力を注げる環境をつくりたかったんです。この先いつまで当直ができるか不安もありましたし(笑)、無理をしすぎず自分のできることを考え開業を決意しました。
温かみのある院内ですが、空間づくりへのこだわりを教えてください。

院名のつばめは、苗字の「鳥越」にちなんでいます。ツバメは父母がともに子育てをする鳥ですし、一度巣立ってもまた戻ってくる。その姿が、私がつくりたいクリニックのイメージと重なりました。ロゴはハートをモチーフに、ご両親に守られている子どものツバメを表しています。それぞれのツバメの色は院内にも使用し、3色のパステルカラーで統一しました。メインの照明はツバメの巣にも雲にも見えるデザインで、建具には曲線のデザインを施し、優しい雰囲気になるよう仕上げています。動線は回遊式にして、感染症の方とワクチン接種の方が分かれて移動できるようにしました。城東区は子育て世帯が増えている地域で、京阪本線・JR・大阪メトロの3路線が使え、隣にスーパーもあるので、共働きのご家庭にも通いやすい立地だと思います。
3歳までの気づきを大切に、子ども目線の診療を
特に力を入れていきたい分野について教えてください。

一番力を入れていきたいのは発達の分野です。NICUで発達のフォローをしていた頃、小学校高学年になってから発達の相談に連れて来られる子を見かけました。早期の対応ほど改善が見込めるので、3歳までになるべく早く気づいてあげたいんです。当院には心理士が常駐しており、発達検査やカウンセリングに対応しています。不登校のご相談も受けていて、背景に発達の特性が隠れているケースも実際にあります。診療報酬の改定でカウンセリングの対応期間が延び、継続的な支援がしやすくなりました。勤務医時代は循環器が中心で発達に重きを置けませんでしたが、開業して本格的に取り組める環境が整ったと感じています。
ほかに、先生のご経験を生かした診療はありますか?
小児循環器での経験は大きいですね。心疾患のあるお子さんは、一般の小児科では受け入れてもらいにくいことがあります。当院ではそうしたお子さんも安心して受診していただけるよう、心臓のエコー検査を含めた体制を整えています。エコーは心雑音だけでなく、甲状腺や虫垂炎、腎臓の異常なども幅広く調べられます。エックス線撮影装置は置いておらず、基本的にエコーで対応しているので、お子さんへの負担が少ないのが利点です。アレルギー診療にも力を入れていて、院内でアレルギー検査がすぐにでき、舌下免疫療法やアドレナリン自己注射薬の処方にも対応しています。また、視機能スクリーニング装置を導入し、弱視や遠視、斜視などの早期発見も小児科で行えるようにしました。
お子さんの診察で工夫されていることを教えてください。

診察で一番大切にしているのは、子ども目線であることです。例えば喉を診るとき、「口を開けて」と言うとお子さんの顔はどんどん下がっていって、よく見えなくなってしまいます。無理に奥まで見ようとすると泣かせてしまいますから、何かいい方法はないかとずっと考えていました。勤務医時代にある病院で天井に貼り物をしているのを見て、あれを見てと声をかけると子どもが自然に上を向くことに気づいたんです。それをヒントに、当院では診察室の天井の隅に風船やパンダのオブジェを取りつけました。「風船を見ててね」と声をかけることで、お子さんが上を向いてくれるように工夫しています。小さな工夫ですが、お子さんにも私にも無理のない診察ができるようにしました。
チームで寄り添い、子どもの「得意」を見つけ伸ばす
日々の診療を支えるスタッフの皆さんについて教えてください。

当院には保育士が常駐しています。お子さんが泣いているときにあやしたり、きょうだいを連れて来られたときに一緒に遊んだりしてくれるので、診察以外の場面でも頼りになる存在です。お母さんにとっても休める場所であってほしいので、トイレの間にお子さんを見たり、きょうだいのお世話をしたり、保護者の負担を減らせるようにしています。病状の説明をしているときにお子さんが泣いてしまうと、お母さんはそちらが気になって大事なことがほとんど聞けていないことがあるんです。保育士がお子さんをあやしている間に、私が大切なことをぐっと伝える。そのほうがお互いにとっていい時間になります。受付の医療事務もベテランママ世代で、スタッフみんなが子ども好きなのは当院の強みですね。
今後、地域でどのような存在でありたいとお考えですか?
困ったことがあればここに来れば何とかなる、そう思ってもらえる場所でありたいですね。発達の支援はこれからさらに充実させていきたい分野ですし、小児在宅診療にも対応できる体制を整えていますので、必要としてくださるご家族がいれば力になりたいと思っています。風邪や健診はもちろん、発達や心臓の相談、アレルギーの治療まで幅広く診ることができるのが、地域のかかりつけ医としての強みだと考えています。お子さんの成長は長い時間をかけて見ていくものですから、何年先もこの場所で一人ひとりの歩みに寄り添い続けたいですね。どんどん大きくなっていく姿を間近で見届けられるのは、開業医だからこそ味わえる喜びだと感じています。
患者さんへのメッセージをお願いします。

お子さん一人ひとりには、それぞれ得意なことがあります。発達にムラがある子でも、何かしら光るところがあるんです。そこを見つけ、伸ばしてあげることがとても大事だと思っています。お母さんやお父さんが気づいていないこともありますので、そうしたことをお伝えしながら、一緒に伸ばしていけたらうれしいですね。学校では変わった子と思われるかもしれないけれど、大人になったらそこがすごくいいところだったりする子はたくさんいます。この地域で生まれて、この地域で育っていく子どもたちと、その親御さんのお手伝いができたらと願っています。

