冨永 貴恵 院長の独自取材記事
薬院きえレディースクリニック
(福岡市中央区/薬院駅)
最終更新日:2026/07/01
薬院駅から徒歩4分、ビル2階に2026年6月にオープンした「薬院きえレディースクリニック」。院長の冨永貴恵先生は、熊本大学卒業後、横浜市立大学の産婦人科に入局し10年近く研鑽を積んだ後、生まれ育った福岡に戻って開業した。掲げるコンセプトは「ご近所さんのようなクリニック」。幼なじみの住宅会社が手がけたという院内は、温かみのある落ち着いた空間で、婦人科への緊張をそっとほぐしてくれる。自身も月経不順や不妊治療を経験してきた冨永院長は、患者から「こんなに話しやすい先生は初めて」と言われるほど気さくで明るい人柄だ。福岡ではまだ少ないセミオープンシステムの導入や、診療への思いについて冨永院長にたっぷりと語ってもらった。
(取材日2026年6月10日)
「女性が女性を支える」受診しやすい産婦人科をめざす
産婦人科を専門に選ばれた理由をお聞かせください。

私自身、女子校に通っていたのですが、周りには生理が重くて授業を休む子が少なくありませんでしたし、私も18歳まで生理が来なかったという経験があります。そんな10代を過ごしたこともあり、女性特有の悩みに寄り添える診療科に自然と関心が向きました。お産の現場に立ち会った際に感じた、あの何ともいえない幸せな空気にも惹かれましたね。患者さんが女性ですから、同じ女性の医師であること自体が安心感につながると考えましたし、何より私は人と話すのが好きなんです。中高生の方のピルの相談から更年期世代のお悩みまで、幅広い年代の方とおしゃべりしながら関わっていける産婦人科は、自分の性格にも合っていると感じ、迷いなく選びました。
勤務医時代はどのような経験を積まれてきたのですか?
熊本大学を卒業後、横浜市立大学の産婦人科に入局しました。垣根がなく、皆が学び合っている雰囲気に惹かれまして。そこから10年近く、地域の基幹病院や大学病院を中心に勤務し、産科・婦人科の両方で経験を積みました。重症の患者さんを担当する中で痛感したのは、「もっと早く受診していれば、ここまでの治療は必要なかったのでは……」という方が多いことです。そうした方の大部分は、婦人科への抵抗感から受診が遅れていました。その経験が、気軽に足を運んでもらえる場をつくりたいという思いにつながっています。横浜ではクリニックでも働く機会があり、患者さんとの距離が近い診療の良さを実感できたことも、開業を考える大きなきっかけになりました。
開業にあたって、こだわったことを教えてください。

地元の福岡が好きで、離れている間にもどんどん街が成長していくのを感じていましたから、いつかは戻りたいという気持ちがずっとありました。薬院は学生時代からなじみのあるエリアですし、女性が多く暮らし働いている地域でもあるので、ここで開業しようと。コンセプトとして掲げているのは「ご近所さんのようなクリニック」です。内装の設計は幼なじみが営む住宅会社にお願いしたのですが、ドアや素材にも住宅で使うものが取り入れられていて、病院らしさをあまり感じない落ち着いた空間に仕上げてもらいました。診察室は待合室からできるだけ離した場所に配置し、婦人科ならではのデリケートなお話が周りに聞こえにくいよう、配慮しています。
月経の悩みから妊婦健診まで、女性の声に応える
どのような相談で来院される方が多いのでしょうか。

婦人科の保険診療がメインで、生理痛や月経不順、更年期のお悩み、ピルの処方などのご相談が多いですね。不妊治療もタイミング法まで対応しています。よく感じるのは、「生理ってこんなものだろう」と思い込んでいる方が意外と多いということです。実際には知らないうちに貧血が進んでいたり、子宮内膜症が育っていたりするケースは珍しくありません。子宮内膜症は不妊にもつながりかねないため、ピルやジエノゲストというホルモンの薬で早めに対処しておくことが大切です。更年期の治療にはホルモン補充や漢方、プラセンタ注射などの選択肢がありますから、お一人お一人に合う方法を一緒に選んでいきます。受診に迷ったら、ご自身が少しでも「困っているな」と感じたときが目安だと思ってください。
妊婦さんの診療についてもお聞かせいただけますか?
当院ではセミオープンシステムという仕組みを取り入れています。これは、出産する病院に移るまでの妊婦健診を当院でお受けいただけるというものです。横浜で勤務していた頃はこのかたちが主流だったのですが、福岡ではまだあまり広まっていないようですね。主に、里帰り出産を予定されている方が対象になると考えています。福岡で暮らしている間の妊婦健診を、通いやすい地元のクリニックで受けられるのがメリットです。私が一人でお産まで見届けるのは難しいのですが、妊婦健診を通じて妊婦さんの体調の変化を見守り、一緒に過ごす時間を大切にしたいという思いがあります。出生率が下がっている時代だからこそ、産科の分野でも自分にできることで支えていきたいですね。
患者さんとの接し方で大切にされていることはありますか?

開業してまだ間もないのですが、「初めて婦人科に来ました」という方が思いのほか多くてうれしいですね。「女性の先生だから来てみました」という方もいらっしゃって、そういう方には「来てくれてありがとうね」と声をかけるようにしています。初めての方には特に、苦痛が軽減できるように丁寧に声かけをしますし、看護師もそばに寄り添います。おなかの上からのエコーでも対応できますので、内診に不安がある方は遠慮なくお伝えください。私自身、月経不順や不妊治療を経験しているので、患者さんのお話に「わかる、わかる」と自然に共感できるところがあるんです。以前の勤務先では「こんなに話しやすい先生は初めて」と言っていただいたこともあり、それが自分の持ち味なのかなと思っています。
女性の元気が街の元気に。温かいチームで支える
一緒に働くスタッフの方々についてお伺いできますか?

スタッフの面接はすべて私一人で行いました。自分と波長の合う人と一緒に働きたかったので、カフェでお茶をしながら30分ほどおしゃべりをして、その方の人となりで判断して決めたんです。おかげで、温かい雰囲気のスタッフがそろったと思っています。看護師たちも人当たりが良く、患者さんに積極的に声をかけてくれるんですよ。大学生の患者さんが来ると「アルバイトは何をしているの?」なんて話が始まることもあって、そこから「ストレスで生理が遅れている」といった背景が見えてくることもあります。何げない会話から体の悩みを拾い上げられるのは、スタッフの人柄があってこそ。クリニック全体で、肩の力を抜いて来られる雰囲気をつくっていきたいですね。
今後、どのようなクリニックにしていきたいですか?
薬院にはオフィスも住宅街もあり、さまざまな年代の女性が暮らしているエリアです。その中には、元気そうに見えて実はいろいろ悩みを抱えているという方も少なくないのではないでしょうか。そんな方の日々の生活の質を少しでも底上げできたら、女性の多い福岡の街全体にも活気が出てくると思うんです。福岡市は2040年頃まで人口増加が見込まれている元気な地方都市ですし、子育て支援がしっかり整っていることも実感しています。20代、30代の女性にとっても温かい土地だと思いますので、この街で女性の健康を長く支えていける存在でありたいですね。「元気なときにも通いたくなる」、そんなクリニックをめざしていきます。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

生まれ育った福岡で開業できたことを、まずとてもうれしく思っています。婦人科というと少し構えてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、「こんなことで行っていいのかな」と思うようなことでも、どうぞ気軽にご相談ください。例えば更年期の不調を「気の持ちようかな」「体力が落ちただけかな」と感じている方は少なくありませんが、実は治療で改善が見込めることも多いんです。生理痛も同じで、つらさを当たり前のことだと我慢し続ける必要はありません。お話を聞かせていただくだけでも気持ちが整理できることがありますし、一緒に考えていく中でご自身に合った方法が見つかることもあります。私自身おしゃべりが好きですから、身構えず気楽な気持ちでいらしてくださいね。

