糖尿病や生活習慣病、甲状腺疾患にもつながる
睡眠時無呼吸症候群
金沢内科クリニック
(横浜市金沢区/金沢文庫駅)
最終更新日:2024/10/15
- 保険診療
睡眠時無呼吸症候群や、糖尿病・高血圧・脂質異常症といった生活習慣病。女性に多い橋本病やバセドウ病など甲状腺疾患。こうした病気の名前を聞くことは多いが、意外とそのリスクや実態があまり知られていない面もあるようだ。一方で、最近では、糖尿病など生活習慣病の背景に睡眠時無呼吸症候群があることや、橋本病と睡眠時無呼吸症候群は併発しやすいことが指摘されている。「金沢内科クリニック」は、睡眠時無呼吸症候群と糖尿病など生活習慣病、甲状腺疾患との関連性に早くから注目してきた「医療法人みなとみらい」グループの1院で、小野佐知子院長は糖尿病や甲状腺疾患診療の専門家だ。そこで、「病気を正しく理解してうまく付き合ってほしい」という小野院長に、睡眠時無呼吸症候群と糖尿病、甲状腺疾患について詳しく聞いた。
(取材日2024年9月24日)
目次
合併症につながる糖尿病や、女性に多い甲状腺疾患。睡眠時無呼吸症候群との関わりも注目して専門的な診療を
- Q 睡眠時無呼吸症候群は糖尿病などと関係があるのですか。
-
A
睡眠時無呼吸症候群も、糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病も、肥満の人に多いことや、過食や食生活の偏り、運動不足、ストレスが多い生活などがリスクになることが共通します。また、甲状腺機能低下症の橋本病では、全身の新陳代謝が低下するので、体重増加、血液中のコレステロール増加などが起こり、脂質代謝異常も来しやすくなります。さらに肥満や舌の腫大、上気道粘膜のむくみなども起こりやすくなり、代謝機能異常や心臓機能が低下することから睡眠時無呼吸症候群が合併しやすいといわれています。特に中高年の女性で、生活習慣病や睡眠時無呼吸症候群を指摘された場合は、甲状腺機能の検査も受けることが勧められます。
- Qでは、睡眠時無呼吸症候群の検査と治療について教えてください。
-
A
まず自宅でできる簡易検査を行い、その結果により必要に応じて就寝中の脳波、呼吸、心拍などを測る精密検査を行います。当院では、一泊での睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)が必要な場合は、系列の「みなとみらいクリニック」で検査を受けていただけます。睡眠時無呼吸症候群と診断されれば、当院で、マスクから陽圧の空気を送って気道を広げることで睡眠中の呼吸停止の軽減を図るCPAP治療を行います。睡眠中の無呼吸症状を自覚することは困難ですから、ご家族に睡眠時のいびきや呼吸停止を指摘された場合や、夜間に何度も目を覚ます、日中のだるさや眠気、仕事効率の低下などを感じる方は、専門のクリニックにご相談いただきたいですね。
- Q注意すべき甲状腺疾患について教えてください。
-
A
甲状腺は体の代謝や成長などを調節する作用がある甲状腺ホルモンを分泌する器官です。血中の甲状腺ホルモンが過剰になる場合がバセドウ病など甲状腺機能亢進症、逆に甲状腺の働きが低下して血中の甲状腺ホルモンが不足するのが橋本病など甲状腺機能低下症です。どちらも健診などでホルモン値の異常が見つかり受診される方が多く、最近は不妊治療のため橋本病の治療を受けられる患者さんも目立ちます。また、甲状腺疾患には、甲状腺の腫瘍もありますので注意が必要です。多くは良性ですが、がんの可能性もありますので、当院では、甲状腺超音波検査を行い、腫瘍が悪性疑いの場合、穿刺細胞診施行もしくは甲状腺専門の外科へ紹介しています。
- Q 糖尿病はさまざまな合併症とつながると聞きました。
-
A
糖尿病はインスリンの作用不足などの原因により、血液中のブドウ糖が増えてしまう病気です。初期の段階では自覚症状がほとんどないのですが、この状態が長く続くことで全身の血管に負担がかかってしまい、さまざまな問題が生じます。糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害の三大合併症がよく知られていますが、ほかにも動脈硬化が進むことで脳梗塞や心筋梗塞といった大血管障害のリスクが高まります。合併症による失明や透析治療が必要となる腎不全、足の壊疽、脳卒中(脳梗塞・くも膜下出血・脳出血)や心不全など、取り返しのつかない状況に陥る前に、適切な治療の継続や、生活習慣の改善で血糖をコントロールすることが大切です。
- Qでは、糖尿病の治療について教えてください。
-
A
合併症の予防と進行抑制を目標に、まず食生活や生活習慣の改善を行い、必要に応じて薬での治療を組み合わせます。最近、糖尿病の治療方法は大きく変化しており、例えば血糖の上昇に伴ってインスリン分泌を促す「DPP-4阻害薬」、尿に糖を出して血糖の低下を図る「SGLT2阻害薬」、膵臓に働きかけてインスリンの分泌を後押しする「GLP-1受容体作動薬」、糖新生や糖の吸収を抑えるための「BG剤(ビグアナイド薬)」など薬の選択肢も広がり、患者さんの状況に合わせて有用な治療を選択しやすくなっています。治療を中断されると合併症が進行しがちなので、患者さんに合わせた続けやすい治療法を選択することが大切です。