小野 佐知子 院長の独自取材記事
金沢内科クリニック
(横浜市金沢区/金沢文庫駅)
最終更新日:2025/02/03

京急本線・金沢文庫駅近くにある「金沢内科クリニック」小野佐知子院長は、大学病院や横浜医療センターで、糖尿病や甲状腺疾患の診療に携わってきた専門家。患者や一般市民に正しい医療知識を伝えることも医療者の役目だと考えて、身近な病気である糖尿病や、実は多くの女性がかかっている甲状腺疾患の診療に興味を持ったと話す。診療では患者の生活習慣や本音を聞き出し、生活の改善や治療に結びつけていくためにじっくりと話をすることを心がける。正しく病気を理解してうまく付き合ってほしいという小野院長に、クリニックの特徴や診療にかける思いなどを聞いた。
(取材日2024年9月24日)
糖尿病や甲状腺疾患、睡眠時無呼吸症候群の診療に注力
まず、こちらのクリニックについて教えてください。

当院は、糖尿病を中心とした生活習慣病、内分泌・甲状腺疾患、睡眠時無呼吸症候群の専門診療に特化したクリニックです。患者さんのライフスタイルや状況に応じた治療法を提案することを心がけており、看護師・臨床検査技師・管理栄養士と連携してチーム医療を行っているのが特徴です。駅からとても近く便利ですので、近隣だけでなく横須賀市から来られる方も目立ちます。新型コロナウイルスの感染拡大時にリモートワークが広まったこともあり、東京郊外へ移住される方も増え、転居の新患患者さんも増えています。また、従来から糖尿病の患者さんはとても多かったのですが、睡眠時無呼吸症候群や甲状腺疾患の患者さんも増えており、とてもニーズが高いことを感じています。
睡眠時無呼吸症候群の診療に力を入れているとのことですね。
そうなんです。そもそも「睡眠の質の向上」は、当院の母体である医療法人みなとみらいの診療コンセプトの一つです。田中俊一理事長が糖尿病治療に携わる中で、糖尿病など生活習慣病の治療は大学病院や大規模な高度医療機関よりも、地域密着型のクリニックのほうが適していると考えたことが出発点となって、糖尿病など生活習慣病を軸にしてクリニックを立ち上げてきました。その後、糖尿病など生活習慣病の背景に「睡眠の質」が関わることに注目し、「睡眠の質の向上」を基本に据えた診療体制を確立し、当院や他のグループ院でも同じ方針で診療を行うようになったのです。当院では、自宅でできる簡易検査に加え、基幹クリニックである「みなとみらいクリニック」と連携した精密検査にも対応し、診断後はCPAP(持続陽圧呼吸療法)を中心とした治療を行っています。
甲状腺疾患についても教えてください。

甲状腺疾患はあまり知られていませんが、特に橋本病は、女性の20人に1人はかかっているという説もあるほど、実は多い病気です。急激な症状もあまりないので、病気に気づかずに過ごしていたり、ほかの病気と間違われていたりすることもあるようです。また、不妊や流産とも関係があり、産婦人科からの紹介で受診される方も増えています。そもそも女性の不調は、ホルモンに関わることが少なくありません。女性ホルモンの影響が大きいことはもちろん、甲状腺疾患も頻度的に多いものです。しかし、症状がほかの病気と紛らわしいものも多く、患者さん自身では鑑別するのが難しいのです。当院のような専門クリニックで検査を受け、診断され、きちんと治療を受ければ、体調が改善がめざせ、仕事など社会で活動しやすくなります。ぜひご相談いただきたいですね。
生活習慣を把握して、患者に合わせた診療を心がける
ところで、先生はどうして糖尿病や甲状腺疾患の分野に進まれたのですか?
私は、学生時代から身近な病気に興味があり、医療知識を患者さんはじめ一般の方に広めていくのも、医療者の大切な仕事の一つなのではないかと考えていました。正しい知識を持つことで、病気を予防できたり、早期に適切な治療が受けられたり、国民全体の医療レベルが上がりますからね。特に糖尿病などの生活習慣病や甲状腺疾患は、患者さんの数が多くとても身近であり、またホルモンに関わる内分泌系の病気は、なかなか発見されないことも多く一人で苦しんでいる人が多いといわれています。そこで、このような患者さんに少しでも早く適切な治療を受けていただけるようにしたいと思い、糖尿病・内分泌甲状腺疾患の分野に進みました。
こちらの院長に就任されるまでの経緯について教えてください。

東京女子医科大学病院では内分泌疾患・糖尿病などの入院・外来診療に加え、内分泌分野の研究や、学生教育も行ってきました。その後、出向先の横浜医療センターでは、糖尿病内分泌内科の責任者として多くの患者さんの診療に携わり、糖尿病の教育入院・救急医療・地域連携診療に関わってきました。その中で当法人とご縁ができ、私の専門性や、大学病院、国立病院機構の勤務経験を生かし、専門的な医療を提供できたらと考えて2018年にこちらの院長に就任しました。
診療の際、どのようなことを大切にされていますか?

診療では、雑談のように患者さんになんでも話していただき、食事や運動、生活習慣などを把握したいと考えて、患者さんお一人お一人に合わせて、とにかく気さくに話しやすい雰囲気をつくることを心がけています。特に初診では構えておられたり、緊張したりしてもあまりお話しされない方も多いと思います。でも、おしゃべりのような感じで話していくことで、実はお酒が好きとか、本音が出やすくなります。そんな話が出てくるまで、私やクリニックに慣れていただくことも大切だと思います。そして、患者さんに病気についてよく知っていただくことも重視しています。糖尿病や甲状腺疾患は、正しい知識を持ってないことから重症化したり、つらい思いをされたりしている方が少なくない病気でもありますので、ぜひ患者さんに病気を理解して、病気を受け入れ、治療を続けていただきたいと思っています。
女性患者特有の不安や悩みにも親身に寄り添う
専門的な立場から気になることがありますか?

生活習慣病は、やはり社会情勢を反映すると感じています。高齢化や非婚率が高まる中で、糖尿病や肥満、睡眠時無呼吸症候群に独居の男性患者さんが目立つことや、独居の高齢患者さんにどのようにしたら十分な治療を受けていただけるかということが気になりますね。やはり一人暮らしだと、食生活が不規則になったり、好きな物ばかり食べたりしやすくなるもの。ご家族がいれば、ここまで肥満が進まないのではないか、もっと早くいびきに気づいてくれるだろうと思うことがあります。そういった意味で現代病だなと思います。また、睡眠時無呼吸症候群や甲状腺疾患の専門クリニックは、郊外や地方に不足していると感じます。医療ニーズは人口動態とも関係が深いですから、これからは、郊外や地方にも専門的なクリニックが増えていく必要があると思います。
女性患者さんへのアドバイスがあれば聞かせてください。
糖尿病の場合、女性は閉経後や生理周期のホルモンの影響により食欲が増減するなど、血糖値を良好にコントロールすることが難しくなる場合がありますので、治療中の不安や悩みなど気軽にご相談いただきたいですね。また甲状腺疾患は放置しておくと重症化し、心疾患につながることもありますので、ぜひ多くの方に知っていただきたい病気です。うつのような症状や女性特有の不定愁訴などがある方は、自分だけで抱え込まないでぜひ一度、甲状腺の検査を受けていただきたいと思います。女性ホルモンの影響は女性ならば誰でも経験することですし、甲状腺疾患も特別な病気ではありません。専門的な検査を受けて自分の状態を知ることは、自分の改善にもつながることなので、ぜひお勧めしたいと思います。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

最近の患者さんは、ご自分でもさまざまな情報を得て、病気をよく理解されている方が増えていると感じます。こうした傾向は郊外や地方にも広がっているようなので、だんだん郊外や地方の医療機関も変わっていくのではないか、当院のような専門的なクリニックが増えていくのではないかと思っています。平均寿命が延び、病気とともに生きていく時間も長くなってきました。多くの方がうまく病気と付き合い、健康寿命を延ばせるようにお手伝いができたらと考えています。健康診断などで、糖尿病をはじめ生活習慣病と診断された方や、甲状腺機能の異常を指摘された方、あるいはいびきや肥満など気になることがある方はどうぞご相談ください。