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広松 恭子 院長の独自取材記事

ケイクリニック

(中野区/中野駅)

最終更新日:2026/10/15

広松恭子院長 ケイクリニック main

駅前の喧騒から離れた閑静な住宅街に、「ケイクリニック」はある。漢方内科・心療内科・内科を標榜する同院の広松恭子院長は、公衆衛生医師として、地域のさまざまな健康課題に携わり、産業保健の分野でも、働く人々の健康を見つめてきた。さまざまな事情や忙しさの中で自分を整えることの難しさや、望んでいた暮らしを見失った姿に接してきた経験から、症状だけでなく、必要な医学的評価を行い、生活や仕事の背景まで丁寧に聴くことで、その人が再び自分で考え、選択していける状態をめざして治療にあたりたいとの思いで開業に至った。穏やかな語り口に深い包容力がにじむ広松院長に、漢方を軸にした診療への思いを聞いた。

(取材日2026年9月10日)

暮らしの背景まで丸ごと見つめ、心と体を整えていく

こちらのクリニックを開業された経緯を教えてください。

広松恭子院長 ケイクリニック1

私はもともと、公衆衛生や産業医学の領域に長く携わってきました。そうした現場では、眠れない・胃腸の調子が悪いといった症状の背景に、職場のストレスや人間関係の問題がある方を数多く見てきました。症状に対する治療でいったん楽になっても、同じ不調を繰り返し、ご本人もどうしていいかわからないまま過ごしている。そんな姿を見るうちに、症状だけでなく生活や仕事も含めた状態を丸ごと見て整え、ご自身がいろいろと判断していけるところまで支えたいと思うようになりました。漢方と出合い、症状の改善を図りながら、全身の状態や、背景にある生活上の課題まで視野に入れて治療を考えることが、自分のめざす診療と重なると感じ、開業に至りました。

医師をめざされたきっかけや、これまでの歩みについてお聞かせください。

身内が絶えず医療を必要とする状況で、幼い頃から医療が身近な環境で育ちました。医師が家に来る風景や、祖父や曽祖母が自宅で看取られる場面にも接して、医療に自然と関心を持つようになったんです。加えて、子どもの頃から仕組みを知ることが好きで、社会や人体への興味がそのまま医師への道につながりました。大学卒業後は、内科で臨床経験を積み、その後は公衆衛生医師として母子保健、感染症、精神保健、介護予防など幅広い健康課題に携わってきました。そうした経験を通して、医療は、必要に応じてさまざまな専門家と連携し、その立場の違いを理解し合える形でつなぐことで、患者さんや地域により良く貢献できることを学びました。開業した今も地域の医療機関と連携しながら、地域医療に携わっていきたいと考えています。

どのような患者さんが来院されていますか?

広松恭子院長 ケイクリニック2

不眠、便秘、ひどい汗、胃腸の不調、貧血、メンタル面の悩み、皮膚トラブル、耳鳴りなど、お悩みは本当に多様です。いろんな検査を受けても異常が見つからなかった方には「一番気になる症状から出発しましょう」とお伝えし、漢方の視点から診ていきます。漢方について相談してみたいという方や、薬を増やしたくない方、副作用などが気になり漢方も含めて別のアプローチを相談したいという方も。ご家族で通われるケースもあり、お父さんが先に来院し、後からお母さんやお子さんも来られることも。気負わずに来ていただける雰囲気を大切にしています。

漢方の視点で、全身の状態をみながら治療を考える

漢方では体の不調をどのように捉えるのでしょうか?

広松恭子院長 ケイクリニック3

漢方では、症状だけを見るのではなく、その症状がどのような体の状態の中で起きているのかを考えます。例えば「眠れない」という症状でも、冷えが強い方、ほてりや緊張が強い方、胃腸が弱っている方、疲れが溜まっている方では、体の状態はそれぞれ異なります。それらの体の状態を総合し、全身の状態を診るのが漢方の特徴です。診察では、顔色や肌の状態、舌や脈、おなかの張りや冷えなども確認します。そこから体力や栄養状態、水分の偏り、心身の緊張などを見極め、全体像を捉えていきます。漢方には古くから、一つの症状や臓器だけに終始せず、心身を含めた全体の状態を診る考え方があります。私は西洋医学的な診断や検査の必要性も踏まえながら、漢方の視点も取り入れ、その方の今の状態に合わせて、無理なく生活を整えていく工夫や治療を提案することを大切にしています。

日々の診療で大切にされていることを教えてください。

まずは落ち着いてお話を聞ける環境を大切にしています。その上で、患者さんがどんな治療を望んでいるか、どう進めていきたいかを確認するところから始めます。すぐに症状を抑えたい方もいれば、薬に頼りすぎることが心配な方もいらっしゃるので、その方の気持ちに沿って一緒に考えていきます。診察ではおなかの張りや体の緊張など、ご本人が気づいていない所見が見つかることも少なくありません。眠れないだけだと思っていたのに、実は仕事の負担や生活リズム、胃腸の状態など、複数の要因が重なっていたと気づくこともあります。一つの症状だけを見るのではなく、全身の状態や生活とのつながりを見ながら、どこから整えていけば良いかを考えることを大切にしています。「こんな話を聞かれると思わなかった」という患者さんもいるかもしれませんが、体の緊張が強ければ、その背景に何か負担が続いていないかも含めて、お話を伺うようにしているんです。

忙しい日々を送る方へ、先生から伝えたいことはありますか?

広松恭子院長 ケイクリニック4

無理を続けると自分が疲れていること自体に気づきにくくなることがあります。「仕方ない」と思い込み、さらに無理を続けてしまい、その結果、体調を大きく崩す方も見てきました。私も子育てをしてきましたから、疲れて寝るだけの日々のつらさはよくわかります。ただ、無理をしている自覚があるのと「みんなやっているから普通」と思い込むのとでは、だいぶ違います。ゆとりは意識してつくらないと生まれません。時間の余裕だけでなく気持ちの余裕がなければ、少し時間があっても「今のうちにこれをやらなきゃ」と休めなくなってしまいます。ありたい姿は大げさなものでなくていいんです。みんなでちゃんと仲良く暮らしたい。そんな日常の願いにも、心と体が整った状態で向き合えることが大切だと考えています。

不安もつらさも、ありのままの気持ちで相談してほしい

今後の展望についてお聞かせください。

広松恭子院長 ケイクリニック5

まずは症状をなるべく早く取り除いていくための研鑽を続けていきたいです。つらい症状があれば、それを楽にすることが最優先ですから。その上で注力したいのが、症状が落ち着いた後のサポートです。疲れやすさや不安になりやすさなど、日々の暮らしに影響する課題を抱えている方は少なくありません。そうした方に対して、生活全体を整えるお手伝いをしたり、仕事上の問題を一緒に細分化して次の一手を見つけたり。十分に向き合う時間をつくるために、患者さんがどう進んでいきたいかに合わせて、対応の幅を広げていけたらと考えています。

穏やかな雰囲気が印象的ですが、何か心がけていることはありますか。

正直、私自身も余裕がなくなるとカリカリしてしまって、家族に「イライラバタバタしている」と指摘されることがあるんですよ。「この時までにやらなきゃ」が重なると、つい構っていられなくなってしまう。だからこそ、クリニックに来たらきちんと切り替えて、落ち着いた状態で患者さんと向き合うことを意識しています。プライベートではプランターで葉物野菜の栽培を楽しんだり、旅先では観光地よりも地元の市場や博物館を巡ったりしながら、自分なりのリズムを取り戻していく。ずっといい状態でい続けることはできませんけれど、要所要所で立ち止まって自分の状態に気づくことが大事だと思っています。忘れてしまうとそのままになるので、戻れるポイントを持っておきたいですね。

読者へのメッセージをお願いします。

広松恭子院長 ケイクリニック6

ご自身の不調を「大したことない」と思わないでほしいんです。もう少し良くなったら楽になるな、ということがあるなら、それは相談する価値のあることです。医療機関に恐怖感や苦手意識がある方でも、漢方のクリニックなら少し違うかもしれないと感じていただけたらうれしいですし、「年齢のせいだから仕方ない」と諦めている方でも、何かお力になれることがあるかもしれません。生活面やお仕事、他科の情報も総合して判断することが当院の持ち味です。難しい病気を抱えている方やそのご家族から、今後の療養や生活で何を見ていけば良いか、どこに相談すれば良いか、といったご相談を受けることもあります。とにかくつらくて大変で、自分でもよくわからないという状態でも構いません。そのままの気持ちで来ていただけたらと思います。