関川 泰隆 院長の独自取材記事
かしの森クリニック
(世田谷区/桜新町駅)
最終更新日:2026/10/01
桜新町駅から徒歩6分、閑静な住宅街の一角に「かしの森クリニック」はある。2025年に開業し、関川泰隆院長が生まれ育った実家の1階を改装した造りで、院長自ら手入れする庭には木々が生い茂り、院内には季節ごとにドライフラワーが飾られている。外観は一見クリニックらしくない印象だが、風邪や生活習慣病など幅広く対応する地域に根差した内科クリニックだ。関川院長は長年にわたり勤務医として総合診療に携わり、患者の話をじっくり聞きながら全身を診るスタイルを貫いてきた。定年後、かつて苦楽をともにした看護師や検査技師とこの地で再出発。「何でも相談してください」と穏やかに語るその言葉の奥には、専門分化が進む地域の中で一人ひとりの全体像を見守りたいという確かな思いがある。開業の経緯や診療方針、今後の展望について聞いた。
(取材日2026年9月7日)
気心知れた仲間と始めた、生まれ育った町の診療所
木々に囲まれた環境が印象的ですが、まずはクリニックのご紹介をお願いします。

この辺りはもともと武蔵野の自然が色濃く残る地域で、人の手が入らない状態の森はシラカシの木で覆われるといわれています。カシの木は大木に育ち長寿であること、ドングリの木として身近な存在であることから、この名前をつけました。また、1本の木ではなく「森」というイメージも込めています。当院は私が育った実家の1階を改装した造りで、庭にはたくさんの木が茂り、院内にも季節の花やドライフラワーを飾っています。外から見ると「入りにくい」と感じる方もいらっしゃるようですが、中身はごく普通の内科クリニックですので、気軽にご利用いただけたらうれしいですね。
内科全般を幅広く診るスタイルは、どのように培われたのでしょうか。
医師になりたいという思いは昔からあり、最初は外科を志していました。外科は内科的なことにも関わりますし、内科以上に全身を診るというイメージがあったからです。その後、数年間の外科経験を経て、当時所属していた法人で診療所の立ち上げに参加する機会がありました。そこでは内科に限らず、小外科や耳鼻科・眼科・皮膚科の相談、小さなお子さんの診察まで、幅広く対応していました。自分で診られるものはしっかり対応し、専門的な治療が必要な場合は紹介状を書いて適切な医療機関につなぐ。そうした役割が自分には合っていると感じたのです。その後も同じ法人内で病院と診療所の両方に携わりながら、外来診療をはじめ、入院診療、往診、健康診断、予防接種など幅広い経験を重ねてきました。
こちらで開業されたきっかけを教えてください。

川崎の法人でずっと勤務医として働いてきましたが、定年後にちょっと物足りなさを感じまして。もう少し続けたいなという思いが出てきたんです。そんなとき、同じ法人で長年一緒に働いてきた看護師や事務スタッフ、検査技師の仲間たちに声をかけたところ、皆が背中を押してくれたんです。その後、生まれ育ったこの地域にある実家を改装して、2025年にクリニックを開院しました。現在は看護師3人、事務スタッフ1人、検査技師1人が在籍しており、全員非常勤ですがそれぞれが「このクリニックの一員」という意識で取り組んでくれています。気心の知れた仲間たちと一緒にスタートできたことは、本当にありがたいことですね。数十年ぶりに生まれ育った町と改めて向き合っていますが、町並みもそこに暮らす人々も変化していて、日々新たな発見や出会いを楽しみながら診療にあたっています。
全身を見渡す健康管理で、検査の漏れを防ぐ
この地域で果たしたい役割を教えてください。

世田谷区は開業医が非常に多い地域で、大きな病院へのアクセスも良く、駅の周辺には糖尿病内科や消化器内科といった専門のクリニックがたくさんあります。皆さん、それぞれの専門クリニックで診療を受けていらっしゃいますが、複数の医療機関にかかっているからこそ、ご自身の体の状態を全体として把握しきれていない方も少なくありません。その結果、お薬の種類や数が増えてしまうケースも見受けられます。私は「何でも相談してください」というスタンスで、総合的にお体を診て、自分でカバーしきれない部分は専門の医師へ紹介するという形を取っています。正式なセカンドオピニオンとまではいかなくても、他院で受けた診療の内容をかみ砕いてお話ししたり、ちょっとした疑問に答えたりする。そういう相談の受け皿になれたらと思っています。
患者さんの健康管理で、特に力を入れていることはありますか。
以前の勤務先で、高血圧のお薬を定期的に受け取っていたにもかかわらず、胃がんが進行した状態で見つかる患者さんに接したことがありました。その経験から、一つの病気を診るだけでなく、患者さんの全身の健康状態にも目を配ることを大切にしています。具体的には、がん検診をいつ受けたか、次はいつ頃どんな検査をすればいいかを記録して、患者さんと共有しています。健診の結果をお持ちいただいて、何を調べていて何が足りないかを一緒に確認することも多いですね。女性の乳がんや子宮がんの検診はなかなかご自身からは進みにくいものですから、こちらからお声がけしています。生活習慣病についても、お薬を出して終わりではなく、生活の中身をお聞きしながらアドバイスするようにしています。
こちらで受けられる検査や診療について教えてください。

検査面ではエコーに力を入れており、腹部をはじめ、頸動脈、静脈、乳腺、甲状腺など幅広い検査に対応しています。長年の経験を持つベテランの臨床検査技師が担当するのも特徴です。健康診断や各種予防接種にも対応しており、エックス線検査のみ提携医療機関をご案内しています。また、クリニック周辺を対象に往診も行い、外来の延長として地域の皆さんを支えています。当院で対応が難しい検査は適切な医療機関をご紹介し、他院の検査結果も含めて一元的に管理しています。現在は40代を中心に、風邪やインフルエンザなどの急性症状や健診後の精査で受診される方が多く、中学生以上であればどなたでも受診いただけます。
当たり前を大切に。地域の暮らしに寄り添いたい
患者さんとの向き合い方で、大切にされていることはありますか。

特別なことではないのですが、当たり前のことを当たり前にやるということを大切にしています。その中でも意識しているのは、患者さんのお話をよく聞くことでしょうか。気になることを丁寧にお聞きしていると、どうしても診察の時間は長くなるのですが、そのぶんお体の状態をしっかり把握できると思っています。ご自身の病気だけでなく、ご家族の健康について相談される方もいらっしゃいますし、そうした話に耳を傾けることも大事な役割だと感じています。院内には庭から摘んだ花を季節ごとに飾っていまして、「緑があると気持ちが落ち着く」と言ってくださる方もいます。庭の手入れも自分でやっているのですが、自然に囲まれた空間が少しでもくつろぎにつながっていればうれしいですね。
今後の展望をお聞かせください。
診療の基本的なスタンスはこれまでと変わりませんが、医療を取り巻く環境は日々大きく変わってきています。電子カルテはもちろんですし、AIの進歩によって医師の役割そのものが変わっていく可能性もあります。そうした時代の流れにはしっかり対応していきたいですし、ITを毛嫌いせず便利なものは積極的に取り入れていきたいと思っています。それともう一つ、当院では「生活健康相談所」という副題を掲げているんです。医療の枠にとどまらず、暮らしの中での困り事にも耳を傾けて、必要に応じて各分野の専門家への橋渡しもしていきたい。狭い意味での医療だけでなく、この地域の方々ともっとつながりを深めていけたらというのが今の思いですね。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

私が一番お伝えしたいのは、普通でありたいということです。普通の診療所をめざしていますので、どうぞ気軽にご利用いただければと思います。風邪やインフルエンザのような急な体調不良はもちろんですが、健康診断の結果が気になる、ご家族の健康について相談したい、他院で言われたことをもう少し詳しく知りたいなど、どんなことでも構いません。「何でも相談してください」というのが当院のスタンスです。長年にわたって患者さんのお話をじっくり聞きながら、お体を総合的に診てきました。その経験を、生まれ育ったこの町で少しでもお役に立てたらと思っています。お体のことでも暮らしのことでも、気になることがあればいつでもご相談いただければうれしいですね。

